あるセミナーに参加したときに資料をもらったんだよね。
そしたら表紙に「無断転載禁止!」って大きく載せてあるの。
よほど有料級の情報が盛り沢山なんだろうね。
いやいやそれがさ、公的な統計資料ばかりでとても著作物とは言えない中身だったよ。
著作物じゃないから無断転載しても問題ないよね?
著作権法違反にあたらなくても民法上の不法行為責任を問われる可能性があるから止めといた方がいいですよ。
多くの企業が資料に「無断転載禁止」という文言を記載していますが、この表記にはどのような法的効力があるのでしょうか?
また、コンプライアンスの観点から、他社の資料を利用する際にはどのような点に注意すべきでしょうか?
本記事では、「無断転載禁止」の表記の有効性と、関連する法的リスクについて詳しく解説します。
「無断転載禁止」と著作権法
まず押さえておくべき重要なポイントは、「無断転載禁止」という表記の効力について。
たとえ「無断転載禁止」の表記があったとしても、著作権法による保護を受けるためには、その内容に「著作物性」が認められる必要があります。
著作物性の要件
著作権法で保護される「著作物」とは、思想または感情を創作的に表現したものを指します。
単なる事実やデータの羅列、一般的な文章のテンプレートなどには、通常、創作性は認められません。
つまり、資料に「無断転載禁止」と書かれていても、その内容に著作物性が認められない場合は、著作権法による保護は受けられないのです。
著作物性がない場合の「無断転載」
資料の内容に著作物性が認められない場合、厳密には著作権法上の「無断転載」という概念自体が適用されません。
つまり、法的には自由に利用できることになります。しかし、ここで注意が必要です。
著作権法による保護がないからといって、その資料を無制限に使用して良いわけではありません。
著作権以外の法的リスク
著作権法による保護がない場合でも、他の法律によって資料の無断使用が制限される可能性があります。
特に注意すべきは以下の点です。
契約による制限
資料の利用に関する契約が存在する場合、その条件に従う必要があります。
例えば、会員制のウェブサイトの利用規約で転載を禁止している場合、それに違反すると契約違反となる可能性があります。
不正競争防止法
営業秘密や限定提供データとして保護される情報が含まれている場合、不正競争防止法による保護を受ける可能性があります。
この場合、無断で使用すると法的責任を問われる可能性があります。
民法709条(不法行為)
最も注意が必要なのが、民法709条に規定される不法行為です。
著作権法で保護されない資料であっても、その無断利用が資料作成者の法律上保護される利益を侵害する場合、不法行為として損害賠償責任が生じる可能性があります。
民法709条は以下のように規定しています。
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
この規定が適用される可能性がある状況として、以下のようなケースが考えられます。
- 営業秘密や企業ノウハウが含まれる資料の無断使用
- 個人情報や機密情報を含む資料の公開
- 資料の無断利用により作成者の信用や評判、利益が損なわれる場合
- 営業的価値が高いものを模倣する行為
裁判所は、行為の態様、被害の程度、社会的影響などを総合的に考慮して不法行為の成立を判断します。
不法行為が認められるためには、権利侵害、故意・過失、因果関係、損害の発生など幅広い要件を満たす必要がありますが、裁判所は特に営業的価値が高いものを模倣する行為を重視しています。
コンプライアンス上の留意点
以上の法的リスクを踏まえ、企業のコンプライアンス担当者や役員の方々は、以下の点に特に注意を払う必要があります。
資料の性質の確認
使用しようとしている資料が著作物に該当するか、また他の法的保護の対象となっていないかを慎重に確認してください。
単なるデータや事実の羅列であっても、その収集や編集に創意工夫が凝らされている場合は、著作物として保護される可能性があります。
利用目的の適切性
たとえ著作権法上の問題がなくても、その資料の利用が倫理的に適切かどうかを考慮します。
企業の評判や信頼性に影響を与える可能性がある場合は、利用を控えるべきでしょう。
出典の明記
可能な限り、使用する資料の出典を明記することをお勧めします。
これにより、情報の信頼性が高まるだけでなく、潜在的な法的リスクも軽減できる可能性があります。
なお「転載禁止」との表記があったとしても、適切な引用方法であれば引用することは可能です。
転載と引用の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
許諾の取得
疑問がある場合は、資料の作成者や権利者に直接連絡を取り、使用の許諾を得ることを検討してください。
これが最も安全確実な方法です。
社内ガイドラインの整備
他社(他者)の資料を自社で利用する際の判断基準や手続きを明確にした社内ガイドラインを整備し社内で共有しましょう。
また定期的に従業員へのコンプライアンス教育を行うことも有効です。
これにより社員が著作権やその他の法令に抵触するリスクを抑えることができます。
まとめ
今回は「無断転載禁止」の表記の有効性と、関連する法的リスクについて解説しました。
「無断転載禁止」の表記があっても、その内容に著作物性が認められない場合は著作権法による保護は受けられません。しかし、それだけで安全と判断するのは危険です。
民法の不法行為や他の法律による制限の可能性を常に考慮し、慎重に判断する必要があります。
企業活動において他社(他者)の資料を利用する際は、法的リスクだけでなく、倫理的な観点からも適切かどうかを十分に検討してください。
どうしても疑問がある場合は、法務部門や弁護士・行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。
著作権者の権利と自社のコンプライアンスを守る企業活動を心がけましょう。
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絵画、彫刻、写真、インスタレーションなどはすべて著作物として保護され、美術館やギャラリーで展示や販売する際に著作権の管理が関わります。 - アーティスト・イラストレーター
自分の作品の著作権を管理するだけでなく、クライアントワークやライセンス契約における権利の保護が大切です。
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ファッションデザインやロゴデザイン、アクセサリーデザインも著作権で保護されることがあります。特にブランドやパターンの模倣・コピーの問題が発生しやすく、著作権管理が重要です。
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配布する研修資料自体の著作権に関する取扱いを定める必要があります。
研修に用いるスライドにイラストや写真などの素材の利用に関して著作権の知識が必要です。
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