【下請法】業務委託契約の締結後に親事業者の都合による代金の減額は認められるのか

prohibition-of-reduction
ユキマサくん

業務委託契約書で報酬を定めたのに、発注者が後から「やっぱ減額してくれないか」って言ってきたんだよ。

純さん

それは下請法に違反するかもしれませんね。
今回は下請法で、親事業者の代金減額請求が認められないケースについて解説します。

目次

代金の減額が想定されるケース

下請法では、親事業者が下請事業者に対して、契約後に代金を減額請求することは禁止されています。

例えば、製造委託契約後に必要な部品点数が想定より下回ったため下請事業者に発注量と報酬の減額請求をするようなケース。

下請事業者は、予定された部品点数に応じて積算し、製造に必要な材料を仕入れたりするので、契約後に代金を減額請求されると不良在庫は抱えるし、報酬も請求できないので「たまったもんじゃない」というわけです。

さらに代金の減額請求を拒否すると、それ以後仕事を発注してもらえなくなることもあるので、不当な要求をのまざるを得ないケースもあるのです。

このような状況に鑑み、契約時に合意した代金を後から親事業者の一方的な都合で減額請求することは禁止されています。

親事業者が代金を減額請求できるケース

親事業者が下請事業者に代金を減額請求できるケースもあります。

例えば、製造委託契約にもとずき制作依頼した製品が、契約書で合意した納品期日に間に合わなかった場合(納期遅れ)や、納品した製品に欠陥が見つかった場合など。

このようなケースに該当する場合は『下請事業者の責めに帰すべき事由』となり、代金の減額請求が可能です。受注者に非があるあるわけですから当然の話しですよね。

しかし指定納期に間に合わなかった場合であっても、
・親事業者が度を逸した短期納期を要求していたり、
・親事業者が製造に必要な資材や原料を用意してくれなかったことが原因である場合
は、『下請事業者の責めに帰すべき事由』には該当しないので、下請事業者は代金の減額請求に応じる必要はありません。

代金を減ずる具体例

親事業者が下請代金を不当に減ずることは下請法で禁止されていますが、その具体例について事例を7つ挙げます。

①単価の引下げ要求に応じない下請事業者に対して,あらかじめ定められた下請代金から一定の割合又は一定額を減額すること。

買いたたきは,親事業者が下請事業者に発注する時点で生じる違反行為ですが,下請代金の減額は,発注時に定められた額を事後的に差し引くことによって生じる違反行為です。

②「製品を安値で受注した」又は「販売拡大のために協力して欲しい」などの理由で,あらかじめ定められた下請代金から一定の割合又はー定額を減額すること。

下請代金の額から差し引く場合のほか,減額分を別途,協力金として取り立てる場合も減額となります。

③販売拡大と新規販売ルートの獲得を目的としたキャンペーンの実施に際し,下請事業者に対して,下請代金の総額はそのままにして,現品を添付させて納入数量を増加させることにより,下請代金を減額すること。

下請代金の総額はそのままにしておいて,数量を増加させる場合も下請代金の減額に含まれます。実質減額させているのと同じことだからです。

④下請事業者との間に単価の引下げについて合意が成立し単価改定されたが,その合意前に既に発注されているものにまで新単価を遡及して適用すること。

旧単価から新単価に引下げたときは,新単価は単価改定が合意された後の発注分から適用する必要があります。既に発注した分まで遡及して新単価を適用をすると,減額となります。

⑤手形払を下請事業者の希望により一時的に現金払にした場合に,その事務手数料として,下請代金の額から自社の短期調達金利相当額を超える額を減ずること。

⑥下請事業者と合意することなく,下請代金を銀行口座へ振り込む際の手数料を下請事業者に負担させ,下請代金の額から差し引くこと。

下請事業者との合意がなければ,下請代金から銀行振込手数料を差し引くことは認められません。また差し引くことのできる金額は,親事業者が負担した実費の範囲内です。

⑦消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと。

不当な減額をおこなった場合の効力

親事業者が下請事業者に対して不当な代金の減額請求をおこなった場合、下請事業者は不当に減額された分の代金を親事業者に対して請求できます。

さらに、親事業者が製品を受領した日から起算して60日を超えていれば、年14.6%の遅延利息を請求可能。

一方、代金の減額について親事業者と下請事業者双方で合意が得られた場合は、その減額分があまりにも過大であり、公序良俗に反すると認められる場合は無効となります。

そして下請法違反に抵触する部分は、公正取引委員会の勧告の対象となります。

まとめ

今回は、下請法が禁止する『下請代金の減額』について解説しました。

下請代金の減額は、値引き,協賛金,歩引き等の減額の名目,方法,金額の多少を問わず、また、下請事業者との合意があっても下請法違反となります。

平成16年度以降、公正取引委員会により勧告・公表された事件のほとんどが減額に該当するものです。

今後、下請事業者(フリーランス・個人事業主を含む)と業務委託契約を締結する親事業者は、特にその対応に注意する必要があります。

なお、下請事業者とのトラブルを最小限に抑える最も確実な方法は『高品質な業務委託契約書』を作成し、合意をすること

『高品質』の定義についは『契約締結前・中・後、において想定され得るリスクを可能な限り洗い出し、その対応方法を定めたもの』と弊所は位置づけております。

これにより知らず知らずのうちに下請法に抵触する行為を防止することも可能になるのです。

この機会に、普段利用している業務(製造)委託契約書を見直してみるのも良いでしょう。

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