
フリーランスでWebサイト制作を請け負っているんだけど、納品後にクライアントから度重なる修正を受けて赤字になることがよくあるんだよね。



それってフリーランスあるあるですよね。
トラブルを防止するためにはきちんと業務委託契約書委託契約書を交わしておくことが重要ですよ。



でも契約書って難しいからどうやって作ればいいのか分からないよ。



そうですよね。
それでは今回は、フリーランスのITエンジニアの方に向けてWebサイト制作の業務委託契約書の作成ポイントについて解説します。
『デザインが気に入らないから全部やり直して』と言われた…
「当初の依頼内容から大幅に増えたのに、追加料金を認めてもらえない」
「納品後も際限なく修正依頼が続き、次の仕事に取り掛かれない」
こうした悩みや問題は、フリーランスのWebデザイナーやエンジニアにとって決して珍しいものではありません。
実際、日本フリーランス協会の調査によれば、フリーランスのWeb制作者の約65%が契約に関するトラブルを経験したことがあると報告されています。
これらの問題の多くは、明確な契約書がなかったか、あるいは契約内容が不十分だったことに起因します。
本記事では、フリーランスのWebエンジニア・デザイナーの方に向けて、契約に関する複雑な問題をわかりやすく解説し、適切な業務委託契約書を作成・活用できるようサポートします。
この記事を活用して、クライアントとの取り引きををより安定したものにしていきましょう。
Webサイト制作の業務委託契約書の基本
業務委託契約書とは何か
業務委託契約書とは、依頼者(クライアント)と受託者(あなた)の間で交わされる、仕事の内容や条件、権利義務関係などを明文化した合意文書です。
法的には「請負契約」または「準委任契約」に分類され、雇用関係ではなく独立した事業者同士の契約という位置づけになります。
Webサイトを完成させる目的であれば『請負契約』に該当します。
一般的な業務委託契約書には以下のような基本要素が含まれます。
- 契約当事者の情報
クライアントとあなた(個人事業主または法人)の正式名称、住所、連絡先 - 業務内容
委託される業務の具体的な内容と範囲 - 契約期間
業務の開始日と終了日 - 報酬と支払条件
金額、支払方法、支払時期 - 成果物の定義
納品物の具体的内容と形式 - 権利義務関係
両者の責任範囲と義務 - 契約解除条件
契約が解除される場合の条件と手続き - 守秘義務
機密情報の取り扱いに関する取り決め - その他の特約事項
上記以外の特別な取り決め
これらは業務委託契約に盛り込む基本的な条項ですが、Webサイト制作の契約には、さらに業界特有の要素が加わります。
Webサイト制作特有の契約要素
Webサイト制作は、他の業種と比較して特殊な性質を持つ業務です。
具体的には以下のような特徴があります。
- 制作物の定義が難しい
完成イメージを言葉で正確に表現することが難しく、クライアントと制作者の間で認識のずれが生じやすい - 技術の共有が難しい
クライアントは技術的な詳細を理解していないことが多く、「何ができて何ができないか」の判断基準が共有されていない - 安易に変更要求されがち
他の制作物と比較して修正が容易なため、完成後も頻繁に変更要求されがち - 作業工程が多岐にわたる
デザイン、コーディング、サーバー設定、SEO対策など、多様な作業工程が含まれる - 継続的なメンテナンスが必要
制作して終わりではなく、セキュリティ更新やコンテンツ更新など継続的な管理が必要になる場合が多い
これらの特徴を踏まえ、Webサイト制作の業務委託契約書には、一般的な契約書に加えて次のポイントを明確にする必要があります。
業務委託契約書を作成する前に決めておくポイント
支払い条件をはっきり決めておく
お金の話は避けたくなりますが、ここをあいまいにすると取り返しのつかないトラブルになります。
支払いについては必ず明記しましょう。
- 支払いのタイミング
前払い(着手金)、中間払い、完了払いの割合 - 支払い方法
銀行振込、クレジットカード、その他の決済方法 - 請求書発行のタイミング
いつ請求書を発行するか - 支払期限
請求書発行後、何日以内に支払うか - 遅延利息
支払いが遅れた場合の対応 - 源泉徴収の有無
個人の場合は源泉徴収されるかどうか
「着手金30%、中間金30%、完了金40%」などと具体的な数字で示すことで、資金繰りの見通しが立ちやすくなります。
また「納品物の確認後14日以内にお支払いいただく」など、支払期限も明確にしておきましょう。



2024年にフリーランスの保護を目的として制定されたフリーランス新法では、発注者は納品物を受領後60日以内に代金を支払わなければならない、というルールが明確化されました。


制作範囲をしっかり決めておく
「思ってたのと違う」を防ぐためには、何を作るのかを具体的に明記することが大切です。
- サイトの全体像
何ページ作るのか、各ページの内容は何か、サイトマップはどうなるのか - スマホ対応
レスポンシブ対応するのか、どの画面サイズまで対応するのか - 対応ブラウザ
Chrome、Safari、Edgeなど、どのブラウザで動作保証するのか - 特別な機能
お問い合わせフォーム、会員登録機能、検索機能など、特殊な機能の有無と詳細
「〇〇のようなサイト」という曖昧な表現は避けて、できるだけ具体的に書きましょう。
特にクライアントが「当然ついてる」と思っている機能が、実は追加料金になるようなケースはトラブルの元です。
誰が何をするか、はっきりさせる
Webサイト制作には様々な工程があります。「それは誰の担当?」というモメごとを防ぐために、役割分担を明記しましょう。
- コンテンツ準備
文章や写真は誰が用意するのか、いつまでに用意するのか - インフラ環境
ドメイン取得やサーバー設定は誰が行うのか
「うちはコンテンツまで作れません」
「サーバー設定は別途料金がかかります」
など、特に追加料金が発生する場合は、あらかじめクライアントに伝えておくことが大切です。
修正の回数と追加料金の条件
際限ない修正要求は、どんどん単価が下がるので絶対に避けなければなりません。
対策として事前に修正対応に関するルールを決めておきましょう。
- デザイン案の提示回数
初期案は何パターン見せるのか - 修正できる回数
各フェーズで何回まで修正OKなのか - 追加修正の料金
制限を超えた場合、いくら追加でかかるのか - 大幅な変更があった場合
途中で方針が変わった場合どうするか
「修正は3回まで、それ以降は1回につき〇〇円」など、具体的な数字で示すことで、お互いの認識ずれを防げます。
なおWebサイト制作ではありませんが、デザイン制作で、事前に十分な打ち合わせをした上で、デザイナーがもつ能力をフルに発揮させたものであれば、発注者の希望通りの制作物が出来上がらなかったとしても、デザイナーは契約の債務(義務)を果たしたといえる=債務不履行責任を負わない、という判例があります。
クライアントからの修正要求に対してどこまで応えなければならないのか?については、以下の記事で詳しく解説しています。


納品物は細かく定義する
「納品」と一言で言っても、実際には様々な形があります。何をどのような形で納品するのかを明確にしましょう。
- 納品物の形式
HTMLファイル一式なのか、WordPress構築済みのサイトなのか - デザインデータ
Photoshop、Figmaなどのデータも納品するのか - バックアップ
サイトのバックアップデータは提供するのか
特に、「ソースコードはもらえるの?」「自分で更新できるようにしたい」といった要望は事前に確認し、契約書に反映させておきましょう。
技術的な品質基準を明確に
「ちゃんと動くWebサイト」の定義は人によって異なりますので、技術的な品質基準を明確にしておきましょう。
- 表示速度
ページの読み込み速度に関する基準 - セキュリティ対策
どのようなセキュリティ対策を行うのか - SEO対策
SEO対策はどこまでが含まれるのか



技術的な項目は専門用語になりがちだけど、クライアントにも理解できるよう、できるだけわかりやすく説明しないといけないね。
著作権の帰属先をきちんと決める
「このWebサイト、自分のポートフォリオに載せていい?」「写真の著作権は誰にある?」こういった権利関係のトラブルを防ぐため、しっかり定めておきましょう。
- 著作権の帰属
コード、デザイン、コンテンツそれぞれの権利は誰にあるのか - ポートフォリオ掲載
制作実績として自分のサイトに掲載できるか - 素材の利用権
使用した画像、フォント、プラグインなどのライセンス管理
特に、「納品が完了すれば、著作権はクライアントのものになるのか」といった著作権の帰属先をきちんと明確にしておくことが重要です。
著作権に関しては後ほど詳しく解説します。
納品後のサポート体制も大切
「サイトができたら終わり」ではなく、納品後のサポートについても決めておきましょう。
- 保証期間
納品後、どのくらいの期間、無料で対応するのか - 保守契約
継続的なメンテナンス契約の内容と料金 - 緊急対応
サイトがダウンした場合など、緊急時の対応方法と料金
「納品後3ヶ月は無料で軽微な修正に対応します」「緊急時は別途〇〇円/時間で対応します」など、具体的な条件を示しておくと安心です。
これらの要素をきちんと契約書に盛り込んでおけば、「こんなはずじゃなかった」というトラブルを大幅に減らすことができます。
特に大切なのは、あなたが「当たり前」と思っていることでも、クライアントと制作者では認識が違うことが多いということ。
「そんなの常識でしょ」と思わずに、細かいことでも書き出しておくのが、トラブル防止の近道です。



契約書は面倒くさいものではなく、お互いが気持ちよく仕事を進めるための地図だと考えましょう。
著作権と知的財産権の取り扱い
Webサイト制作で最も悩ましい問題の一つが、著作権と知的財産権の取り扱いです。
「制作したサイトの権利は誰のもの?」
「ポートフォリオに載せていいの?」
といった疑問は、フリーランスのWebデザイナーやエンジニアなら誰もが一度は考えるものです。
ここでは、Webサイト制作における著作権と知的財産権の取り扱いについて解説します。
著作権の帰属先をはっきりさせよう
Webサイトは、デザイン、コード、テキスト、画像など複数の要素から成り立っています。
これらの著作権があなたとクライアントどちらに帰属するのか、明確に契約書に記載しておきましょう。
- デザインの著作権
サイトのビジュアルデザインの権利は誰に帰属するか - ソースコードの著作権
HTML、CSS、JavaScriptなどのコードの権利は誰に帰属するか - コンテンツの著作権
テキストや画像など、サイト内のコンテンツの権利は誰に帰属するか - 著作権譲渡の有無
著作権を譲渡する場合、その範囲と対価
著作権の取り決め方は、以下の2パターンがあります。
①全ての著作権をクライアントに譲渡する
本契約に基づき制作した成果物に関する一切の著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む)は、納品完了及び制作料金の支払い完了をもって、発注者に譲渡されるものとします。
②著作権を制作者に残し利用権のみをクライアントに与える
本契約に基づき制作した成果物に関する著作権は受注者に帰属し、発注者には当該成果物を利用する権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を除く)を許諾するものとします。
Webサイト制作の業務委託契約では、著作権の扱いによって料金が変わることも多いので、事前にクライアントとしっかり話し合っておくことが大切です。
なお著作権を譲渡する場合は、著作権法により「著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む」と明記しなければならないルールがあります。
著作権法第27条と第28条については、以下の記事で分かりやすく解説しています。
ポートフォリオの掲載権を確保しよう
フリーランスのWebデザイナーにとって、制作実績をポートフォリオに掲載することは新規案件獲得のために非常に重要です。
たとえ著作権をクライアントに譲渡する場合でも、Webデザイナー、Webエンジニアには『著作者人格権』という絶対的な権利が認められています。
著作者人格権とは、主に以下の3つを権利を指します。
- 公表権
著作物を公表するかどうかを決められる権利 - 氏名表示権
著作者の氏名をどのように表示するか決められる権利 - 同一性保持権
著作物の題名や内容を勝手に変えられない権利
これらを一言で表すと「著作者のこだわりを保護する権利」です。
なお、著作権は人に譲渡することができますが、著作者人格権は譲渡することができません。
そのためあなたは、著作権をクライアントに譲渡しても著作者人格権を主張する権利はあなたにいつもまでも残る(留保される)のです。
そのため、業務委託契約書ではポートフォリオの掲載権を確保できるように交渉しましょう。
- 掲載可能な範囲
サイト全体の紹介なのか、一部のデザインのみなのか - 掲載のタイミング
即時掲載OKなのか、一定期間後なのか - クライアント名の公開
クライアント名やロゴの使用可否
ポートフォリオに関して契約書で定める場合は以下のような条項を契約書に入れておくと有効です。
受注者は、本契約に基づき制作した成果物を、自己の実績紹介を目的として、自身のポートフォリオサイトやSNSなどに掲載することができるものとします。
ただし、発注者から掲載の中止を求められた場合には、速やかに掲載を中止するものとします。



業界によっては、機密性の高い情報を扱うWebサイトもあるため、ポートフォリオ掲載について事前に合意しておくことが重要です。
第三者の素材利用に関する権利処理
Webサイト制作では、写真、イラスト、フォント、プラグインなど、様々な第三者の素材を利用することがあります。
これら素材の利用権限についても、契約書に明記しておきましょう。
- 素材の調達担当
写真やイラストは誰が用意するのか - 素材の利用権確認
素材の著作権確認や利用許諾取得は誰が行うのか - 素材利用料の負担
有料素材を使用する場合は誰が負担するのか
特に、フリー素材と呼ばれるものでも、商用利用に制限がある場合がありますので、業務委託契約書には以下のような条項を契約書に入れておくと安心です。
発注者から提供された素材(文章、写真、イラストなど)については、発注者が著作権等の権利処理を行ったものであることを前提とし、これらの素材の利用に関して第三者との間で紛争が生じた場合、発注者の責任と費用負担において解決するものとします。



素材の権利関係をしっかり整理しておけば、後々のトラブルを防ぐことができそうだね。
二次利用・改変権について定める
Webサイトは一度制作して終わりではなく、公開後も継続的に更新・改変されるものです。
サイトの二次利用や改変に関する権利についても明確にしておきましょう。
なお、クライアントが制作物(ここではWebサイト)を二次利用したり改変(修正する)権利も先ほど解説した『著作者人格権』として制作者に当然に認められた権利の内の1つです。
これを『同一性保持権』といいます。
- 更新・修正の権利
サイト公開後の更新・修正は誰が行えるのか - 別サイトでの再利用
制作したデザインやコードを別サイトで再利用できるか - テンプレート化の可否
制作したデザインをテンプレート化して販売できるか
二次利用や改変をクライアントに許可する場合(著作者人格権を行使しない場合)は、以下のような条項を盛り込みます。
発注者は、納品されたWebサイトを自由に改変・更新することができるものとします。ただし、大幅なリニューアルや機能追加については、別途協議するものとします。



クライアントによっては、自社で更新できるようCMS導入を希望するケースも多いので、そのあたりも含めて契約書に明記しておくとよいでしょう。
権利侵害時の責任範囲
万が一、制作したWebサイトが第三者の権利を侵害してしまった場合の責任範囲についても、契約書に明記しておきましょう。
- 侵害の責任主体
権利侵害が発生した場合、誰が責任を負うのか - 賠償の範囲
賠償が必要になった場合の上限額 - 免責事項
免責される条件
実際の業務委託契約書では以下のような条項を盛り込みます。
受注者の責めに帰すべき事由により、成果物が第三者の著作権を侵害したと認められる場合、受注者は自己の責任と費用において当該紛争を解決するものとします。ただし、発注者から提供された素材や指示に起因する場合を除きます。
Webサイト制作の業務委託契約では、権利侵害のリスクを認識し、責任範囲を明確にしておくことで、万が一の場合にも冷静に対処できるようにしておきましょう。
著作権と知的財産権の取り扱いは、Webサイト制作の業務委託契約において非常に重要な要素です。
特にフリーランスとして活動する場合は、自分の権利を守りつつ、クライアントの利益も尊重するバランスが求められます。
契約書に著作権に関する条項を入れる際は、難しい法律用語ばかりになりがちですが、お互いが理解しやすい表現を心がけましょう。
そして、不明点があれば、遠慮なくクライアントと話し合い、認識のずれがないようにすることが大切です。



フリーランスのWebデザイナーやエンジニアとして長く活躍していくためには、著作権と知的財産権についての基本的な知識を身につけ、適切な契約を結ぶ習慣をつけることをおすすめします。
著作権や著作者人格権については、以下の記事で分かりやすく解説しています。


トラブルを防ぐための具体的な条項例
フリーランスのWebサイト制作者にとって、契約書は「万が一」のための保険のようなもの。
プロジェクトが順調に進めば契約書を見直す機会はないかもしれませんが、トラブルが発生したときに頼りになる存在になります。
ここでは、実際に現場で起きがちなトラブルと、それを防ぐための具体的な契約条項例をご紹介します。
仕様変更時の対応手順
「実はここも変えたいんですよね…」というクライアントからの仕様変更リクエスト。
小さな変更なら対応したいけれど、大きな変更は困る…そんなときのための条項です。
【トラブル事例】
契約後に「やっぱりECサイト機能も追加したい」と言われた。
当初の見積もりはコーポレートサイトのみだったため、作業量が2倍以上に。
しかも「契約金額内でやってほしい」と言われてしまった。
第○条(仕様変更)
1. 発注者が仕様の変更を希望する場合、書面(電子メールを含む)にて受注者に変更内容を通知するものとします。
2. 受注者は、変更内容の難易度・工数を検討し、5営業日以内に追加料金および納期の変更の有無について発注者に回答するものとします。
3. 発注者が追加料金および納期の変更に同意した場合のみ、受注者は仕様変更に対応するものとします。
4. 軽微な変更(文言の修正、画像の差し替えなど)については、当初見積もりに含まれるものとします。ただし、デザインの大幅な変更、機能の追加、ページ数の増加など、作業工数が明らかに増える変更については、追加料金の対象となります。
このような条項を入れておくことで、「それは追加料金が発生します」と言いづらい場面でも、契約書を根拠に説明しやすくなります。



仕様変更時の扱いを明確にしておくことが重要なんだね。
制作途中でのキャンセル対応
プロジェクトが途中でキャンセルになったとき、それまでの作業に対する報酬はどうなるのか…という不安を解消する条項です。
【トラブル事例】
デザインカンプを提出した段階で「社内の方針が変わった」という理由でプロジェクトが中止に。
2週間かけて作ったデザイン案の報酬が支払われなかった。
「Webサイトを1つ作る」という契約は、『請負契約』というものに該当します。
請負契約は原則仕事の成果物と引き換えに報酬をもらえますが、制作途中でキャンセルされてしまうこともありますよね?
しかしご安心ください。
民法では、請負契約で仕事が完成していないものの、未完成部分を割合的に受け取ることができる、と定めています。
つまり仕事の進捗状況や可分性に応じて、報酬を請求できる場合があるのです。
これを踏まえて業務委託契約書には以下のような条項を落とし込みます。
第○条(契約の解除・中途解約)
1. 発注者は、受注者に対して○日前までに書面(電子メールを含む)で通知することにより、本契約を中途解約することができます。
2. 前項の場合、発注者は以下の基準に従って、受注者に対して報酬を支払うものとします。
a) 情報設計・ワイヤーフレーム段階での解約:契約金額の30%
b) デザインカンプ提出後の解約:契約金額の50%
c) コーディング作業開始後の解約:契約金額の70%
d) テスト段階での解約:契約金額の90%
3. 前項の報酬に加えて、既に発生した実費(素材の購入費用、サーバー料金など)についても、発注者は全額を負担するものとします。
フリーランスのWebデザイナーやエンジニアにとって、途中解約は大きな痛手になります。
契約時にこのような条項を盛り込むことで、万が一の場合も適切な報酬を確保できるようにしておきます。



クライアントからの中途解約を抑制する効果もありそうだね
請負契約の特徴については、以下の記事で分かりやすく解説しています。


納品後の保証期間と対応範囲
「サイトを公開したら不具合が見つかった」というのはよくあること。
しかし、いつまでも無償対応を続けるわけにはいきませんよね?
【トラブル事例】
サイト公開から半年後に「トップページの表示がおかしい」と連絡があった。
調べてみたら、クライアントが独自に追加したプラグインとの相性問題だった。
それなのに無償対応を求められた。対応条項例
納品後の無償対応は、以下の『契約不適合条項』を盛り込むことである程度防止できます。
第○条(契約不適合責任)
1. 受注者は、納品物に関して、納品日から3ヶ月間(以下「保証期間」という)、通常の使用状態において発見された不具合について無償で修正対応を行います。
2. 以下の場合は、保証期間内であっても有償対応となります。
a) 発注者または第三者が納品物に変更を加えたことによる不具合
b) サーバー環境やブラウザのバージョンアップに起因する不具合
c) 発注者から提供された素材やコンテンツに起因する不具合
d) 契約時に定めた動作環境以外での不具合
3. 保証期間経過後の修正・更新については、別途保守契約を締結するか、その都度見積もりを作成し、有償にて対応します。



このように保証期間と対応範囲を明確にしておくことで、無償作業の泥沼に陥るリスクを減らすことができますよ。
なお、契約不適合責任については以下の記事で分かりやすく解説しています。


検収条件と完了の定義
「まだ完成じゃない」
「もう少し修正して」
と言われ続け、プロジェクトが延々と終わらない…そんな経験はありませんか?
【トラブル事例】
サイトの内容は完成したが、「役員の最終チェックがまだ」という理由で検収が進まず、最終の支払いが数ヶ月遅れた。
成果物をクライアントに納品後、早めに検収してもらうために以下のような条項を盛り込むと有効です。
第○条(検収)
1. 受注者は、納品物の完成後、発注者に対して検収依頼の通知を行います。
2. 発注者は、前項の通知を受けた日から10営業日以内に納品物の検収を行い、不具合がある場合はその具体的内容を受注者に通知するものとします。
3. 前項の期間内に発注者から具体的な不具合の通知がない場合、当該期間の満了をもって検収に合格したものとみなします。
4. 本条における不具合とは、契約書および仕様書に記載された機能・デザインと、納品物の機能・デザインとの不一致を指すものとし、発注者の主観的な好みや追加要望は含まないものとします。
フリーランスのWebデザイナー・エンジニアにとって、検収の遅れは資金繰りに直結する問題です。



検収条件と期限を明確に設定し、自動的に検収完了とみなす条項を入れておくことで、不当な検収遅延を防ぐことができます。
不当なやり直しを防ぐ方法については、以下の記事でも解説しています。


第三者への業務委託(再委託)に関する取り決め
『再委託とは』自分だけでは対応できない部分を外注したい場合の条項です。
フリーランスのWebデザイナーやエンジニアにとって、案件によっては一部作業を外注することは珍しいことではありませんので、これら再委託を認めてもらうための条件を明確にしておきましょう。
【トラブル事例】
一部の作業を外注していたことがクライアントに発覚し、「おたくを信用して発注したのに無断で外部に発注するなんて聞いてない」と契約解除されそうになった。
第○条(再委託)
1. 受注者は、本契約の業務の一部を第三者に再委託することができるものとします。ただし、業務の主要部分については、発注者の事前の書面(電子メールを含む)による承諾を得るものとします。
2. 再委託先の選定・管理は受注者の責任において行い、再委託先の行為について、受注者は発注者に対して責任を負うものとします。
3. 再委託先に対しても、本契約と同等の守秘義務を課すものとします。



こういう風に、再委託の条件を事前に明確にしておけばいいんだね。
再委託に関しては、以下の記事で分かりやすく解説しています。


納期遅延時の対応
予期せぬ事態で納期が遅れそうになることは往々にしてありますよね?
このときどう対応するかを契約書で定めておくことが重要です。
【トラブル事例】
クライアントからの素材提供が大幅に遅れたから納期に間に合わなくなったのに、「契約書に書かれた納期を守るべきだ」と遅延損害金を請求された。
第○条(納期と遅延)
1. 受注者は、本契約に定められた納期までに成果物を納品するよう努めるものとします。
2. 以下の場合、納期を延長することができるものとします。
a) 発注者からの素材・情報提供の遅延があった場合
b) 発注者の承認・レビュー期間が予定より長引いた場合
c) 仕様変更の要請があった場合
d) 天災・事故・疾病その他やむを得ない事由が発生した場合
3. 受注者の責めに帰すべき事由により納期に遅延が生じた場合、発注者と受注者は誠実に協議の上、新たな納期を設定するものとします。
4. 前項の遅延が著しく、かつ受注者に重大な過失がある場合、発注者は受注者に対して、契約金額の○%を上限とする遅延損害金を請求することができるものとします。



Webサイト制作の業務委託契約では、納期遅れを想定してクライアント側に起因する遅延については免責される条項を入れておくこくと安心です。
ここまでご紹介した条項例は、実際にWebサイト制作の現場で起こりがちなトラブルを想定したものです。
もちろん、すべての条項をそのまま使うのではなく、案件の規模や内容、クライアントとの関係性などに応じてカスタマイズしていくことが大切です。
これらの条項例を参考に、あなたの業務に合った契約書を作成してみてください。
まとめ
フリーランスのWebデザイナー・エンジニアにとって、業務委託契約書は単なる形式的な書類ではなく、あなたのビジネスを守り、クライアントとウィン・ウィンの関係を構築するための実用的なツールです。
適切な契約書を交わすメリット
適切な契約書があれば、
- 無制限の修正要求や仕様変更から身を守れる
- 突然のキャンセルによる収入損失を最小限に抑えられる
- お互いの認識のずれによるトラブルを未然に防げる
- 著作権などの権利関係を明確にできる
実践のためのポイント
- テンプレートから始める
最初から完璧な契約書を作る必要はありません。
業界団体が提供するテンプレートがあれば、これを基に、自分の状況に合わせてカスタマイズしましょう。 - 契約交渉を恐れない
契約書の提示や条件交渉は、あなたがフリーランスであってもプロとしての姿勢を示すもの。
クライアントのニーズを理解しながらも、自分の権利も守れる内容を目指しましょう。 - 継続的に改善する
トラブルが発生したら、その経験を次の契約書に反映させることで、あなたの「契約書」はどんどん強化されていきます。
良い仕事は良い契約書から
今回は、フリーランスのWebエンジニア・Webデザイナーの方に向けて、業務委託契約書の重要ポイントについて解説してきました。
質の高い業務委託契約書をクライアントに提示できれば、高い信頼感を与える、ひいては、より良い案件と報酬につなげることができます。
逆に、ネットで無料で拾った雛形をそのまま提示すると「この人大丈夫かな?」と不信感を与えてしまうかもしれません。
つまり「良い仕事をし、きちんんと報酬を受け取るためには、質の高い契約書」が必要なのです。
本記事でご紹介した条項例を参考に、質の高い契約書を作成できるようになりましょう。
私もあなたと同じフリーランスです。
あなたのWebデザイナー・Webエンジニアとしての成功を祈念しております。
Webサイト制作の業務委託契約書の作成はお任せください
対応可否 | オーダーメイド作成 | ひな型 |
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料金 | 45,000円~ | 8,999円~ |
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商取引に関する契約書
- 動産売買契約書
- 土地売買契約書
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- 継続的売買契約書
- フランチャイズ契約書
- 特約店契約書
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- 販売代理店契約書
- 秘密保持契約書(NDA)
- 事業譲渡契約書
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- スポンサー契約書
- 営業代行委託契約書
- デジタルサイネージ広告掲出契約書(約款)
- タクシーデジタル広告掲出契約書(約款)
- YouTubeチャンネル共同運営契約書
- ドローン関連サービス委託契約書
賃借に関する契約書
- 建物使用貸借契約書
- 建物賃貸借契約書
- 定期建物賃貸借契約書
- 定期借地権設定契約書
- 事業用定期建物賃貸借契約書
- 駐車場賃借権契約書
- 社宅借り上げ契約書
賃金と担保に関する契約書
- 債権譲渡契約書
- 金銭消費貸借契約書
- 抵当権設定契約書
- 代物弁済契約書
- 準消費貸借契約書
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- ヘアーサロン美容師業務委託契約書
- ヘッドスパ・セラピスト業務委託契約書
- ネイリスト業務委託契約書
- アイリスト業務委託契約書
- ヘアサロン・美容室面貸し契約書
- ヨガ・ダンス教室業務委託契約書
- 給食提供業務委託契約書
- 訪問歯科医療委託契約書
- 動画制作業務委託契約書
- 声優・ナレーター動画出演委託契約書
- ライター業務委託契約書
- 脚本(シナリオ)執筆委託契約書
- SNS運用代行契約書
- 動画・舞台出演契約書
- コールセンター業務委託契約書
- システム・機械保守メンテナンス契約書
- セミナー・講演会・出演契約書
- イラスト制作業務委託契約書
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