契約書の「契約不適合責任」条項で自社を有利にするための7つのポイント

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売買契約書や業務委託契約書において「契約不適合責任」条項は超重要です。

なぜなら契約不適合責任の期限範囲を特定(限定)していなかったことで、不足の損害賠償責任を負ってしまうことがあるからです。

そこで今回は、契約書の「契約不適合責任」条項をチェックする際に、自社が有利になるために抑えておきたい7つのポイントを買主・売主、双方の立場から解説します。

本記事における、買主・売主とは、契約内容によって[発注者や委託者」、[受注者や受託者]と読み替えてください。

目次

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、買う約束をした物と実際に引き渡された物が契約内容に適合しない場合に買主の主張を認めて、売主に負わせる責任のことを指します。

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる
ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

(買主の追完請求権)民法第562条

例えば納品されたアプリにバグが多かったり、新築を買って住み始めたが雨漏りが酷かったときなどは、相手方に責任を取ってもらわなければなりませんよね?

このように引き渡された物の品質が悪かった場合に、売主にとってもらう責任が『契約不適合責任』です。

このため契約書では、
(買主の立場なら)どの様なケースだったら売主に責任を追求できるのか
(売主の立場なら)どの様なケースだったら買主の責任追求を免れることができるのか

を想定しつつ、できるだけ自社が有利な立場に立てるように契約書を組み立てていくことが重要です

買主に認められる4つの権利

契約不適合を発見した場合、民法では買主に以下の4つの権利を認めています。

履行の追完請求権

引き渡された目的物が契約の内容に不適合である場合は、買主は売主に対して「目的物の修補(商品の補修)」や「代替物や不足分の引き渡し」など、当初の契約書通りの商品を引き渡すように請求することができます。(履行の追完請求権という)

ただし契約内容の不適合が、買主のミスや責任によるものと判断される場合はこの請求は認められません。

代金の減額請求

買主が上記の履行の追完の催促をおこなっても売主が一定期日内に対応してくれない場合は、売買代金を減額するように請求することができます。

また履行の追完が全く期待できなかったり、売主が買主の請求を拒絶している場合は、それらの状態が発覚した時点で直ぐに代金の減額請求が可能です。

損賠賠償請求権

契約不適合によって買主が損害を被った場合、買主は売主に損害賠償請求をすることが可能です。

ただし契約不適合の理由が、売主側のミスや不注意によるものでなかった場合は、損害賠償請求できないケースもあります。

契約を解除する権利

買主には契約そのものを契約開始時に遡って解除する権利が認められています。(契約解除権という)

ただし解除が認められるかどうかは契約不適合の度合いによって判断されますので、不適合内容が軽微の場合は、契約解除が認められないこともあります。

また、商品の受け渡しが自体が不可能である場合や引き渡された商品では契約本来の目的を達成することができないことが明らかな場合は、相手方に履行の提供の催告をすることなく、いきなり契約を解除することができます。

「契約不適合責任」条項で絶対に抑えておきたい7つのポイント

ここからは、契約書の「契約不適合責任」条項をチェックする際に絶対に抑えておきたいポイントを解説します。

1.契約内容が不適合であると判断できるケースを限定(特定)しているか

売主の立場から

可能であれば契約不適合責任を一切負いたくないところですが、その要求は難しいかもしれません。
対策として、契約不適合責任を負うケースを、仕様書や取引基本契約書などで限定すれば(狭くすれば)、リスクを低減することができます。

お勧めの対策

・下記に該当する事象は契約内容不適合には含まれないものとする
・下記に該当する事象は経年劣化によるものと推定し、売主は契約内容不適合責任を負わない

買主の立場から

買主としては、できるだけ幅広く契約不適合責任を追求できるようにしておきたいもの。
そこで、契約内容に適合した成果物を引き渡してもらうにあたり、支障となりそうなケースを想定してできるだけ契約書に盛り込んでおきましょう。

2.検査・通知期間を限定しているか

目的物を受け取ったらいつまでに品質を検査しなければならないのか。
そして検査した結果、不適合箇所が見つかった場合はいつまでに相手方に通知しなければならないのか、その期限を限定しておきましょう。

なお商法526条では、商人間の売買で買主が売主から目的物を受け取ったときには、買主は、遅滞なく受け取った物を検査しなければいけない。そして検査の結果、受領した商品に何らかの不備が発見されたり、数量が足りていなかったときは、買主は、直ちに売主に通知しなければならない、

と規定しています。

契約書は、強行規定に反しなければ、民法や商法の規定とは別の決まりを定めることが可能です。

売主の立場から

買主に与える検査期間が長ければ長いほど売主のリスクは高くなります。
対策として、納品後の検査期間をできるだけ短く設定しましょう。

買主の立場から

検査期間をできるだけ引き伸ばしましょう。
さらに可能であれば、検査義務自体を契約書から排除できないか相手方と交渉します。

3.期限の「起算点」を限定しているか

売主の立場から

買主が売主に責任追求できる起算点を限定していなかった場合、売主は長期間に渡り責任を負うことになります。

また期間が長いと経年劣化の疑いがある製品についても責任を負うことにもなります。

契約書では「本製品を受領後◯日以内に検査する」など、できるだけ短い期間を設定しましょう。

お勧めの対策

甲は、本製品の検査終了時から◯年以内に限り、無償にてその補修または代替品の提供をおこなうものとする。

また契約の相手方によっては、いつまで経っても検査してくれないこともありますので、この様な事態に備えて下記の文言を盛り込んでおくと良いでしょう。

お勧めの対策

乙は本製品を受領後◯日以内に検査を行いその結果を甲に報告しない場合は、同日の経過をもって検査を完了したものとみなす

買主の立場から

買主としては、契約不適合責任を追求できる起算点をできるだけ遅く設定したいところです。
そこで、契約不適合の起算点を「検査時」ではなく「契約不適合を知った(発見)したとき」とします。

このように設定すれば起算点を引き伸ばすことができます。

4.売主の責めに帰すべき事由

売主の立場から

契約不適合責任を負うのは、売主に責任の所在がある場合に限定します。
契約不適合の責任の所在が、売主以外にあった際の責任を回避するためです。

買主の立場から

買主としては、契約不適合責任の所在が売主以外であっても責任をとってもらいものです。

そこで契約書では、契約不適合責任の所在が売主以外であり、かつ契約不適合の通知可能期間を経過後も、売主に対して履行の追完請求をできるよう交渉しましょう。

5.代金減額の排除を規定しているか

売主の立場から

契約内容に不適合があった場合、買主には『目的物の修補』や『代金の減額請求』といった権利が認められています。

しかし売主としては、せっかくの売買代金を減額請求されては困ります。

そこで契約書には契約不適合が見つかった場合の対処方法として下記の2つを認めるが、
①目的物の修補(商品を修理)
②代替物の引き渡し(代わりの商品を引き渡す)

代金の減額請求権は排除する、という方法も有効です。

買主の立場から

買主としては、上記とは反対に代金の減額請求権を契約書に盛り込んでおくと様々な方法で契約不適合に対処することが可能になります。

6.損害賠償の「上限額」を限定しているか

損害賠償の上限額を限定していないと、賠償額が莫大になるリスクがあります。

売主の立場から

売主としては、損害賠償の上限額を設定します。

お勧めの対策

損害賠償は、本製品の売買代金を上限額と定め、買主はこれを超える額を賠償することができない

買主の立場から

買主としては、できるだけ広い事象に備えて損害賠償できるように設定しておきたいところ。

そこで契約書では「損害のすべてを賠償することができる」としておきます。

また、弁護士費用も請求できるようにするためには下記の条項を盛り込むと有効です。

お勧めの対策

…省略…その賠償(合理的な範囲内の弁護士費用、調査費用、専門家の鑑定費用、法的対応費用を含むがこれに限定されない)につき賠償しなければならない

7.損害賠償額の「範囲」を限定しているか

損害賠償の「範囲」とは、どこまで損害賠償責任を負わなければならないのか?というその範囲を指します。

簡単に言うと「どれだけ大きな損害が出ても、賠償額の範囲を定めていおけば、それ以上は支払わずに済む」という免責条項のようなものです。

例えば、あなたが町工場の社長で、玩具メーカーから自社製品の一部を構成する部品の製作を依頼されたとします。

メーカーが、あなたが製作した部品を自社製品に組み込んで発売したところ使用上の不具合によりユーザが負傷する事件が多発。

このときメーカーは店頭から全品回収しなければなりませんし、会社のブランドイメージにも傷が付きます。

この様な場合に、もし契約書で「町工場の社長は損害の全てを賠償しなければならない」と定めていた場合は、部品代金とは別に、ブランドイメージ低下による間接損害まで賠償しなくてはなりません。

しかし「損害の範囲は直接損害に限る」などと定めておけば、受領済の部品代だけをメーカーに賠償し正規品を再納入するだけで済みます。

この様に、損害賠償の「範囲」を定めることはとても重要なことのです。

売主の立場から

売主としては免責条項(責任回避条項)じゃ多いほうがリスクを抑えられますので、できるだけ多く列挙します。

買主の立場から

買主としては、不測の損害に備えて契約不適合を追求できる範囲は広く設定しておきたいところ。
そこで、賠償すべき損害範囲をできるだけ広く列挙しましょう。

まとめ

今回は、契約書の「契約不適合責任」条項をチェックする際に、自社が有利になるために抑えておきたい7つのポイントを買主・売主、双方の立場から解説しました。

契約内容不適合責任の範囲は

売主(受注者・受託者)はできるだけ狭く、
買主(発注者・委託者)はできるだけ広く、

と覚えておきましょう。

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