個人事業主やフリーランスの方から「業務委託契約は口約束でも有効ですか?」と質問されることがあります。
実際、仕事の発注者とはこれまで正式な契約書を交わしたことは一度もなく、口約束だけで成立しているとのこと。
しかし、万が一発注者とトラブルになった場合のリスクを考えると契約書面があった方がいいのでは?と心配になったようです。
業務委託契約は口約束でも有効
結論を先に申しますと、業務委託契約(準委任契約)は口約束でも有効です。
例えば、あなたがコンビニでお茶を買うときに、店員さんと毎回売買契約書を交わしたりしませんよね?
しかし、あなたがカウンターへお茶を置き、店員さんが商品にバーコードを読み取ることで売買契約は成立しています。
このように、契約は当事者の申込みと承諾の「意思の合致」により成立します。
このとき「私にこのお茶を売ってください」と口に出していませんが、行為そのもので契約が成立しています。
お互い無言で契約が成立するのですから、口約束でお互いの意思表示を確認しれば、契約はなおさら有効と言えます。
契約内容によっては口約束NGなものも
全ての契約が口約束でも有効に成立するわけではありません。
契約内容によっては、書面の交付が必要なものもありますので注意が必要です。
①保証契約 | 債務者が債務を履行しない場合に、代わっての弁済を約束する契約 (民法で「書面による契約」が義務付け) |
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②定期建物賃貸借契約 | 定めた期間が満了することで、更新されずに確定的に賃貸借が終了する賃貸借契約 (借地借家法で「書面による契約」が義務付け) |
③建設工事の請負契約 | 当事者の一方がある仕事を完成し、相手方が仕事の結果に対して報酬を支払う契約 (建設業法で「書面による契約」が義務付け) |
④警備業に係る契約 | 警備業者と依頼者との間で交わす契約 (警備業法で「契約締結前」と「契約締結時」の2回、依頼者に対して書面の交付が義務付け) |
⑤使用貸借契約 | 当事者の一方が、相手方から受け取った物について使用後に無償で返還する契約 |
⑥寄託契約 | 当事者の一方が、相手方のある物を保管する契約 |
上記①~④は「書面の作成」が必要で、⑤~⑥は「物の受け渡し」が必要(要物契約)。
このように、全ての契約が口約束で成立するわけではありませんので注意しなければなりません。
とりわけ個人事業主やフリーランスの方は、上記の請負契約に該当することがありますので、今一度契約内容をチェックしてみましょう。
請負契約と準委任契約どちらに該当するのか?については、その線引きが難しいケースが往々にしてありますが、実際は契約内容により判断されます。
請負契約と準委任契約の違いについては下記の記事を参考にしてください。
契約の定義とは
そもそも『契約』とは、ある一定の目的を達成するために契約当事者の「債権」と「債務」が確定することです。
契約当事者の一方が、債務を履行しない場合は損賠賠償や強制執行のような執行力が伴います。
そして契約に執行力をもたせるためには、契約の合意内容に以下の4つが担保されていることが必要となります。
- 契約の履行が可能なものであること
- 契約内容が確定していること
- 契約内容が適法であること(強行規定に違反していない)
- 契約内容に社会的妥当性があること(公序良俗に反していない)
言い換えると、例え書面契約であっても紙に明記すれば何でも有効な契約になるわけではない、という点を理解しておかなければなりません。
④公序良俗違反についての詳しい解説は、下記の記事を参考にしてください。
口約束が危険である2つの理由
契約は口約束でも有効に成立しますが、書面契約と比べると安全性はかなり低いです。
やはり書面に残しておく方が、トラブル防止やトラブルが起こった後の紛争解決の手段としては有効です。
口約束の大きな問題点は2つ。
1.契約の合意内容が曖昧
2.立証の問題
①契約の合意内容が曖昧
口約束では、契約の合意内容が曖昧であることが問題となります。
契約の合意内容とは「契約のゴール」とも言い換えられます。
例えばシステム開発の業務委託契約であれば「どのような状態になれば契約が履行されたとみなされるのか(ゴールしたのか)」が曖昧になりがちなのです。
具体的には「システムを開発して納品するまで」でよいのか「報酬にはその後の保守メンテも含まれるのか」、「どのような不具合にどれだけの期間修正対応してくれるのか」などは、口約束ではどうしても曖昧になりがちなのです。
しかし契約内容を書面で残しておけばお互いの債権債務を「見える化」できますので、これらのトラブルを未然に防ぐことができます。
契約書面は相手方の一切の言い訳を封じる効果があるので、口約束より何百倍も有効です。
②立証の問題
万が一、契約の相手方と裁判に発展した場合、いくら相手方に非があったとしてもそれを立証できなければ意味がありません。
裁判では、原則、権利を主張する側が証拠を提示する必要があるので、どれだけ裁判で「相手はいつまでに報酬を支払うと約束してくれたんです」と泣きながら訴えても、それを裏付ける証拠が無ければ、そもそも契約があったこと自体を立証できませんので負けてしまいます。
やはりトラブルを防止するためにも、証拠を残すためにも契約は口約束ではなく、書面で残しておくことが絶対必要です。
まとめ
今回は、フリーランスや個人事業主に業務委託契約に契約書面が絶対に必要な2つの理由について解説しました。
口約束でも有効となる場合もありますが、万が一トラブルに発展した場合は、証拠を立証できなければ契約自体が存在しなかったことにもなります。
つまり最悪の場合、仕事を完成させても報酬がもらえないこともあり得ます。
この様な事態を避けるためにも、個人事業主やフリーランスの方は、今一度業務委託契約書を作成するよう心掛けましょう。
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