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業務委託契約書を作成・チェックする際は、どんな点に気を付ければいいのかな?
写真撮影の業務委託契約書は、委託された撮影業務の「コンセプトイメージ」、「報酬」や「著作権」について定めることが重要です。
今回は、フリーのフォトグラファー向けに写真撮影の業務委託契約書に関わる業務委託契約書を作成するときに気を付けるポイントを解説します。
写真撮影の業務委託契約書とは
写真撮影の業務委託契約とは、依頼者から特定の期間、特定のテーマに添って写真撮影を依頼され、その対価としてフォトグラファーが報酬を受け取る契約内容を指します。
契約書では、写真のテーマ、コンセプトイメージ、必要枚数、単価、納期、納品方法、著作権の帰属先などについて定めます。
これらの中でも「コンセプトイメージ」、「報酬」、「著作権」についてはトラブルに発展しやすい事項ですので、十分理解したうえで契約書を作成・チェックするようにしましょう。
写真撮影の業務委託契約書で気を付けるポイント
請負契約=直接雇用ではない点を認識する
写真撮影の業務委託契約は『請負契約』に該当します。
契約当事者の一方(受託者)がある仕事の完成を約束し、相手方(注文者)がその対価として報酬を支払うことを約束する契約。
つまりフォトグラファーであるあなたは、発注者に直接雇用されているわけではないので、出勤時間や休憩時間について色々と制約を受ける必要がありません。
その反面、社会保険や労災保険は適用されませんので、もしあなたが撮影中に怪我をしても原則自己負担で診療する必要があります。(*契約書で発注者負担で保険をかける場合もあります)
つまり業務委託契約を締結するのであれば、契約書に下記の事項が盛り込まれていないことを確認しておきましょう。
- 出勤時間・退勤時間を定めている
- 休憩時間を制限している
- 過度な報告を求められる
- 休日を自由に取らせない
- 自社の福利厚生制度を利用させる
- 報酬から所得税や住民税を差し引く
業務の委託内容を詳細に定める
株式会社cat’ in on( 以下「甲」という。(仮称))と、フォトグラファーユキマサくん(以下「乙」という。)とは、写真撮影業務に関し、以下のとおり業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条 (委託)
⼄は、甲に対し、以下の写真(以下「本著作物」という。)の撮影を委託し、甲はこれを受託した。
(1)テーマ:
(2)形式:
(3)枚数:
納品後のトラブルを防止するために、発注者とフォトグラファー双方で、写真のコンセプトやイメージをしっかりと共有しておきましょう。
例えば、フジロックやライジングサンの様な野外ロックフェスの撮影であれば、大自然の中にある緑豊かな風景と、出演バンドの躍動感、そして観客の感動が伝わるような仕上がりを表現する必要があります。
そこで契約書には、下記の事項について具体的に明記します。
・イベントの日時
・イベントのコンセプト
・写真の完成イメージ
・写真の最低枚数
・写真のデータ形式(RAWモード撮影、JPEG等)
・納期
・納品方法など
報酬規程を定める
写真撮影の業務委託契約は、報酬の清算方法について具体的に定めましょう。
例えば、「最低撮影枚数を定め、その規定枚数を納品すれば〇万円を支払う」とか「写真1枚あたりの単価を〇円と定め、写真選定は発注者がおこなう」など。
また、撮影場所が遠方となる場合は、報酬とは別に旅費・交通費は発注者と受注者(フォトグラファー)どちらが負担するのか?についても契約書で合意しておきましょう。
旅費・交通費を発注者に請求できない場合は、撮影単価が極端に低くならないように注意しなければなりません。
キャンセルポリシー(不可抗力)を定める
コロナウイルスの流行時には、多くのライブやフェスが中止を余儀なくされました。
また、近年は能登半島地震のような大規模自然災害が多発しております。
そこで契約書には、ウイルスや地震などの予期せぬ災害により、どうしてもイベントを中止せざるを得ない状況になった場合の措置や報酬の清算方法(キャンセルポリシー)について規定しておくことが望ましいと言えます。
イベントが中止となった場合は写真撮影もできませんから、当然報酬が支払われることもありません。
しかし、例えば1日目の撮影が無事に終了し、2日目のイベントが中止になった場合はどうでしょうか。
この場合、フォトグラファーは1円も受け取れないかと言えばそうではなく、民法の請負契約の規定に則ると、初日の撮影分はフォトグラファーは請求する権利が生じます。
一方、中止ではなく『延期』となる場合もあります。
時期によっては次回日程の撮影は受託できない場合や、撮影単価が上下する可能性もあるでしょう。
この場合は、あらたに契約書を締結し直すか『覚書』で対処することになります。
いずれにしても、予期せぬ災害が多発する昨今、キャンセルポリシー(不可抗力条項)を定めておくことは非常に重要です。
著作権を侵害していないこと保証する
イベント撮影は生物であるため、フォトグラファーがネットで拾った写真を納品するようなことは考えにくいですが、念のため契約書では、フォトグラファーが撮影した画像が、第三者の著作権、肖像権等の権利を侵害しないものであることを保証する旨を定めておきましょう。
著作権の権利帰属を定める
写真撮影の業務委託契約書では、写真の著作権が撮影者(あなた)に留保されるのか?それとも発注者側に譲渡するのか?がしばしば問題となります。
この点著作権法では、実際に著作物を創作した⼈(撮影者)が著作者となり、その著作者が著作権を持つ、と定めています。
イベントの主催者がフォトグラファーに報酬を⽀払ったからといって、それだけで著作権を取得することにはなりません。
もしイベントの主催者に著作権が移転していない状態で、主催者があなたに無断で写真を販売するなどすれば、発注者は著作権法違反になります。
そこで契約書には、写真の著作権を発注者に譲渡するのか・しないのか?を定めておく必要があります。
著作権を、発注者(イベントの主催者)に譲渡する場合は、下記のとおり明記しておきましょう。
第◯条(権利帰属)*参考
本業務に基づき撮影された本件目的物に関する著作権その他の権利(著作権法第27条及び第28条に基づく権利を含む。)については、第◯条の検査完了と同時に乙から甲に譲渡されるものとする。
(翻訳権、翻案権等)
第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第28条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
著作権譲渡と利用許諾の違いについては以下の記事をご覧ください。
肖像権やプライバシー権等を侵害していないことの保証
第○条(保証)(参考例)
甲は、⼄に対し、本件納品物が第三者の著作権、プライバシー権、名誉権、パブリシティ権その他いかなる権利をも侵害しないことを保証する。
例えば、結婚式の写真撮影であれば被写体は親族や友人に限定されますが、ロックフェスや地域のお祭りなどの撮影では不特定多数が映り込むことになります。
被写体が不特定多数に及ぶということは、意図せず第三者の肖像権やプライバシー権等を侵害してしまうことがあります。
あなたが撮影したイベントの写真をクライアントに納品→クライアントが写真を雑誌に掲載→写真に映り込んでいた第三者がプライバシー権を侵害されたと出版社を提訴
この様な場合、出版社はあなたに対して損害賠償請求するかもしれません。
したがって、写真撮影の業務委託契約書では、受託者(フォトグラファー)が他⼈の権利を侵害していないことを保証する条項(表明保証)を設けておくと良いです。
もっとも、このような条項を契約書に盛り込んだとしても、著作者(フォトグラファー)に対して契約違反の責任をとってもらうことができるようになるだけで、肖像権やプライバシー権等侵害の被害者に対する責任が消滅するわけではありません。
映り込んだ人物は肖像権の侵害にあたるか?
一般的には、ロックフェスやイベント会場などの「人が集まる場所」かつ「撮影が予想できる状況」で撮影されて映り込んだ人物の写真は、そもそも取られる人も「写真に映り込むこともあるかもね」という前提で足を運んでいるので、不特定多数の中に映り込んでいるというだけで、肖像権・プライバシー権等の侵害で訴えられる可能性は低いと言えます。
一方、被写体から人物が特定できたり、その写真をホームページのトップ画像に用いるような場合は、肖像権・プライバシー権の侵害にあたります。
また昨今は子供が映り込んでいる場合はトラブルに発展しやすいので、慎重に撮影・選別する必要があります。
印紙税について理解する
写真撮影の業務委託契約は『請負契約』に該当します。
そして請負契約は、印紙税法の第2号文書「請負に関する契約書」に該当します。
請負に関する契約書の印紙税額は、契約書に記載された金額により変わります。
記載された契約金額 | 税額 | |
---|---|---|
1万円未満のもの | 非課税 | |
1万円以上 | 100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え | 200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え | 300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え | 500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え | 1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え | 5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え | 1億円以下のもの | 6万円 |
ただし、請負に関する契約書に該当するものであっても、営業者間において、継続する複数の取引の基本的な取引条件を定めるものは、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当することがあります。
例えば同じ写真撮影の業務委託契約であっても、3ヶ月の期間を超え、毎月定額払いで写真の撮影を請負う場合は、印紙税法の第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」とみなされ、印紙税額が異なります。
印紙税額は契約書のタイトルではなく、あくまでも契約書の内容で決まるという点に注意が必要。
まとめ
今回は、フリーランスのフォトグラファーの方に向けて、写真撮影の業務委託契約書を作成するときに気を付けるポイントを解説しました。
今回解説したポイントは特に重要ですので、必ず抑えておきましょう。
- 動画制作の業務委託契約は請負契約=直接雇用ではない
- 業務の委託内容を詳細に定める
- 報酬規程を定める
- キャンセルポリシー(不可抗力)を定める
- 著作権を侵害していないことを保証する
- 著作権の権利帰属を定める
- 肖像権やプライバシー権等を侵害していないことの保証
- 印紙税について理解する
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