フリーランス保護法が成立。親事業者もフリーランスも業務委託契約書の見直しが必須になる理由

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ユキマサくん

「フリーランス保護法」が国会で成立したみたいだけど、これまでと何が変わるのかニャ?

純さん

重要事項として『契約条件の明示』が義務化されます。
今回はフリーランス保護法改正で親事業者が気を付けるポイントについて解説します。

目次

フリーランス保護法とは

4月28日の参議院本会議において、フリーランス新法案(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案)が全会一致で可決、法律が成立しました。

フリーランス保護法とは、組織には属さず個人で働くフリーランスや個人事業主を保護するための法律。

優越的な地位にある発注者(親事業者)が、一方的に報酬を減額したり、発注を取消したりしないように不公正な取引を是正し、フリーランスが安心して働ける環境を整えることを目的として成立されました。

施行は2024年の秋ごろを予定。

なおフリーランスは『特定受託事業者』と呼ばれ、これには個人事業主や、法人成りしているフリーランスも含まれます。

法人成りしているフリーランスとは、従業員を一人も雇わず仕事をしている事業者を指します。

参考

フリーランス新法において、発注者を「特定業務委託事業者」という。
「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者(フリーランス)に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するもの。
※ 「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。

フリーランス保護法成立の背景

フリーランスの人数は、内閣府の発表によると、2020年時点で450万人前後。

現在では日本の基幹産業を支える働き方と言っても過言ではありません。

このフリーランスの多くは、企業と業務委託契約を締結し仕事を請負うわけですが、取引先とトラブルになるケースが後を絶たないことが度々問題となっていました。

中小企業庁の中小企業・小規模事業者の実態調査の結果によれば、取引先とトラブルになった経験があるフリーランスの割合は約4割と発表されています。

トラブルの代表的な例

  • 取引先に値上げを要求したが取り合ってくれない
  • 納品後に不当なやり直しを強制された
  • 支払い遅延に抗議すると契約を打ち切られた
  • 納品物が思っていたのと違う、と受け取ってくれなかった
  • 取引先が原因で納期が遅れたのに、納期遅延を理由に報酬が支払われなかった

この様なトラブルに遭ったフリーランスのうち、約半数が取引先と直接交渉をしていますが、その一方で交渉すらできず泣き寝入りが2割、交渉せず自分から取引を中止したフリーランスは1割を超えるといわれています。

フリーランス保護法は、これらのトラブルを防止することを目的として制定されました。

特定受託事業者(フリーランス)に係る取引の適正化

ここからは、仕事の発注者(親事業者)の責務について解説します。

契約条件明示

フリーランス保護法の最重要ポイント。

今後、仕事の発注者は、フリーランスに対して契約条件の明示が義務化されます。

具体的には、発注内容を契約書、発注書、メールなどで受注者と相互に記録として参照できる形で残しておくことが義務付けられます。

なお、この契約条件の明示だけは、フリーランス同士の取引であっても必要

つまりフリーランスから他のフリーランスへの仕事の発注時においても、契約条件の明示だけは伝える義務があるのです。

納品後の「言った、いや聞いていない」の水掛け論を避けるためにも、内容を書面等で残すことが大事という訳です。

なお、契約時に当事者同士で確認・合意しておきたい事項について、フリーランス協会が下記の事項について例示を挙げています。

最低限必要業務内容、成果物、報酬額、諸経費の扱い、納期(契約期間)、納品・検収方法、支払い期日、契約変更・解除条件、秘密保持
あった方が良い著作権の帰属、契約不適合責任(損害賠償、やり直し範囲)、再委託可否
明示した方が良いと考えられる契約条件の例

支払い期日

仕事の発注者は、フリーランスが業務を完了し納品物を受け取ってから60日以内に報酬を支払う義務があります。

難癖を付けて支払いを遅延すると法令違反。

なお再委託の場合は、特定委託事業者が発注元から支払いを受けた日から30日以内に支払えば問題ありません。

これは、中請負のフリーランスは発注元から入金がなければ下請負のフリーランスにも支払えない実状を考慮してのことです。

禁止行為

フリーランス新法施工後は、特定業務委託事業者は以下の行為が禁止されます。

  1. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
  2. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
  3. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
  4. 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
  5. 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
  6. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  7. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

特に、⑥・⑦の行為について「特定業務委託事業者は特定受託事業者の利益を不当に害してはならない」と明記されています。

なお、これらの禁止行為の対象となる取引は「(政令で定める期間以上の)継続的業務委託」に限られますが、一度限りの契約であったとしても一定期間以上に渡り繰り返し取引きされれば「継続的業務委託」とみなされる可能性があります

「政令で定める期間」の具体的な期間について今後話を詰めていくようです。

特定受託業務従事者の就業環境の整備

ここからは、仕事の発注者(親事業者)自身の徹底すべき事項について解説します。

募集要項は正確かつ最新の内容であること

広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

例えば「ランサーズ」や「ココナラ」等のマッチングサイトでフリーランスを募集するとき(仕事を委託するとき)は、虚偽の表示を禁止し、募集後に変更等があれば正しく訂正することが求められます。

育児介護等への配慮

特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならない。

フリーランスは一人で仕事をこなすことを前提としているので、もし妊娠や出産、家族の介護が必要になったとしても、育児休業休暇や介護保険休暇等、会社員と同様の労働社会保険制度が適用されず、また代わりに仕事を頼める人もいないリスクを抱えています。

新法では、仕事の発注者は、フリーランスから納期やスケジュールの調整依頼の申し出があった場合は、これらに配慮しなければならない、としています。

この配慮義務は、禁止行為と同様「(政令で定める期間以上の)継続的業務委託」の場合に限られます。

ハラスメント対策

特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等、必要な体制整備等の措置を講じなければならない

フリーランス新法では、仕事の発注者はフリーランスに対して、ハラスメントの相談窓口を利用できるよう周知するなど、体制を整備する措置が求められます。

契約の中途解除にかかわる事前予告

継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならない。

発注者が、当初合意した契約期間内に受注者に対して中途解除を申し出る場合は、原則30日前までに事前予告をしなければなりません。

ただし業務委託契約書において、30日前を「60日前」としたり、「受託者の重大な契約違反があった場合は即時解除できる」といった条項を定めておくことは問題ありません。

フリーランス保護法に違反したときの罰則

これまで説明したフリーランス保護法に違反した場合は、公正取引委員会が立ち入り検査や是正の命令などを行い、それでも従わない場合は50万円以下の罰金に処されることになります。

業務委託契約書の重要性が増す

フリーランスに対して仕事を発注している事業者は、契約の都度業務委託契約書を締結しているとは思いますが、このフリーランス保護法の制定を期に、これまで用いていた契約書を再度見直してみましょう。

受託者に対して一方的なやり直しを可能とする内容となっていたり、支払期日が納品物の受取日から起算して極端に長くなっている条項があるかもしれません。

万が一、これ等に抵触する内容が発覚した場合は至急適正なものに修正しなければなりません。

新法の制定を期に、これまで以上に業務委託契約書の重要性が増すこととなるでしょう。

まとめ

今回は、新設された『フリーランス保護法』の内容について解説してきました。

今後、フリーランスへの仕事の発注者は、契約の前後を通じて法令に抵触することのないよう十分注意しなければなりません。特に業務委託契約書の見直しは必須です。

反対に、フリーランスの方は、企業から業務委託契約書を提示された場合は、フリーランス保護法に抵触する内容が記載されていないかを注視しましょう。

また今回はフリーランス保護法に焦点を当てて説明しましたが、新法の制定をもって『下請法』や『独占禁止法』が排除されるわけではありません。

フリーランスへの発注事業者は、これまで以上に「広い法令視野」で商取引を行うことが重要になります。。

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