【契約書】歌手の愛内里菜と所属事務所が契約トラブル。争点となった『公序良俗違反』とは

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ユキマサくん

歌手の愛内里菜さんが、所属事務所と芸名の使用許可を巡る問題で裁判になってたんだってね。

純さん

はい、この問題は「契約条項が公序良俗に反するのか?」が争点となりました。

ユキマサくん

『公序良俗』って聞いてもいまいち意味が分からないニャあ。

純さん

それでは今回は『公序良俗違反』について解説します。契約書を作成するにあたり基本となる考え方ですからしっかり理解しておきましょう。

目次

愛内里菜と所属事務所との訴訟経緯

まず愛内里菜さんと所属事務所との間でトラブルになった事の発端と経緯を説明します。

愛内里菜さんと所属事務所は1999年5月に専属契約を締結。
その際交わした契約書面には「契約期間中、そして契約終了後も『愛内里菜』という芸名を事務所の承諾なしに使用してはいけない」との条項があった。
愛内里菜さんは2010年に一度歌手を引退、その後2015年頃から別名義で活動を再開したが、2021年3月から再び「愛内里菜」名義で活動を再開したところ、所属していた事務所側が『愛内里菜』の芸名を使用差し止めを求めて同年5月に提訴した。

訴訟は『愛内里菜』の芸名を独占利用できる権利「パブリシティー権」が、彼女と所属事務所のどちらに帰属するのか?が争点となった。
判決の結果、事務所が定めたパブリシティー権は「合理的な範囲を超えて愛内さんの利益を制約し、公序良俗に反する」として「無効」と判断。
パブリシティー権は愛内里菜さんに帰属するとした。

「事務所の引退後も、芸名の継続使用権は事務所側に帰属する」とした契約条項の有効性が争点となった判決は初めてとみられたため大きく取り上げられました。

要約すると、以下の3つが判決の内容です。

  1. パブリシティー権が事務所側にあるとした主張が公序良俗違反にあたる
  2. 芸名の無承諾使用を禁じた条項は「社会的相当性」を欠く
  3. 愛内里菜と事務所で契約関係が終了している

パブリシティー権とは

判決はまず、愛内里菜という芸名の「パブリシティー権」について検討しました。

パブリシティー権とは?
有名人や著名人が、自己の氏名や肖像などについて、対価を得て第三者に専属的に使用させ得る権利や、その価値を商業的に独占利用できる権利のこと。

事務所側は『芸名・愛内里菜』のパブリシティー権は「何らの制限なく原始的に事務所に帰属する」と主張していましたが、判決は「事務所が契約書にて定めたパブリシティー権は、合理的な範囲を超えて愛内里菜さんの利益を制約し、公序良俗に反する」として「無効」と判断しました。

砕けた言い方をすると「所属事務所を引退した後も『愛内里菜』の芸名を永遠に使わせないぞ、とする事務所の一方的な契約内容は、彼女がこれからの人生で得られる利益を制限しすぎている。道徳的に違反してるから無効だぞ」と。

それでは判決のもう一つのポイント『公序良俗に反し』とは?具体的にどの様な意味を指すのでしょうか。

公序良俗違反とは

『公序良俗に反する=公序良俗違反』とは、民法第90条に定められています。

民法90条

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする

90条は『法律行為の目的が反社会的・反道徳的な場合は、その効力を無効とすることで、法律行為の社会的妥当性を保っていこう』とする目的で規定されています。

例えば『報酬を渡すから気に食わない人を殺してきてほしい』とする契約は、反社会的・反道徳的なので、契約そのものが無効となります。

また契約の内容自体が公序良俗に反していなくても,その動機を相手が知っているような場合も無効。

例えば、パチンコ屋や競馬などのギャンブルで負けた債務を返すために借金をするような場合、そのことをお金を貸す方が知っていれば、これも公序良俗違反で無効となります。

今回の愛内里菜さんの訴訟では「彼女が事務所を引退した後も、事務所が承諾しない限り、永遠にその芸名を使用させないぞ」と定めた事務所の契約は公序良俗違反反社会的・反道徳的)だ、と判断されたのです。

また判決では「何の代償措置もないまま、無期限に芸名使用を認めるか否かの権限を事務所側に持たせることまでを正当化するものにはならない」、「社会的相当性を欠く」として、事務所側が定めた契約条項は無効と判断

最後に、愛内里菜さんと事務所との契約関係は現在も継続しているか?についても争われましたが、こちらについては「マネジメント業務の有無などを踏まえて終了したと認められる」との判決でした。

まとめ

今回は『公序良俗違反』について解説しました。

パブリシティー権の帰属主体が事務所側にあるとした契約内容が公序良俗違反にあたるか?が争点となった本訴訟は非常に珍しいケースでした。

実際の契約の場面では『公序良俗違反の該当性』について注視ながら契約書面を読み込む人はほとんどいないのではないでしょう。

しかし今回の判決で、公序良俗違反の該当性が身近な契約の場面でも起こり得ることを示してくれました。

既に契約した書面があれば『公序良俗違反』にあたるような条項が含まれていないかをチェックしてみると良いかもしれませんね。

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