リラクゼーションサロンの店長業務委託契約書とは?施術と店長業務の切り分けから契約書の作成のポイントとよくあるトラブル解説

ユキマサくん

経営しているリラクゼーションサロンの2店舗目を出すことになったんだけど、現場を任せられる人に店長業務をお願いしたいんだよね。
ただ、正社員で雇うのはちょっと難しくて、業務委託を考えているんだ。
しかもその人にもセラピストとしても働いてもらう予定。

純さん

施術もしながら店長業務も担う、というケースですね。
リラクゼーションサロンではよくある形ですが、施術業務と店長業務の切り分けを曖昧にしたまま契約書を作ると、あとからトラブルになりやすいです。
ポイントを押さえておきましょう。

リラクゼーションサロンでセラピストに店長業務も任せる形は、多店舗展開のオーナーや人件費を抑えたい場面でよく選ばれます。

ただし、施術と店長業務が混在する分、業務の範囲や報酬の設計が複雑になりやすく、契約書の作り方を誤ると偽装請負や労務トラブルに発展するリスクがあります。

今回は、リラクゼーションサロンのオーナー向けに、セラピスト店長を業務委託で起用する際のリスクと契約書作成のポイントを解説します。

マッサージ・ボディケア・リフレクソロジーなど業態が違っても、契約書作成の本質的な部分は同じです。

本記事の想定読者

リラクゼーションサロンのオーナー・複数店舗を展開している経営者・セラピストに店長ポジションを業務委託で任せたい方

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目次

リラクサロンで店長を業務委託にする場面とは

ユキマサくん

そもそも、どんなサロンが店長を業務委託で起用してるの?

純さん

多店舗展開のオーナーや、独立志向の強いセラピストを抱えているサロンでよく見られます。
具体的な場面を見ていきましょう。

業務委託が選ばれる主な理由

リラクゼーションサロンで店長を業務委託で起用する背景には、主に次のような理由があります。

  • 多店舗展開で店長の確保が追いつかない
    新店舗をオープンするたびに正社員の店長を採用していると、時間もコストもかかります。すでに信頼関係のあるセラピストに店長業務も委託すれば、スピーディに体制を整えられます。
  • 人件費・社会保険料の負担を抑えたい
    正社員として雇用すると、給与に加えて社会保険料の会社負担分が発生します。業務委託であれば、この負担がなくなります。
  • 独立志向の強いセラピストを引き留めたい
    「いずれ自分のサロンを持ちたい」と考えているセラピストに対して、業務委託という形で店長業務を経験してもらいながら、オーナーも店舗を回せるという関係を作れます。
  • 施術スキルの高いセラピストに現場を任せたい
    技術力があり顧客からの信頼も厚いセラピストを、雇用ではなく対等な事業者として起用したい場合にも業務委託が選ばれます。

「施術もする店長」と「管理専任の店長」で何が違うか

リラクゼーションサロンの店長業務委託には、大きく2つのパターンがあります。

パターン内容注意点
施術もする店長セラピストとして施術をこなしながら、店長業務(予約管理・スタッフへの指示・売上報告など)も担う施術報酬と店長業務報酬の切り分けが必要。業務が混在しやすく、偽装請負と判断されるリスクが高まりやすい
管理専任の店長施術は行わず、予約・シフト・売上管理・スタッフ統括など運営管理に専念する施術報酬の問題はないが、管理業務の範囲が広い分、指揮命令関係が発生しやすい

リラクゼーションサロンで多いのは「施術もする店長」のパターンです。

施術中は店長業務ができない時間が発生するため、業務の範囲と報酬をどう整理するかが契約書作成の最初のポイントになります。

純さん

「コストを抑えたいから業務委託にする」という発想だけで進めると、後々トラブルになりやすいです。
業務委託は「任せ方」そのものが雇用と違う、という認識を最初に持っておきましょう。

雇用契約との違いを押さえよう

ユキマサくん

業務委託と雇用契約って、具体的に何が違うの?

純さん

一番の違いは「指揮命令関係があるかどうか」です。
雇用契約はオーナーが細かく指示を出せますが、業務委託は結果を求める代わりに、やり方は相手に任せる関係です。

業務委託契約と雇用契約は、似て非なるものです。特にリラクゼーションサロンの店長業務のように、現場での判断が多い仕事では、両者の違いを正確に理解しておく必要があります。

項目業務委託契約雇用契約
指揮命令関係基本的になし(結果のみ要求)オーナーが細かく指示できる
報酬の性質業務の成果・内容に対する対価働いた時間に対する賃金
社会保険会社負担なし(本人が国民健康保険等に加入)健康保険・厚生年金を会社が折半負担
働く時間・場所原則として本人が決めるオーナーが指定する
業務の進め方本人の裁量で決定オーナーの指示に従う
税務・確定申告本人が確定申告・納税会社が源泉徴収・年末調整
労働基準法の適用なしあり(残業代・有給休暇など)

リラクサロンの現場で特に問題になる点

上の表を見ると、業務委託と雇用の違いは明確に見えます。しかしリラクゼーションサロンの現場では、この線引きが難しくなりやすいです。

たとえば、次のような関与をしてしまうと、雇用関係に近いと判断されるリスクがあります。

  • 「毎日10時から店に入って」と出勤時間を固定する
  • 「施術はこのマニュアル通りにやって」と手順まで細かく指定する
  • 「他のサロンの仕事は受けないで」と専属を求める
  • 「1時間ごとに予約状況を報告して」と逐一の進捗管理をする

業務委託として適切な関係を保つには、「何をしてもらうか」は明確にしつつ、「どうやってするか」は相手に委ねる姿勢が大切です。

たとえば次のような依頼の仕方であれば、業務委託として自然な関係といえます。

  • 「営業時間中の店舗運営を任せます」と結果ベースで依頼する
  • 「月次で売上・クレーム・スタッフ状況を報告してください」と成果報告を求める
  • 「衛生基準と接客品質の最低ラインは守ってください」と最低限の基準だけ示す
  • 「他のサロンとの掛け持ちは自由です」と独立事業者としての自由を認める
純さん

契約書にどう書くかよりも、実際の業務の進め方が雇用に近くなっていないかが重要です。
契約書の文言だけ業務委託にしても、実態が雇用であれば偽装請負と判断されます。
次の節では、施術と店長業務の切り分けについて詳しく見ていきましょう。

施術と店長業務の切り分けが重要な理由

ユキマサくん

施術もしながら店長業務もお願いするんだけど、何かそこに問題があるの?

純さん

問題になるのは主に2つです。
「報酬をどう設計するか」と、「施術中は店長業務ができない時間をどう扱うか」です。
ここを曖昧にしたまま契約書を作ると、後からトラブルになりやすいです。

リラクゼーションサロンの店長業務委託で特有の論点が、施術業務と店長業務の混在です。

一般的な業種の店長委託であれば、委託する業務は「店舗運営管理」に絞られます。

しかしリラクサロンでは、セラピストが施術をこなしながら店長業務も担うケースが多く、業務の性質がまったく異なる2つの役割が一人の人間に重なります。

この状態を整理しないまま契約書を作ると、報酬の計算方法でもめたり、業務の責任範囲が曖昧になったりします。

施術報酬と店長業務報酬をどう分けるか

施術業務と店長業務では、報酬の性質が異なります。

業務の種類報酬の性質設計例
施術業務施術件数・売上に対する対価施術売上の◯%(歩合制)
店長業務店舗運営管理に対する対価月額固定◯万円

この2つをひとまとめにして「月額◯万円」とだけ決めてしまうと、次のような問題が起きやすくなります。

  • 施術件数が増えても報酬が変わらず、セラピスト側が不満を持つ
  • 店長業務の比重が増えても施術報酬しか払っていないと主張される
  • 契約終了時に「未払い報酬がある」と請求される

報酬は「施術業務の対価」と「店長業務の対価」を契約書上で明確に分けて設計しておくことが重要です。

施術中は店長業務ができない、という問題

施術中はお客様の対応に専念するため、予約受付・スタッフへの指示・クレーム対応といった店長業務を同時にこなすことができません。

この「施術中の空白時間」をどう扱うかを契約書に定めておかないと、次のような認識のズレが生まれます。

  • オーナー側「施術中でも緊急の連絡には対応してほしい」
  • セラピスト側「施術中は完全にお客様に集中するので対応できない」
  • スタッフ側「店長に聞きたいことがあるのに施術中で対応してもらえない」

契約書では、施術中の店長業務の扱いについて次の点を明確にしておく必要があります。

  • 施術中の緊急連絡への対応義務はあるか否か
  • 施術が優先される時間帯と、店長業務を優先する時間帯の目安
  • 施術中に店長業務を代行するスタッフを設けるか否か
ユキマサくん

施術と店長業務の両方を一人に任せる以上、どちらを優先するかのルールを最初に決めておかないといけないんだね。

純さん

そうです。
このルールが曖昧なまま契約すると、オーナーとセラピスト店長の間で認識のズレが積み重なっていきます。
次の節では、リラクサロン特有のリスクと注意点を詳しく見ていきましょう。

リラクサロン特有のリスクと注意点

ユキマサくん

リラクサロンならではのリスクって、どんなものがあるの?

純さん

大きく4つあります。
指名・予約・顧客管理の扱い、売上管理や物販の取り決め、クレームや事故時の責任分担、そして偽装請負のリスクです。
順番に見ていきましょう。

1. 指名・予約・顧客管理の扱い

リラクゼーションサロンでは、お客様がセラピストを指名して来店するケースが多く、指名客はサロンとセラピスト双方にとって重要な資産です。

店長業務を委託した場合、予約管理や顧客情報を店長が日常的に扱うことになります。契約書でこの部分の取り決めが曖昧だと、次のようなトラブルが起きやすくなります。

  • セラピスト店長が独立した際に指名客をそのまま連れて行く
  • 顧客リストを持ち出し、個人で営業活動を始める
  • 予約システムのアカウントや管理権限を返却してもらえない

契約書では、次の点を明確にしておく必要があります。

  • 顧客情報はサロン(オーナー)に帰属することを明記する
  • 予約システムのアカウント・管理権限は契約終了時に速やかに返却する
  • 指名客への個人的な営業活動・直接取引の勧誘を禁止する
  • 契約終了後の顧客情報の取り扱いについて定める

2. 売上管理・物販・レジ対応

リラクゼーションサロンでは、施術料金のほかにアロマオイルやボディクリームなどの物販売上が発生するサロンも少なくありません。

店長に売上管理やレジ対応を任せる場合、この部分の取り決めが曖昧だと責任の所在が不明確になります。

  • 物販の売上をセラピスト店長が管理していたが、報告ルールがなく計上漏れが発生する
  • 物販販売の報酬(インセンティブ)が契約書に定められておらず、後から請求される
  • レジ差異が生じた際の責任の範囲が曖昧になる

契約書では、次の点を明確にしておくことが大切です。

  • 施術売上・物販売上それぞれの締め・報告方法と頻度
  • 物販販売に対するインセンティブの有無と計算方法
  • レジ差異が発生した場合の責任の範囲
  • 現金の保管方法と入金のタイミング

3. クレーム対応・衛生・事故時の責任

リラクゼーションサロンでは、施術による身体への影響が直接生じるため、クレームや事故が発生した際の責任の所在を契約書でしっかり整理しておく必要があります。

特に問題になりやすいのは次のようなケースです。

  • 施術中のケガや体調不良について、オーナーと店長のどちらが責任を負うか曖昧になる
  • 店長が独断でクレームに対して金銭的な補償を約束してしまう
  • 衛生管理の不備によるトラブルが起きた際に責任を押しつけ合う

契約書では、次の点を定めておきましょう。

  • クレームの一次対応は店長が行い、金銭補償の判断はオーナーが行うことを明記する
  • 店長の故意または過失による施術事故は店長が賠償責任を負うと定める
  • 衛生管理マニュアルの遵守を契約上の義務として課す
  • 損害賠償に備えた賠償責任保険への加入を義務化する

リラクゼーションサロンでは、医療法・医師法・あはき法などに抵触する行為を行ってはいけません。施術の範囲を超えた行為をセラピスト店長が独断で行わないよう、契約書の禁止事項にも明記しておきましょう。

4. セラピスト兼店長ならではの偽装請負リスク

労働者性の判断基準
労働者性の判断基準

施術業務と店長業務を一人に委託する場合、業務の幅が非常に広くなるため、オーナーが細かく関与しすぎると実態が雇用関係と変わらなくなりやすいです。

偽装請負と判断された場合、次のような問題が発生します。

  • 過去にさかのぼって社会保険料の納付を求められる
  • 未払い残業代の請求を受ける
  • 労働基準監督署の調査が入る
  • セラピスト店長側から有給休暇・解雇制限などの権利を主張される

契約書に「業務委託契約」と書いてあっても、実態が雇用に近ければ偽装請負と判断されます。契約書の名称ではなく、実際の働き方が問われます。

ユキマサくん

施術のマニュアルを渡して「この通りにやって」って言うのも問題になるの?

純さん

最低限の衛生基準や安全上のルールを示すことは問題ありません。
ただ、細かい施術手順まで事細かく指定して「必ずこの通りに」と求めると、指揮命令関係があると判断されやすくなる要因のひとつになります。
「基準を示す」と「手順を細かく指示する」の違いを意識しておきましょう。

契約書に入れるべき条項

ユキマサくん

実際に契約書を作るとき、どんな条項を入れればいいの?

純さん

リラクゼーションサロンの店長業務委託契約書で特に重要な条項を4つ解説します。
条文例も参考にしてみてください。

1. 業務内容の明確化(施術業務と店長業務を分けて記載)

業務委託契約書でまず大切なのは、「何をお願いするか」を具体的に書くことです。

リラクゼーションサロンの場合、施術業務と店長業務を同一の条項にまとめてしまうと、後から「その業務は聞いていない」「ここまでやるとは思わなかった」というトラブルが起きやすくなります。施術業務と店長業務は必ず分けて記載しましょう。

【参考】第◯条(委託業務の内容)

甲は乙に対し、次に定める業務を委託し、乙はこれを受託する。
【施術業務】
(1)来店客に対する手技を用いた施術
(2)施術前後のカウンセリングおよびアフターフォロー
(3)施術に使用するアロマオイル・タオル等の準備および片付け
【店長業務】
(4)営業時間中の店舗全般の運営管理
(5)スタッフへの業務指示および教育(ただし採用・解雇を除く)
(6)予約管理および顧客対応
(7)売上金の締め・管理および甲への報告
(8)衛生管理および清掃の監督
(9)クレームの一次対応
ただし、スタッフの採用・解雇、物販価格の変更、取引先との新規契約締結は本業務に含まないものとする。

「ただし書き」で店長に任せない業務を明記しておくことも重要です。採用・解雇や価格設定など、経営判断に関わる部分はオーナーが握っておくことで、店長の独立性を保ちながら経営権も守れます。

2. 報酬体系と支払い条件

前述のとおり、施術業務と店長業務では報酬の性質が異なるため、それぞれを分けて設計することが基本です。

【参考】第◯条(報酬)

1. 甲は乙に対し、施術業務の対価として、乙が担当した施術売上の◯%を支払うものとする。
2. 甲は乙に対し、店長業務の対価として、月額◯◯万円(税別)を支払うものとする。
3. 物販売上が発生した場合、甲乙協議のうえ別途インセンティブを支払うことができる。
4. 前各項の報酬は月末締めとし、翌月◯日までに乙の指定する銀行口座へ振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。

時給や日給のような時間に対する報酬設計は、雇用関係と判断されやすくなる要因のひとつです。施術業務は歩合制、店長業務は月額固定など、業務の成果・内容に対する対価として設計することが重要です。

業務の種類報酬体系特徴
施術業務施術売上の◯%(歩合制)施術件数・単価に応じて変動。セラピストのモチベーションを保ちやすい
店長業務月額固定◯万円業務量が安定している場合に向く。店舗運営管理の対価として設計する
物販物販売上の◯%(インセンティブ)物販を積極的に推進したい場合に有効。契約書に明記しておかないと後からトラブルになりやすい

3. 禁止事項(顧客の引き抜き・直接取引など)

リラクゼーションサロンの店長は、指名客や顧客情報・スタッフと密接な関係を築きます。契約終了後に独立して近隣に同業サロンを開いたり、指名客を引き抜いたりするケースは少なくありません。こうしたリスクを防ぐため、禁止事項と競業避止義務を明確にしておく必要があります。

【参考】第◯条(禁止事項)

乙は、本契約の履行にあたり、以下の行為を行ってはならない。
(1)甲の顧客に対して乙個人への移行を勧誘し、または直接取引を締結すること
(2)甲のスタッフを乙または第三者のもとへ勧誘・引き抜くこと
(3)甲の営業秘密(顧客情報・施術技術・仕入先等)を第三者に開示すること
(4)契約終了後◯年以内・甲店舗から半径◯km以内において、同種のリラクゼーションサロンを自ら営み、または第三者のために従事すること

競業避止義務は、期間・地域・業務の範囲が広すぎると公序良俗違反として無効になる可能性があります。合理的な範囲に収めることが重要です。

4. 損害賠償・事故時の責任分担

リラクゼーションサロンでは、施術による身体への影響が直接生じるため、事故やトラブル時の責任分担を契約書で明確にしておくことが特に重要です。

【参考】第◯条(損害賠償)

1. 乙は、本業務の遂行にあたり、故意または過失により甲または第三者(顧客を含む)に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う。
2. 乙は、施術事故その他のトラブルに備え、賠償責任保険に加入するものとする。
3. 甲の指示または設備の瑕疵に起因する損害については、甲が責任を負うものとする。

ユキマサくん

施術事故のときの責任まで契約書に書いておく必要があるんだね。
考えてなかったな。

純さん

リラクゼーションサロンは身体に直接触れる施術を行うため、事故時の責任分担は必ず盛り込んでおいてください。
賠償責任保険への加入を義務化しておくと、万が一のときに双方が守られます。
次の節では、よくあるトラブル例を見ていきましょう。

店長委託でありがちなトラブル例

ユキマサくん

実際にどんなトラブルが起きてるの?

純さん

リラクゼーションサロンの店長業務委託でよくあるトラブルを3つ紹介します。
いずれも「あとから気づいた」では済まないものばかりなので、事前にしっかり確認しておきましょう。

1. 独立時に指名客をそのまま連れて行かれた

セラピスト店長が独立して近隣に自分のサロンをオープンした際、これまで担当していた指名客に個別に連絡を取り、そのまま新しいサロンへ誘導するケースがあります。

顧客情報の帰属や契約終了後の競業避止義務を契約書に定めていなかった場合、法的に対抗するのが難しくなります。

  • 「顧客との関係は自分が築いたものだ」と主張され、引き止める根拠がない
  • 指名客の大半が新サロンへ移り、売上が急落する
  • 予約システムのアカウントを返却してもらえず、顧客データを持ち出される

顧客情報はサロンに帰属することと、契約終了後の競業避止義務・勧誘禁止を契約書に明記しておくことで、こうしたリスクをある程度抑えられます。

2. 報酬をめぐって「聞いていない」と揉めた

施術報酬と店長業務報酬を分けずに「月額◯万円」とだけ決めてスタートした結果、後から報酬の計算方法をめぐってトラブルになるケースがあります。

  • 「施術件数が増えたのに報酬が変わらないのはおかしい」と請求される
  • 物販を積極的に売ったのにインセンティブが支払われないと主張される
  • 店長業務が増えた分の追加報酬を求められる

施術報酬・店長業務報酬・物販インセンティブの3つを契約書上で明確に分けて定めておくことで、こうした認識のズレを防げます。

3. 契約期間を決めていなかったために解除で揉めた

「とりあえずやってみよう」という形で契約期間や解除条件を定めずにスタートしてしまうと、いざ契約を終了しようとしたときにトラブルになります。

  • オーナーが契約を終了しようとしたら「突然やめさせるのはおかしい」と主張される
  • セラピスト店長が急に「来月から辞めます」と言い出し、繁忙期に現場が回らなくなる
  • 引き継ぎをせずに離脱され、予約管理や顧客対応が混乱する

契約書には、契約期間(例:1年間・自動更新あり)、解除できる条件、解除時の通知期間(例:1ヶ月前までに書面で通知)、引き継ぎ期間の確保について明記しておくことが必要です。

特にリラクゼーションサロンでは、セラピスト店長が予約管理や顧客対応の中心を担っているケースが多いため、引き継ぎなしの突然の離脱は店舗運営に直接影響します。

引き継ぎ期間の確保は必ず契約書に盛り込んでおきましょう。

ユキマサくん

どのトラブルも、最初に契約書でちゃんと決めておけば防げたことばかりだね。

純さん

そうですね。
トラブルの多くは「最初に決めなかった」ことが原因です。
次の節では、ひな形を使うときのチェックポイントを見ていきましょう。

ひな形を使うときの注意点

ユキマサくん

ネットで拾ったひな形や、AIで作った契約書じゃダメなの?

純さん

ひな形を使うこと自体は問題ありません。
ただし、店長業務委託は論点が多い分、ひな形がカバーしきれていない部分も多いです。どこに注意すればいいか、具体的に見ていきましょう。

セラピスト外注用のひな形をそのまま流用しない

最もよくある失敗が、繁忙期のセラピスト外注用に作ったひな形を、そのまま店長業務委託に流用してしまうケースです。

セラピスト外注用のひな形には、次のような条項が抜け落ちていることがほとんどです。

  • スタッフへの指示権限の範囲
  • 指名客・顧客情報の帰属に関する規定
  • 予約システム・SNSアカウントの管理権限
  • 施術報酬・店長業務報酬・物販インセンティブの計算方法
  • スタッフ引き抜きの禁止規定

これらが抜けたまま運用を始めると、契約終了後に顧客やスタッフを引き抜かれたり、報酬をめぐって揉めたりするリスクがあります。

AIで作った契約書をそのまま使わない

AIで契約書の文面を作ること自体は有効な方法です。ただし、AIが出力する契約書には次のような限界があります。

  • 業種・業態の固有論点が抜けやすい
    指名客の帰属や予約システムの管理権限など、リラクゼーションサロンの店長業務委託に特有の論点は、AIが雑に処理しがちな部分です。
  • 実態に合わせた調整ができていない
    「施術歩合あり・物販インセンティブあり・複数店舗展開あり」といった自サロンの実情に合わせた条項設計は、AIへの指示が的確でないと反映されません。
  • 法的に問題のある表現が混入することがある
    労働者性に関わる表現や、公序良俗に反する可能性のある競業避止義務の範囲など、専門的な観点からのチェックが必要な箇所は、AIだけでは見落とすリスクがあります。

AIで作った契約書は「たたき台」として活用するのが現実的です。自サロンの実態に合わせた修正と、専門家によるチェックをあわせて行うことをおすすめします。

ひな形を使うときのチェックポイント

ひな形を使って契約書を作成する場合、次の点を必ず確認してください。

  • 「セラピスト外注用」ではなく「店長業務委託用」のひな形を使っているか
  • 施術業務と店長業務が分けて記載されているか
  • 報酬体系(施術報酬・店長業務報酬・物販インセンティブ)が具体的に定められているか
  • 指名客・顧客情報の帰属が明記されているか
  • 予約システム・SNSアカウントの管理権限が定められているか
  • スタッフへの指示権限の範囲が明確になっているか
  • 競業避止義務の期間・地域・範囲が合理的な範囲に収まっているか
  • 契約終了時の引き継ぎ義務が盛り込まれているか
  • 医療法・あはき法等に抵触する行為の禁止が明記されているか

ひな形そのものがダメなわけではありません。

重要なのは「店長業務委託に対応したひな形を選ぶ」ことです。セラピスト外注用の汎用ひな形ではなく、指名客の帰属・スタッフへの指示権限・施術報酬と店長業務報酬の分離・競業避止義務まで盛り込まれた、店長業務委託専用のひな形であれば、自サロンの実態に合わせて修正するだけで十分に活用できます。

ユキマサくん

チェックポイントが多いなあ。
これ全部自分で判断するのは難しそう。

純さん

そうですね。
特に競業避止義務の範囲や労働者性に関わる部分は、専門家に確認してもらうのが安心です。

まとめ

ユキマサくん

いろんな注意点があったけど、結局どこが一番大事なの?

純さん

「施術業務と店長業務の切り分け」と「契約書と実態を一致させること」の2つです。
どれだけ丁寧な契約書を作っても、日々の業務の進め方が雇用に近ければ意味がありません。
契約書と実態をセットで整えることが大切です。

今回は、リラクゼーションサロンのオーナー向けに、セラピスト店長を業務委託で起用する際のリスクと契約書作成のポイントを解説しました。

最後に、押さえておくべき重要事項をまとめます。

  1. 施術業務と店長業務を分けて記載する
    「店長業務一式」のような曖昧な記載は避け、施術業務・店長業務それぞれの内容を具体的に列挙しましょう。任せる業務と任せない業務の両方を書いておくことが重要です。
  2. 報酬を3つに分けて設計する
    施術報酬(歩合制)・店長業務報酬(月額固定)・物販インセンティブの3つを別々に定めましょう。ひとまとめにすると、後から報酬をめぐるトラブルになりやすいです。
  3. 施術中の店長業務の扱いを明確にする
    施術中はどちらの業務を優先するか、緊急連絡への対応義務はあるかなど、業務が混在する時間帯のルールを事前に整理しておきましょう。
  4. 顧客情報の帰属と競業避止義務を明記する
    顧客情報はサロンに帰属することと、契約終了後の独立・引き抜きリスクへの対応を盛り込みましょう。競業避止義務は期間・地域・範囲が広すぎると無効になる可能性があるため、合理的な範囲に収めることが重要です。
  5. 施術事故時の責任分担と保険加入を義務化する
    身体に直接触れる施術を行うサロンでは、事故時の責任の所在を明確にしておくことが特に重要です。賠償責任保険への加入を契約上の義務として課しておくと、万が一のときに双方が守られます。
  6. 法律に抵触する行為の禁止を明記する
    医療法・医師法・あはき法などに抵触する行為を禁止する条項を入れておきましょう。リラクゼーションサロン特有の論点であるため、汎用ひな形には盛り込まれていないことがほとんどです。
  7. 契約期間・解除・引き継ぎの条件を決めておく
    「とりあえずやってみて」でスタートすると、契約を終了しようとしたときに揉めます。解除時の通知期間と引き継ぎ期間の確保も含めて、契約書に明記しておきましょう。

リラクゼーションサロンの店長業務委託契約書は、施術業務と店長業務が混在する分、汎用のひな形をそのまま使うだけでは対応しきれない論点が多いです。

自サロンの業態・業務範囲・報酬体系に合わせて内容を調整することが大切です。

契約書の作成や内容の確認でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

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