プレゼンの資料を作成したり記事を執筆する際、他人の書籍やSNSの投稿を用いる機会が多いと思いますが、「引用」と「転載」の違いについて正しく理解していますか?
両者の違いや、正しい使い方を理解していないと、知らず知らずのうちに他人の著作権を侵害してしまうおそれがあります。
今回は、「引用」と「転載」両者の違いと正しい使い方について解説します。
仕事上、著作権が深く関係する下記業界に従事する方は、必ず抑えておきましょう。
- エンターテインメント業界
- 広告業界
- IT・テクノロジー業界
- 教育・学術機関
- メディア・新聞社
- Eコマース業界
- 人材育成・社員研修業界
引用とは
引用とは、自分の著作物の中で他人の著作物を一部織り交ぜて利用・紹介することを指します。
引用は、転載の一種であると考えてかまいません。
著作権法上、適切に引用を行えば、著作権者の許諾なしに行うことができる重要な手法です。
しかし引用の条件を満たさなければ、転載となりますので注意が必要です(無断転載禁止が多いため)。
引用の5条件
引用を適切に行うためには、以下の5つの条件を全て満たす必要があります。
- 公表された資料であること
- 明瞭区分性
- 引用の目的上正当な範囲内であること
- 出所を明示すること
- 引用部分を改変しないこと
これらの条件を一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 公表された資料であること
未公表の著作物を無断で引用することは著作者の公表権を侵害する可能性があります。
したがって、引用できるのは既に公表された著作物に限られます。
2. 明瞭区分性
区別性
引用部分は、自己の著作物と明確に区別されている必要があります。
通常、カギカッコやインデントを使用して区別します。
主従関係が明確であること
自分の著作物が「主」で、引用部分が「従」となる関係が明確でなければなりません。
引用が多すぎて主従が逆転するようなケースは単なる転載になるので避けるべきです。
つまり、自分の文章の内容を充実させるために第三者の論説を一部掲載し、それに対して自分の意見を述べるような場合は適切な引用となりますが、引用部分がメインとなるような表記は転載として扱われます。
3. 引用の目的上正当な範囲内であること
引用は、その目的に応じて適切な量を使用し、過度な引用は避けるべきです。
引用の必要性も考慮されます。
4. 出所を明示すること
誰が書いた何という文章か?を明らかにする必要があります。
ウェブサイトの場合は、記事タイトルとURL、書籍の場合は著者名や書名などを示します。
5.引用部分を改変しないこと
引用をする際には、元の文章を勝手に改変してはいけません。
これは同一性保持権(著作権法20条1項)に配慮しなければならないためです。
引用元の文章などに修正を加えることなく、そのまま記載しましょう。
転載とは
一方、転載はすでに公開されている他人の著作物の全体または大部分そのまま複製し、別の媒体に掲載することを指します。
転載は原則として著作権者の許諾が必要
文章や写真などを「転載」する場合は、必ず著作権者の許諾を得るようにしましょう。
公的機関が作成した資料は転載可能
著作権法上、国や地方公共団体などの公的機関が作成した資料は、出所を明示すれば著作権者の許諾を得ずに転載できます。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2国等の周知目的資料は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
転載する場合の注意点
転載の際には、次のような点に注意が必要です。
- 著作権者の許可が必要かどうかを確認する
- 原文の内容を改変しない
- 引用のルールを遵守する
- 引用や転載の申請方法を確認する
転載の際には、著作権者の許可が必要かどうかが最も重要です。
著作権法では、すべての著作物は著作権によって保護されており、私的な利用などの例外を除いて、著作権者以外が許可なく複製することはできません。
また、転載の際には、次のような点にも注意しましょう。
- 原文の内容を改変しない
改変は違法になります。元の文章や写真を無断で加工してはいけません。 - 自分の文章と転載元の文章を明確に区分できるように表記する
ただし「転載禁止」の表示がある場合は、何をやっても転載禁止です。
「転載禁止」であっても、引用の5条件を満たせば「引用」は可能です
引用と転載の主な違い
- 量的な違い
引用は一部分の利用、転載は全体または大部分の利用。 - 主従関係
引用では自分の著作物が主、転載では他人の著作物が主。 - 許諾の必要性
引用は条件を満たせば許諾不要、転載は原則として許諾が必要。 - 目的
引用は自分の主張の補強など、転載は著作物そのものの紹介が目的。
判例から見る引用の適法性
絶対音感事件(知財高裁 平成22年10月13日判決)
アメリカの作曲家の著作に係る演劇台本を日本語に翻訳した者の許諾を得ないで、前記翻訳台本の一部をノンフィクションの「絶対音感」と題する書籍に採録した行為が、著作権侵害に該当するとして訴えが提起された事案。
被告は、上記翻訳部分の採録は著作権法32条1項所定の適法な引用に当たるとして主張したので,「引用」の該当性が争われた
この事件では、音楽教育に関する書籍の一部を無断利用した行為が問題となりました。
裁判所は以下の点から著作権侵害と判断しました。
- 利用された部分の量が多く、主従関係が不明確
- 出所の明示が不十分
- 引用の目的や必然性が不明確
引用の5条件を満たしていないことが分かりますね。
まとめ
- 引用の必然性を確認する
- 引用部分を最小限に抑える
- カギ括弧などで引用部分を明確に区別する
- 出典を明記する
- 可能な限り原文のまま引用する
- 著作権者から書面で許諾を得る
- 許諾条件を遵守する(期間、使用範囲など)
- 出典を明記する
- 可能な限り原文のまま掲載する
「引用の5条件」を理解し、適切に実践することで、著作権侵害のリスクを回避しつつ、自身の著作物の質と信頼性を高めることができます。
一方、転載は原則として許諾が必要であることを忘れずに、適切な手続きを踏むことが重要です。
引用と転載の違いを正しく理解して、資料作成や記事を執筆しましょう。
著作権法は複雑で、判断に迷うケースも多々あります。
そのような場合は、著作権者に直接確認するか、専門家に相談することをおすすめします。
正しい知識で、より良い情報発信を心がけていきましょう。
著作物の適正な引用方法については、以下の記事をご覧ください。
著作権契約書の作成、著作権登録、著作権研修の開催はお任せください
弊所は、貴社の著作権に関する様々な問題を解決します。
- 著作権が絡む権利関係を上手く契約書に落とし込みたい
- 自分の著作物(著作権)を登録したい
- 自社で開発したプログラムの創作年月日を登録したい
- 社員に著作権研修を実施してコンプライアンス意識を高めたい
このようなケースでお悩みの事業者様やクリエイター様は今すぐご相談ください。
しっかりとヒアリングをおこなったうえで、最適な解決方法をご提案します。
著作権に関する正しい知識を用いて、あなたの事業を安心・安全に推進しましょう。
LINEで簡単!全国どこからでも対応致します。
最初だけ、メールまたはLINEでお問い合わせください。
詳しいお話は電話やZoomでお伺いします。
- エンターテインメント業界
映画、音楽、テレビ番組の制作会社:コンテンツの制作・配信において著作権が重要なため、著作権侵害を防ぐための教育が不可欠。
ゲーム業界:ゲーム開発やデザイン、音楽の使用において著作権が関連します。
出版業界:書籍、雑誌、電子書籍の著作権管理やライセンスが必要。 - クリエイティブ業界
広告業:広告やデザインの制作に関して、第三者の著作物を適切に使用するための知識が必要。
グラフィックデザイン、ウェブデザイン:画像やフォントなどの素材の著作権を理解し、正しく利用するために教育が求められます。
写真家、映像制作者:自らの作品の保護と、他者の作品の利用についての理解が重要。 - IT・テクノロジー業界
ソフトウェア開発者:ソフトウェアのライセンスやコードの使用に関して、著作権やオープンソースライセンスの知識が不可欠。
プラットフォーム運営者:ユーザー生成コンテンツの管理に関して、著作権侵害を防ぐ責任が求められます。 - 教育・学術機関
学校・大学:教育現場で使用する教材や学術論文の著作権を適切に扱うため、教員や学生に対する著作権教育が重要。
研究者:研究成果や論文の著作権管理についての理解が求められます。 - メディア・ジャーナリズム
新聞社、テレビ局、オンラインメディア:記事や映像、写真の使用に関する著作権の取り扱いが非常に重要です。 - Eコマース・マーケティング業界
オンラインショップ運営者:他者の製品写真やレビュー、コンテンツの使用に関して著作権の知識が必要。
ソーシャルメディアマーケティング:コンテンツのシェアや再利用に際して、著作権の理解が重要。 - 人材育成・社員研修業界
配布する研修資料自体の著作権に関する取扱いを定める必要があります。
研修に用いるスライドにイラストや写真などの素材の利用に関して著作権の知識が必要。
商取引に関する契約書
- 動産売買契約書
- 土地売買契約書
- 土地建物売買契約書
- 継続的売買契約書
- フランチャイズ契約書
- 特約店契約書
- OEM契約書
- 販売代理店契約書
- 秘密保持契約書(NDA)
- 事業譲渡契約書
- 企業主導型保育従業員枠共同利用契約書
- M&Aアドバイザリー契約書
- 継続的商品売買契約書
- スポンサー契約書
- 営業代行委託契約書
- デジタルサイネージ広告掲出契約書(約款)
賃借に関する契約書
- 建物使用貸借契約書
- 建物賃貸借契約書
- 定期建物賃貸借契約書
- 定期借地権設定契約書
- 事業用定期建物賃貸借契約書
- 駐車場賃借権契約書
- 社宅借り上げ契約書
賃金と担保に関する契約書
- 債権譲渡契約書
- 金銭消費貸借契約書
- 抵当権設定契約書
- 代物弁済契約書
- 準消費貸借契約書
- 集合動産譲渡担保契約書
- 質権設定契約書
請負・業務委託契約書
- 業務委託契約書
- 建設工事請負契約書
- 不動産管理委託契約書
- コンサルタント契約書
- システム開発契約書
- 営業委託契約書
- ヘアーサロン美容師業務委託契約書
- ヘッドスパ・セラピスト業務委託契約書
- ネイリスト業務委託契約書
- アイリスト業務委託契約書
- ヘアサロン・美容室面貸し契約書
- ヨガ・ダンス教室業務委託契約書
- 給食提供業務委託契約書
- 訪問歯科医療委託契約書
- 動画制作業務委託契約書
- 声優・ナレーター動画出演委託契約書
- ライター業務委託契約書
- 脚本(シナリオ)執筆委託契約書
- SNS運用代行契約書
- 動画・舞台出演契約書
- コールセンター業務委託契約書
- システム・機械保守メンテナンス契約書
- セミナー・講演会・出演契約書
- イラスト制作業務委託契約書
- 写真家・フォトグラファー業務委託契約書
- ダンス・舞踊創作の委託契約書
- デリヘル店業務委託契約書
- マッサージ、リラクゼーションサロン業務委託契約書
- レンタル彼女キャスト業務委託契約書
- オンライン事務(バックオフィス)代行サービス業務委託契約書
- 社員研修講師委託契約書
- 研修の外部講師との業務委託契約書
- 音楽教室の講師業務委託契約書
- 料理教室の講師業務委託契約書
- アートメイク看護師業務委託契約書
- 医療ハイフ看護師業務委託契約書
- ヨガ・ピラティスインストラクター業務委託契約書
- 住宅リフォーム会社と外注の職人との業務委託契約書
労働に関する契約書
- 雇用契約書
- 労働者派遣基本契約書
- 入社・退社誓約書
- 身元保証契約書
- 出向契約書
- 専属マネジメント契約書
著作権に関する契約書
- 著作権譲渡契約書
- 著作権利用許諾契約書
家族・近隣に関する契約書
- 贈与契約書
- 死因贈与契約書
- 境界確定契約書
- 遺産分割協議書
- 夫婦財産契約書
- 任意後見契約公正証書
- 通行地役権設定契約書