フリーランスと業務委託契約書を交わす機会が多いんだけど、
親事業者の僕はどんな点に注意をすればいいのかニャ?
下請法では、親事業者に4つの義務を課しています。
今回はそれらの義務について解説しますね。
下請法では、下請事業者が親事業者から不当な不利益を受けないように、親事業者に対して4つの義務を課しています。
- 書面の交付義務
- 下請代金の支払期日を定める義務
- 書類を作成・保存する義務
- 遅延利息の支払義務
下請企業はもちろん、フリーランスや個人事業主に仕事を発注する親事業者は、これらの義務をしっかり理解したうえで、業務委託契約書を締結する必要があります。
順番にみていきましょう。
※下請法がどんな法律なのか?ザックリ知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
1.契約内容を記載した書面の交付義務
契約は口約束でも成立しますが、内容が曖昧であるため発注後や納品後にトラブルに発展する可能性が少なくありません。
そして紛争が起こってしまった場合は、大抵立場の弱い下請事業者が親事業者の要求を受け入れざるを得なくなります。
このような紛争を防止する観点から、親事業者が下請企業に仕事を発注する際は契約内容を記載した書面(3条書面)を交付する義務が課せられています。
具体的には、下請事業者の給付の内容、下請代金の額、下請代金の支払時期・支払方法などを記載して、発注の都度、直ちに下請事業者に交付しなければなりません。
しかし契約の都度、このやり方をとっていては業務の遂行の妨げになることがあります。
そこで、契約内容が『継続的取引』であり、個々の取引条件が変わらない様な場合は、最初に交付した書面に『必要記載事項』が全て記載されていることを条件に、最初に書面で通知しておけば3条書面の交付と扱われます。
(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託内容が分かるように明確に記載)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,その検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は、手形の金額(支払比率でも可)と満期日
(10) 一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法
なお、書面の交付義務に違反した場合、50万円以下の罰金が課されます。
2.下請代金の支払期日を定める義務
下請事業者とりわけ、フリーランスや個人事業主にとって『報酬の支払時期』は生活の根幹に関わるので一番重要な関心事ではないでしょうか。
そこで下請法は、親事業者対して下請事業者に代金(報酬)をいつまでに支払うのか、その期日を定めるよう義務を課しています。
期日は、下請事業者から給付や役務の提供を受けた日(納品物の受領後や、サービスの完了後)から起算して『60日以内』。60日には初日も含まれるので注意。
もし親事業者が支払期日を定めていなかった場合は、
・下請事業者が役務の提供をした日
・親事業者が下請事業者から制作物の給付を受けた日
のいずれかが支払期日となります。
また、親事業者が支払期日を規定の60日を経過した日以降の日を支払期日と定めた場合は、60日目が支払期日になります。
このとき親事業者の検品や検収が後になったとしても、あくまで給付を受けた日から起算して60日以内が支払期日となります。
(例)
「月末締の翌月末払い」→60日以内→セーフ◯
「月末締の翌々月10日末払い」→70日後→アウト✕
3.書類の作成や保存義務
親事業者は、下請事業者に対し、
- 製造委託
- 修理委託
- 情報成果物作成委
- 役務提供委託
をした場合は、給付の内容、下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し、2年間保存する義務があります。
(1) 下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
(5) 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者から役務が提供された日・期間)
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は、検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
(7) 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、内容及び理由
(8) 下請代金の額(算定方法による記載も可)
(9) 下請代金の支払期日
(10) 下請代金の額に変更があった場合は、増減額及び理由
(11) 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段
(12) 下請代金の支払につき手形を交付した場合は、手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期
(13) 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
(14) 電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額,下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
(15) 原材料等を有償支給した場合は、品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
(16) 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
(17) 遅延利息を支払った場合は,遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
5条書類は書面の交付義務で解説した3条書面と内容が一致するので、 実務上は取引内容がわかる書類(契約書、仕様書、発注書、納品書、請求書、領収証など)を保管しておけば大丈夫です。
4.遅延利息の支払義務
親事業者は下請代金の支払遅延があった場合は、下請事業者から給付等があった日(物品等を受領した日)から起算して60日を経過した日から、支払完了日までの期間について,その日数に応じ未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります。
ただし利息は、親事業者が受領した日から起算して60日が経過しないと発生しません。
例えば、製造委託契約書において「親事業者が製品を受領した日から起算して30日以内に代金を支払うものとする」と合意していた場合、年14.6%の遅延利息は、親事業者が製品を受け取ってから60日を経過してから発生します。
この場合、30日目から60日目までの間は、法定利率である年3%がの割合で付されることになります。
まとめ
- 契約内容を記載した書面の交付義務
→原則、発注する際に交付 - 下請代金の支払期日を定める
→給付や役務の提供の日から起算して60日以内 - 書類の作成や保存
→怠ると50万円以下の罰金 - 遅延利息の支払義務
→給付等の日から起算して60日が経過した日から年14.6%の遅延利息の支払義務
今回は、下請法の中でも親事業者が下請事業者に対して課せられる4つの義務について解説しました。
フリーランスや個人事業主に仕事を発注する親事業者は、これらの義務についてしっかりと理解したうえで業務委託契約書を交わすように心掛けておきましょう。
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