【ブログ】営業マンは社内表彰式で自尊心を刺激されて会社に忠誠を誓う犬にならないように注意しよう

awards-ceremony
表彰式のイメージ
表彰式のイメージ

本記事は、会社に雇われて働く営業職の方に向けて書いたものです

医療機器や住宅ハウスメーカーなどの営業の世界では、優秀な成果を挙げた個人や支店のマネージャーを一同に集めて表彰式を開催することが多い。

私が以前勤めていた自動車ディーラーでも同じように表彰式は存在した。

しかし表彰式は実に危険だ。

営業職員は一度でも表彰式に参加してしまうと正常な判断能力が破壊され、人格が歪み、やがては平穏な日常生活が崩落してしまうのだ。

なぜ営業職員が名誉ある表彰式に招待されると人生が狂ってしまうのか、その理由を説明したい。

上場企業など比較的企業規模が大きい会社は、式典当日のプログラムや演出を専門の業者に外注することがある。

イベント屋は発注者から対価を得る代わりに表彰式を感動的な式典に仕上げなければならない。(準委任契約)

会場は都内のホテル。

左右には巨大なモニターが設置され、中央には大きなステージ。

スタイリッシュな映像が流れ、大音量の音楽や効果音が会場全体を盛り上げる。

表彰式が始まると、司会者のおばさんが被表彰者の名前や支店名を読み上げ「壇上にお上がりください!」と大声で叫ぶ。

その瞬間、円卓テーブルに座った営業職員にスポットライトが照らされる。

被表彰者は大人数が見つめる中壇上に上がり、普段はネットやテレビでしか見ない役員などから表彰状やトロフィーを受け取り、客席に向かって拳を突き上げる。

この瞬間、営業職員は栄誉感が高まり脳汁が一気に溢れ出す。

女性営業職員がマイクを手に持ち、今日に至るまでの苦労話を泣きながら語る。

「最初は契約が取れずに苦労したけどチームのみんなや〇〇課長がそばでずっと見守ってくれた」みたいな話だ。

壇下から見守るおっさん課長はもらい泣き。

最後に社長が「また来年同じメンバーでここに集まろう!」と呼びかけ大盛り上がりの中、式典は終了。

表彰式なんてどの業界もだいたいこんな感じだ。

表彰式に参加した営業職員は、自尊心を刺激され心の奥底に蓄積された承認欲求が瞬間的に満たされる。

ホテルのベッドで布団を被り目を閉じると、壇上で自分にスポットライトが当たった瞬間を思い出す。

「やっぱ俺すげえ」、「あぁ、またあの場で表彰されたい」

やがて地元に帰ると、お留守番をしていた社員たちから「お帰り。どうだった?表彰式」とチヤホヤされてまたここで自己愛が高まる。

江戸を見てきた村の代表が村民を集めて思い出を語りだすのと同じだ。

しかし問題はここからである。

一度でも表彰式で名誉感を味わってしまった営業職員は「またあの壇上に立ちたい」と切望するようになり、その一心で必死に契約を獲るために仕事を頑張ってしまうのだ。

ドラッグ常習者の感覚に近いかもしれない。

やがて課されたノルマを達成するために、家族との大切な時間を犠牲にしてまで契約獲得に奔走することになる。目標達成のゴールが見えたときには自爆営業をも厭わない。

ここに表彰式が危険であるという本質が潜んでいる。

事実某イベント屋のホームページには、表彰式を開催することのメリットを下記のように説明している。

中略
表彰式のもう一つの目的・メリットは、エンゲージメントの向上です。
エンゲージメントとは、社員の会社に対する愛着を指し、向上することで離職率の低下にもつながるのがメリットです。

受賞者は、自分の仕事が認められ正当に評価されたと思えるため、自社への信頼感が大いに高まります

他の社員も、自社が正当な評価をしてくれることがわかり、安心して仕事に励めるでしょう。

また、表彰式では社長や代表がねぎらいの言葉をかける場面があり、愛社精神の向上に一役買っています
引用:https://www.min-commu.net/#a0

これが主催者が表彰式を開催する真の狙いだ。

離職率を低下させ愛社精神の向上を謀ることは自社への依存度を高めようとすることであり、依存性・中毒性の高いドラッグと本質的にはなんら変わらない。

表彰式に参加して自尊心を刺激され承認欲求を満たすとドーパミンが瞬間的に大量分泌され、以後このカタルシスを常習的に求めてしまうようになる。これはドラッグ常習者が陥る典型的な薬物依存症以外の何物でもない。

しかし、自己実現と言う名の承認欲求の達成には多くの自己犠牲を伴うことを理解しておかなければならない。

契約を獲得するために、朝の定時は9時からなのに7時には出社してメールのチェック、朝のミーティングでマネージャーと本日の行動予定やノルマの進捗状況を共有した後は、車や電車に飛び乗って深夜まで営業かばんを持って顧客を駆けずり回り、移動中は電話でアポを取りまくり、トイレに座るとlineでこまめに顧客にメッセージを送り、その間クレーマー(クソ顧客)の対応もしなければならない。

休日も子供とUSJに行く予定だったのに「パパお仕事だからごめんね」と約束を破り顧客とゴルフに行ったり、商談や納品の準備のため会社に立ち寄ったりするので心身が休まる暇がなく、食生活が乱れ、睡眠時間が減り、その結果自律神経が乱れて頭はハゲるし腹は出るし白髪は増えるし最悪の場合ストレスが爆発して脳梗塞やくも膜下出血で倒れたりする。

まさに一時的な快楽を求めて身を滅ぼすドラッグ常習者と同じ現象に陥ってしまう。

なお、この自己犠牲の対価として得られるものは『表彰式での一時的な名誉感』と『雀の涙程度の契約奨励金』この2つだけである。

経営者の脳内

表彰式を開催してほんの少しの販売奨励金を支給するだけで社員はいつも以上に契約獲得と支店の目標達成に向けて奮起してくれるし、もし社員が契約を獲得するために日曜日を犠牲に仕事をしていて車で事故を起こしケガで入院したり支店長のパワハラが原因で精神障害を患った場合、本当は会社が労災保険の休業補償給付や健康保険の傷病手当金の申請手続きをしないといけないのだが、社員が制度そのものをよく理解していないおかげで勝手に有給申請で済ませてくれる。その結果会社はノーダメで社員の事故問題を回避できるのでこれほどボロいやり方はないですよ。

これが社内表彰の真意である。

だからこの記事を読んでいる営業職員は、ちっぽけな名誉感とわずかな奨励金のために自己や家族との時間を犠牲にして貴重な人生を無駄にしないでほしい。

それにわずかな奨励金をもらったところで、そのお金はノルマを達成する過程で傷付いた体を癒すために使われる(自分へのご褒美)ので簡単に泡と消えてしまい、プラマイゼロどころかマイナスになる。

2024年5月18日 補記

Xで以下のポストがバズっていたのでシェア。

ノルマを達成したことで得られる奨励金がなぜ泡と消えるのか、その理由を端的に表している良い一文だ。

営業マンがノルマを達成するために奔走すると体中怪我をする(ストレスが貯まる)

ノルマを達成したことで得られる奨励金は、怪我を癒す(ストレス解消)ために消費(ムダな買い物やマッサージなど)される。

カール・マルクスの『資本論』は、このようなお金の本質について論じている。

お金の本質とは、お金の「価値」と「使用価値」の違いついて。

本質を学ぶと、苦役の対価としての給与所得がいかに非効率なことであるか理解できるので、その瞬間から会社に雇われて働くことがいかに馬鹿らしいか分かるだろう。

さらに4,5,6月あたりに所得が増えると定時決定に影響が出るので健康保険の標準報酬月額等級が上がり保険料がアップしてしまう=契約がいつも未達の社員とさほど手取り額が変わらない、という現象が起こってしまう。(随時改定を含む)

『バッドマーク』を付けた箇所は超重要です。(なぜかここだけ敬語)

「健康保険の標準報酬月額等級が上がっても厚生年金の標準報酬月額等級が上がれば将来受け取る年金額も増えるだろ!」という意見もあるかもしれないが、平社員が係長になったとろこで年金受給額に大差はない。

https://www.hokende.com/life-insurance/pension/columns/cost_effectiveness_of_pension
https://www.hokende.com/life-insurance/pension/columns/cost_effectiveness_of_pension

少し古いデータだが、厚生年金の標準報酬月額、厚生年金保険料額及び年金受給額の推移が示されたものがある。

これを見ると、月収20万円の平社員が昇進して主任やがて係長になり30万円支給されるようになったところでひと月当たり受給額が1千円も変わらない。さらに標準報酬月額が増えれば増えるほど、この年金を受給するために費やした期間を回収するための年月が余計にかかってしまうのだ。

さらに販売奨励金を多くもらってしまうと課税所得が増える。その結果所得税と市県民税の負担増=手取りが増えない

この様に、営業職員が高収入と表彰式に参加する権利獲得を目指し、寿命を削って働いても、いつもノルマ未達で表彰式に参加しない平社員と手取り額がほとんど変わらないという現象が起きてしまうのである。

だから社会保険料や所得税、市県民税の知識は必須なのだ。

1番恐ろしいのは、表彰式に参加する権利獲得を目指して奔走する営業職員のほとんどがこの事実を知らないことである。

しかし無知ほど強い者はいない。

余計なことを考えずに目標に向かって一点突破するからだ。

経営者にとって社員は無知であるほどありがたい

ちなみに、なぜ支給される販売奨励金がなぜ実質マイナスになるのか、その詳しい理由についてはカール・マルクスの『資本論』を参考にしてほしい。資本論は超難しくてまともに読もうとすると理解できずに挫折してしまうので、資本論を要約した動画をYou Tubeで観るとよい。
また労働収入からの脱却方法や資本主義経済の格差について理解を深めたい方は、ロバート・キヨサキの『キャッシュフロークワドラント』やトマ・ピケティの『r>g』を読むと勉強になる。

2024年2月27日 補記

先日Xで以下のポストがバズっていたので紹介する。昇給しても手取りが増えない仕組みを分かりやすく説明している。

ここから話を戻す。
だいたい社内で表彰されたからといって、そんな名誉はあなたが勤める会社の中でしか通用しない。(ただし保険代理店に所属しながら個人事業主として働くケースは除く。彼ら彼女らはフルコミッション系でありながら圧倒的なスキルと人脈を活かし組織に搾取されることなく個人の力でサバイブしている強い人種である。とても尊敬している。)

昔付き合いで加入しただけの生命保険会社のおばさんからハガキが届いて、その内容を見たところ「皆さまのおかげで〇〇賞を受賞できましたありがとう」みたいなことが書かれてあって「知らんがな」と思った。その賞がどれだか名誉あるものなのかはこちらでは分からないし興味もない。だからそんなハガキを見ても「おっ…おう」という微妙な返答しかできない。

社内で表彰されるために仕事を頑張るのはとても尊いことだが、その対価として得られるものは『表彰式での一時的な名誉感』と『雀の涙程度の契約奨励金』にすぎないのだから、こんなものを得るために自分と家族の貴重な時間を無駄にしないでくれ、と言いたいのだ。

「いやいや俺は一生この会社に骨をうずめるつもりだし、例え小さな会社の中だけでしか通用しない賞であってもそれを獲得して表彰式に招かれて周囲からチヤホヤされたいし、昇進昇給して手取りが増えなくてもいいし、年金受給額に大差はなくとも小さな社内で役職付きに上り詰めて部下に威張り散らしたいんだ、それが達成できるのであれば自己犠牲はいとわない」と言うのであれば、是非これからも表彰式に参加できる権利獲得を目指して営業職を頑張っていただきたい。

ちなみに私は自動車販売店に入社してから数年間は何も分からず会社から与えられたノルマを達成するために頑張っていたが、社会保険料や資本主義経済の仕組みを理解した瞬間から「お金を得るためにはどこかの組織に属さなければならない」という固定観念が吹き飛び、それ以後は「どうしたら働かずにお金を得ることができるのだろう?」とそればかりを考えるようになり、情報を見つけてはアレコレ試したりしていた。

失敗は数え切れないほどしたし、痛い思いも沢山したが、現在ではそれなりに形になってきて大変助かっている。

私と同じように営業の世界に疲れてしまい、なんとか現状からの脱却を企んでいる人もいるだろう。

そんな人は以下の記事を参考にしてほしい。

さて今回の記事をまとめると、

  • ちっぽけな名誉やお金のために自分の貴重な人生を犠牲にしてはいけない

ということになる。

もっと言うと、

  • 会社員は仕事はテキトーでいい

と言いたい。

一生懸命に頑張ったって、日本で会社に雇われて働く以上はどうせこの先も給料は上がらないのだから。

事実、私自身が独立開業してはじめて「会社員がどれだけ資本家に搾取され続けていたか」に気付くことができた。

つまるところ、労働から解放され経済的・時間的・場所的自由を手にするためには資本家になる以外に道はない。

ステップとしては、まずは会社員を卒業して(同時スタートでも可)何か1つ事業をもつ。

マイクロ法人を設立して節税する。

起業家もしくは投資家になって不労所得を得る。これしかない。

ちなみに私は行政書士(個人事業主)だ。

キャッシュフロークワドラントでは「self employee」だが収益の柱が数本あるので「business owner」とのハイブリッド型である。

開業して個人で収入を得るようになり、自動車販売店で働いていた時より幸福度が1,000倍に爆上がりした。

別に行政書士でなくても、一人士業は圧倒的に自由度・幸福度が高いので超お勧めする。興味があれば目指してほしい。

営業職さんは、お仕事はほどほどに。

表彰台に立つことがあなたの求める人生の豊かさですか?

Kindleアンリミテッドは、私の本以外にも200万冊が読み放題!しかも30日間は無料です☆彡

気に入ったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
目次