ユキマサくん最近、AIツールを使って成果物を制作するようになったんだけど、クライアントとの業務委託契約書ってこのままで大丈夫かな?



AI使用については、従来の業務委託契約書では対応できないリスクがたくさんあります。
トラブルを防ぐためには、AI特有の条項を盛り込む必要がありますね。



具体的にどんな条項を入れればいいの?
著作権とか、権利関係が心配で…



わかりました。
それでは今回は、AIを使って成果物を制作するクリエイター向けに、業務委託契約書に必ず盛り込むべき10の条項と実例を解説します。
AIツールを使用して制作活動を行うフリーランスクリエイター・イラストレーター・デザイナー・ライター・動画クリエイター・企業から業務委託で仕事を受注している個人事業主など
AI使用とクリエイター契約の新しい課題
生成AIの普及により、クリエイターの成果物制作プロセスは大きく変化しています。
ChatGPT、Copilot、Geminiなど、様々なAIツールを活用すれば制作時間を大幅に短縮できますし、新しい表現の可能性も広がっています。
一方で、従来の契約書では想定していなかった法的リスクも生まれています。
特に問題となるのが、著作権の帰属、第三者権利侵害のリスク、機密情報の取扱い、成果物の品質保証などです。
これらのリスクに対処せず曖昧なまま業務を進めると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。



確かに、クライアントにAI使うって言わずに納品したら後で問題になりそうだよね…



そうなんです。
今回は、AIを使用するクリエイターが業務委託契約書に盛り込むべき10の重要条項を、具体的な条文例とともに解説していきます。
必ず盛り込むべき10の条項
1. AI使用と著作権帰属の明確化
なぜ必要か?
AI生成物は、著作権法上の「著作物」と認められない可能性があります。
著作権が発生するには「人間の創作的な表現」が必要ですが、AIが自動生成したものは、この要件を満たさない可能性が高いのです。
つまり、AIの出力をそのまま納品してしまうと、クライアントが期待する著作権を取得できないリスクがあります。



えっ、それってクライアントに著作権が渡らないってこと?
それは大問題だね…



そうなんです。
だからこそ、AI生成物に対してクリエイター自身が十分な創作的関与を加える必要があります。
参考条文
1. 乙は、本業務の遂行にあたりAIツールを使用する場合、AI生成物をそのまま納品するのではなく、乙自身の創作的関与を十分に加えるものとする。
2. 乙は、最終成果物について著作権法上の著作物性が認められるよう十分な創作性を付与するものとする。
3. 前項により創作された成果物の著作権は、甲に帰属するものとする。
- AIの出力をそのまま使わず、必ず人の手を加える
- 著作物性を確保するため、創作的関与を明記する
- 権利帰属について発注者と事前に合意しておく
- どの程度の加工が必要かを具体的に決めておく
例えば、AIイラストであれば、色調整、構図変更、細部の描き込みなど、あなた自身のセンスと技術を加えることが大切です。
AIライティングであれば、構成の見直し、表現の修正、独自の視点の追加などが必要になります。
2. 第三者権利侵害の防止と責任
なぜ必要か?
AIは膨大な既存作品を学習して画像や文章を生成するため、既存作品と似た成果物を作り出してしまうリスクがあります。
特にイラストや画像の場合、有名な作品やキャラクターに酷似したものが生成されてしまい、後から権利者からクレームを受ける可能性があるのです。



確かに、AIで作ったイラストが既存のキャラに似てたら大変だよね…
参考条文
1. 乙は、AI生成物が第三者の著作権その他の権利を侵害していないか、十分な確認を行うものとする。
2. 乙は、既存の著作物と実質的に同一または類似する成果物を納品してはならない。
3. 万一、第三者から権利侵害の主張がなされた場合、乙は自己の責任と費用において対処するものとする。ただし、甲の指示に起因する場合はこの限りでない。
- Google画像検索などで類似作品がないか確認する
- 有名キャラクターやロゴに似ていないかチェックする
- 万一のときの責任範囲を明確にしておく
- クライアントの指示による場合は免責とする
3. AI使用の事前開示義務
なぜ必要か?
クライアントの中には、AI生成物を好まない方もいます。
「完全手作業」を期待していたのに、実はAI使用だったと後から知ると、大きなトラブルになる可能性があります。
ブランドイメージやポリシーの問題で、AI使用を認めない企業もあるため、事前の開示と承諾が必須です。
参考条文
1. 乙は、本業務の遂行にあたりAIツールを使用する場合、事前に甲に対してその旨を開示するものとする。
2. 乙は、使用するAIツールの名称、使用目的、使用範囲について、甲の求めに応じて説明するものとする。
3. 甲がAI使用を認めない場合、乙はこれに従うものとする。
- 契約前にAI使用の有無を必ず伝える
- どのAIツールを使うか具体的に説明する
- クライアントの意向を最優先する
- 透明性を保ち信頼関係を築く



正直に伝えておけば、後々のトラブルを防げますし、クライアントとの信頼関係も深まります。
4. 機密情報・個人情報の保護
なぜ必要か?
AIツールに企業の機密情報や顧客の個人情報を入力してしまうと、そのデータがAIの学習に使われたり、サーバーに保存されたりする危険性があります。
特に海外のAIサービスでは、入力データの取り扱いに注意が必要です。
参考条文
1. 乙は、AIツールを使用する際、以下の情報を入力してはならない。
(1)甲から提供された機密情報
(2)個人情報
(3)未公開の商品情報、営業情報
2. 乙は、AIツール使用時における情報セキュリティについて、甲の定める基準を遵守するものとする。
3. 乙は、学習データとして利用されないAIツールを使用するよう努めるものとする。
- 企業秘密や個人情報は絶対にAIに入力しない
- メルマガの配信解除などオプトアウト設定を確認して使用する
- 安全なAIツールを選ぶ
- 情報漏洩のリスクを常に意識する
5. 成果物の独自性・オリジナリティ保証
なぜ必要か?
AI生成物は、他のユーザーが作った作品と似通ってしまうリスクがあります。
同じプロンプトを使えば似たような結果になりますし、クライアントが求める「独自性」や「オリジナリティ」が失われてしまう可能性があります。
参考条文
1. 乙は、AIツールを使用する場合であっても、甲のために独自性のある成果物を制作する義務を負う。
2. 乙は、AI生成物をそのまま納品するのではなく、十分な加工・編集を行い、独自の価値を付加するものとする。
3. 甲は、成果物が独自性を欠くと判断した場合、修正を求めることができる。
- AI出力に十分な加工・編集を加える
- あなた自身のセンスや個性を反映させる
- 他のクライアント案件との差別化を図る
- 修正対応の義務を明記しておく



AIはあくまで補助ツールで、最終的にはクリエイターの個性が大事ってことだね。
6. 人的関与の程度と品質保証
なぜ必要か?
完全にAIだけで作られた成果物を納品してしまうと、クライアントの期待を裏切ることになります。
また、修正依頼があったときに「AIが生成したものなので修正できません」では、プロとして失格です。
クリエイターとしてのスキルや経験を活かし、AI出力をベースにしながらも、しっかりと人の手を加えることが求められます。
参考条文
1. 乙は、AIツールを補助的に使用することができるが、最終的な成果物において実質的な創作的関与を行うものとする。
2. 乙は、AIツール使用の有無にかかわらず、修正・変更要請に対して適切に対応する義務を負う。
3. 乙は、成果物の品質について、プロフェッショナルとしての責任を負うものとする。
- AIは「補助ツール」として位置づける
- 主要部分は必ず人が制作する
- 修正対応力をしっかり確保する
- プロとしての品質責任を持つ
7. AIツール利用費用の負担
なぜ必要か?
AIツールには無料のものもあれば、月額数千円から数万円かかるものもあります。
費用負担が曖昧だと、「高額なAIツール代を請求された」「こんなに費用がかかるなら依頼しなかった」といったトラブルにつながります。
参考条文
1. 乙がAIツールを使用する場合の利用料金は、乙の負担とする。
2. 甲が特定のAIツールの使用を指定する場合、当該ツールの利用料金については甲乙協議の上決定する。
3. ◯◯円を超えるAIツールを使用する場合は、事前に甲の承諾を得るものとする。
- 基本的にはクリエイター側の負担とする
- クライアント指定ツールは別途協議する
- 高額ツール使用時は事前承諾を得る
- 報酬にツール代を反映させる



AIツール代を報酬に含めるのか、別途請求するのか、事前に明確にしておくことが大切です。
8. AI出力結果の検証義務
なぜ必要か?
AIは時として誤った情報を生成します(これを「ハルシネーション」と呼びます)。
特に文章作成においては、存在しない統計データ、誤った歴史的事実、架空の引用などが含まれることがあります。
そのまま納品してしまうと、クライアントの信用を失うだけでなく、損害賠償責任を問われる可能性もあります。
参考条文
1. 乙は、AIツールが生成した情報について、その正確性を十分に検証する義務を負う。
2. 特に事実関係、統計データ、引用情報については、信頼できる情報源により確認を行うものとする。
3. 検証が不十分であったことにより生じた損害については、乙が責任を負うものとする。
- ファクトチェックを徹底する
- 信頼できる情報源で裏取りする
- 統計データや数字は必ず確認する
- 検証不足による損害責任を明記する
9. AI使用表示の取り決め
なぜ必要か?
最近では、エンドユーザーへの透明性確保のため、「この画像はAIで生成されました」といった表示を求めるクライアントも増えています。
表示するかしないか、どのように表示するかについて、クライアントと事前に合意しておく必要があります。
参考条文
1. 成果物においてAIツールを使用した場合、甲の指示に従い、その旨を適切に表示するものとする。
2. 表示の方法、文言については甲が指定するものとする。
3. 甲がAI使用の表示を不要と判断した場合は、この限りでない。
- クライアントの方針に従う
- 表示・非表示の判断はクライアントに委ねる
- 表示文言を事前に確認する
- 透明性を保つことで信頼を得る
10. 納品後の契約内容不適合責任
なぜ必要か?
納品後に権利侵害が判明したり、誤情報が発覚したりすることがあります。
そのときに「誰が」「いつまで」「どのように」責任を負うのかを明確にしておかないと、大きなトラブルになります。
参考条文
1. 乙は、成果物について納品後1年間、以下の契約内容不適合責任を負うものとする。
(1)第三者の権利を侵害していないこと
(2)事実関係に重大な誤りがないこと
(3)甲が指定した品質基準を満たしていること
2. 契約不適合が発見された場合、乙は無償で修正・差替えを行うものとする。
3. 前項の対応が不可能な場合、乙は報酬の全部または一部を返還するものとする。
- 責任期間を明確化する
- 対応方法を具体的に定める
- 修正不可能な場合の報酬返還を明記する
- 免責事項も併せて規定する



クリエイターが責任を負う期間を定めておくのは、クライアントに安心してもらうためには必要かもね。



そうですね。
ただし納品前にしっかり確認すれば、納品後にトラブルは抑えられます。
まとめ
今回は、AIを使用するクリエイターが業務委託契約書に盛り込むべき10の重要条項を解説しました。
最後に、押さえておくべき重要事項をまとめます。
- 著作権帰属を明確化し、AI生成物に十分な創作的関与を加える
- 第三者権利侵害を防止するため、類似作品チェックを徹底する
- AI使用を事前開示し、クライアントの理解と承諾を得る
- 機密情報・個人情報をAIツールに入力しない
- 独自性・オリジナリティを確保した成果物を納品する
- 人的関与の程度を明記し、AIは補助ツールとして位置づける
- AIツール利用費用の負担者を明確にする
- AI出力結果の検証を徹底し、誤情報を防ぐ
- AI使用表示についてクライアントと合意する
- 納品後の責任範囲を明確化し、万一に備える
AI技術は日々進化していますので、契約内容も定期的に見直していくことが大切です。
適切な業務委託契約書を交わせば、安心してAIツールを活用しながら、質の高いクリエイティブ活動ができます。



AIを使うときのリスクがよく分かったよ。
けど適切な条項をちゃんと業務委託契約書に盛り込んでおけば、お互い安心して仕事ができるね。



そうですね。
AIは便利なツールですが、適切なルールのもとで使うことが大切です。
ぜひ今回ご紹介した10の条項を参考に、あなたの業務委託契約を見直してみてください。
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