落ち着きを取り戻しすつある新型コロナウイルスですが、緊急事態宣言が発出された当時は日本中で多くのイベントや公演会が急遽中止や延期を余儀なくされました。
また近年は集中豪雨により、イベントが緊急中止される事態が増えています。
このような急なイベントの中止や延期により、出演者や関係者への報酬支払いについてどう対処するのかが問題となります。
イベントが中止や延期になった場合でも、主催者は関係者へ報酬を全額支払う義務があるのでしょうか?
このような問題を回避するため、契約書には『不可抗力条項』というものがあります。
本記事では、アーティストやスタッフ等のイベント出演契約書における『不可抗力条項』の重要性と契約書作成の注意点などについて解説します。
不可抗力条項とは
感染症、天変地変、戦争・暴動・内乱、法令の制定・改廃、公権力による命令・処分、ストライキ等の争議行為、輸送機関の事故、通信事業者における通信の遮断、本業務のために利用するサービスの中断または廃止、その他不可抗力による本契約に基づく債務の履行遅滞又は履行不能が生じた場合は、いずれの当事者もその責任を負わない。
不可抗力条項とは、新型コロナウイルスの蔓延や台風、地震など、契約の当事者ではコントロールできない予期せぬ事態により、契約の履行がやむを得ず不可能または著しく困難になった場合の取り扱いを定める条項です。
公演の中止や延期時の報酬や損害の負担について定めるために盛り込まれます。
もし不可抗力によりイベントが中止になった場合、債務者(この場合、主にイベント主催者)は損害賠償責任を負いません。
1 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
不可抗力条項を盛り込む契約者双方のメリットは以下のとおりです。
- 報酬の支払いトラブルを防ぐことができる
- 問題が起きても迅速に解決できる
- イベントが中止や延期になっても業務を継続的に実施できる
不可抗力条項作成のポイント
ひな型
不可抗力条項の参考例として、文化庁の「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」から不可抗力条項のひな型を抜粋しご紹介します。
第○条
1 感染症の流行、台風、地震等の天災など当事者双方の責めに帰することができない事由により、公演等が中止・延期となり出演業務ができなくなったときは、(発注者)は当該業務に関する報酬の請求を拒むことができる。ただし、(実演家)は、既に出演業務を行った割合に応じて、報酬を請求することができる。
2 前項の規定は、(発注者)及び(実演家)が、報酬の支払の要否及びその額について、中止・延期となった日から公演等の当日までの期間、中止・延期となった日までに(実演家)が実施した業務の履行割合、中止・延期により(実演家)が負担することとなる経費、公演等のために(実演家)が確保していた予定の日数、公演等が実施されれば得られる予定であった報酬額、(発注者)の当該公演等に関する収入の有無、中止公演等に代わる延期公演等の実施の有無等を勘案し、協議の上、決定した場合には適用しない。
文化庁のガイドラインはどなたでもダウンロードが可能です。
ダウンロードはこちら。
ひな型の解説
上記ひな型は、不可抗力による公演の中止・延期時の報酬の取り扱いについて定めています。
主なポイントは以下の通り。
- 不可抗力の例示:感染症の流行、台風、地震等の不可抗力事例を具体的に挙げています。
- 基本原則:不可抗力により公演が中止・延期となった場合、発注者(主催者)は報酬の支払いを拒否できます。
- 例外規定:ただし実演家(出演者)は、既に行った業務の割合に応じて報酬を請求できます。
- 協議の余地:当事者間で協議し、様々な要素を考慮して報酬の取り扱いを決定できる余地を残しています。
履行の割合に応じた報酬の請求権
なお、第1項のただし書きについては履行割合型の準委任契約を想定して記載しています。
請負契約又は成果報酬型の準委任契約の場合には、「ただし、(実演家)は既にした出演業務の結果のうち可分な部分において(発注者)が利益を受けるときは、その利益の割合に応じて報酬を請求することができる。」とすることも考えられます。(ガイドラインP27解説を抜粋)
公演等の中止・延期が不可抗力によるものかは個別の事情によって判断されますが、第1項では、民法を踏まえ、当事者双方の責めに帰することができない事由により公演等が中止・延期となり出演業務ができなくなったときは、発注者は当該業務に関する報酬の請求を拒むことができること、ただし、実演家は、既に出演業務を行った割合に応じて、報酬を請求することができることを定めています。
【注文者が受ける利益の割合に応じた報酬】
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
請負契約と準委任契約の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
ひな型は基本的な枠組みを提供していますが、個々の状況に応じてカスタマイズすることが重要です。
例えば、以下のような追加条項を検討することもできます。
2 不可抗力の事由が3ヶ月間継続し、この間債務の履行ができないときは、甲及び乙は、相手方に書面又は電子的方式による通知をして、本契約を任意に解約することができる。
イベント中止に備えて盛り込む項目
先ほどのひな型では「不可抗力が起こった際、報酬の支払いについては協議する」と定めていました。
しかし可能であれば、契約締結時に以下の細かい事項まで事前に合意しておくと安心です。
- 業務完了後の中止・延期の場合の報酬支払規定
中止延期でも全額支払う、など - 交通費、宿泊費、衣装レンタル等のキャンセル料の負担
キャンセル時の費用は主催者が負担する、など - 直前の中止による報酬支払規定
公演○○日前からの中止は報酬の○○%を支払う、など。
具体的な数字を設定することで、後々の解釈の違いを防ぎます。 - 代替公演の優先的な出演権を付与する
- 中止・延期の決定期限を設定する
例:公演の2週間前まで、など。 - 代替案を用意する
中止の場合のオンライン配信への切り替えや、延期時の優先出演権の付与など、代替案を提示するなど。 - 不可抗力事由が解消した後の再交渉の機会を設ける
- 中止のよる損害を負担する保険の適用の可否を定める
まとめ
今回は、イベント出演契約書における『不可抗力条項』の重要性と契約書作成のコツなどについて、イベント主催者の立場から解説しました。
最後に不可抗力条項を盛り込むメリットを整理します。
- トラブルの予防:報酬や損害負担に関する紛争を未然に防ぐことができます。
- 公平性の確保:双方の立場を考慮した対応が可能になります。
- スムーズな対応:中止・延期時の手続きや判断基準が明確になります。
- リスク分散:不測の事態による損失を最小限に抑えることができます。
- 法的保護:紛争時に自社の立場を守る根拠となります。
音楽フェスや講演会などのイベント主催者は、昨今のコロナ禍や豪雨災害を教訓に、今一度自社のイベント出演契約書を見直し、適切な不可抗力条項を盛り込むことをお勧めします。
また、業界団体や弁護士・行政書士などの専門家のアドバイスを受けながら、自社の実情に合った契約書を作成することも検討してみてください。
これを機に、より強固なリスク管理体制を築いて持続可能なイベント運営を目指していきましょう。
今回はイベントに焦点を当てて説明しましたが、社員研修やセミナー、地域の祭りなどのイベントでも『不可抗力条項』の基本的な考え方は同じです。ぜひ応用してみてください。
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