自動車販売会社『ビッグモーター』が保険金を不正に請求していたことを端に発して、毎日メディアを賑わせている。
本記事の執筆時点で判明している不正や不法行為は下記の通りだ。
- 保険金不正請求詐欺
- 顧客の車を損壊
- ローンを不正審査で通過させる
- 水没車を隠して販売
- 納車準備費用8万円もらって何もしない
- 客のタイヤをすり替え
- 客を軟禁
- 買取金額を引取後に減額
- 店舗前の植木をバーナーで伐採
- 店舗前の花壇に草が一本生えていたから降格
- 店舗前の街路樹をコンクリートで舗装
- デスクにペンを置いていたのを見られて降格
- 役員からのLINEの通知が1日に2,000件
- 役員がLINEで「死刑」連発
常識では考えられないほどの不正・不法行為の数々だが、これら事件はトップダウン経営による過剰なノルマから生じているのは言うまでもない。
当ブログでも「過剰なノルマを課しても意味がないことを経営者がなぜ理解できないのかが理解できない」とビッグモーター事件の発生前から訴えていた。
ビッグモーターより酷いノルマを課す会社が存在する
決してビッグモーターを擁護するわけではないのだが、保険金の不正請求、ローンの不正審査、査定額の後日減額請求などの行為は、売上げを上げるための行為なので、過剰なノルマが押し付けられる理由が理解できなくもない。(※不正行為や過剰なノルマ・パワハラ事態は断じて許されない。)
しかし日本には、さらに酷いノルマを強いる自動車販売会社も存在する。
それは私の知人が勤務していた会社だ。(私自身が勤務した会社ではない、と保険をかけて言っておく)。
何が酷いのかと言うと、ビッグモーターの様な違法行為を指すのではなく、法は一切犯してはいないが営業マンに(以下、営業職員と呼ぶ。)『理解不能なノルマ』を課すことが酷かった。
売上げを上げるためのノルマなら理解して行動に移すことができるかもしれないが、「これは一体なんのためにやらなければならないのか?」と、いくら考えてもさっぱり理解できないようなノルマを多数課せられていたのだ。
これには非常に困った。
理解しようとするが、どれだけ考えても分からないで生身の人間なら精神が崩壊してしまうのだ。
今回は、私の知人が自動車販売店での勤務時代に実際に課せられていた『理解不能』なノルマの数々をご紹介したい。
私の知人は、随分前に退職しているので、これらのノルマは現存しないかもしれないが、当時の話として聞いてほしい。
※なお特定を避けるため、多少ぼかしを入れています。
『理解不能』なノルマの数々
会社の上層部は「営業職員が日々の営業活動をどれだけ精力的におこなっているのか」を判断するために、営業職員に意味不明なノルマを課し、毎日、毎週、毎月『自己申告制度』による活動報告を課していた。
この報告は全て自己申告による数字で判断され、数字が未達であると、上司から人前で高圧的に怒鳴れたり、グループLINEで人格を否定される様な発言で公開処刑されたりするので、全営業職員が必死になって意味不明なノルマを達成するために毎日無駄な時間を費やしていた。
『仕事のための仕事』というやつだ。
車の査定件数を報告
「お客の車を月に何件査定したか?」がノルマとして課せられていた。
「査定している数が多いほど仕事を頑張っている」とみなされていたからだ。
しかし実際にお客の車を査定しなくても会社にはバレなかったので、適当に偽名を使って査定書を作り上げて「今日は◯件お客の車を査定しました」という全く意味のない報告をしていた。
新車や支払いプランの提案件数を報告
「お客に月に何件新車の見積書を渡しましたとか、同時に月に何件自動車ローンのプランを提案しました」などがノルマとして課せられていた。
「提案している数が多いほど仕事を頑張っている」とみなされていたからだ。
しかし実際にお客に提案書を作成して商談で説明をするまでしなくても会社にはバレなかったので、適当に偽名を使ってプランニングを作り上げて「今月は◯件提案しました」という全く意味のない報告をしていた。
さらにその提案書は紙で印刷して上司に提出しなければならず、上司は部下から提出された紙を営業職員ごとに分けて丁寧にファイリングしていた。
お客の家に訪問した件数を報告
「お客の家に月に何件訪問したか?」がノルマとして課せられていた。
「訪問している数が多いほど仕事を頑張っている」とみなされていたからだ。
なお報告はエクセルのフォーマットに『自己申告で』数字のみ入力。
しかし実際にお客の家を訪問しなくても会社にはバレなかったので、フォーマットには「今日は15件、今日は23件訪問しました」と適当に数字だけをポンポン入力していた。
お客の家にアポ無しで訪問するなど、ハッキリ言って迷惑行為でしかないのだが、会社はそんなことはどうでもよかったらしい。
車検の予約を早期に獲得
「車検の予約をどれだけ早期に獲得したか?」がノルマとして課せられていた。
「車検の予約をできるだけ早い時期に取れた数が多いほど仕事を頑張っている」と評価されていたからだ。
車検の期日ギリギリで予約を取ることは決して許されなかった。
期日から前に遠ざかるほど評価が高い仕組みだ。
しかし、実際にお客に電話して車検の日取りを決定しなくても会社にはバレなかったので、多くの営業職員が適当に予約を入れて「来月の車検の予約は既に◯件獲得できました」と嘘の報告をしていた。
あるとき社内で問題が発生する。
会社への報告が終われば、嘘の予約を必ず取り消さなければならないのだが、自分で入れた嘘の予約データを削除し忘れる営業職員がけっこういて、嘘の予約日の当日になって何も知らない事務員が「ご予約のお客様が来店しないんだけど?」となるなど、各支店で混乱が起きていた。
週末のフェアーに来店予定の客の氏名を紙に手書きで書き込む
自動車販売店は、毎週末はイベントを開催する。
来場記念品や成約記念品を用意して多くの客を呼び込もうとする作戦だ。
「どんな用事でもいいから、とにかく客を店に呼び込んで賑わいを出せ」というのが会社の方針だ。
そこで営業職員は「土日で最低◯組の客を来店させろ」、「来店する客が決まったら、その客の氏名を紙に手書きで書き込んで提出しろ」と命令されるので、最初は夕方から夜にかけてお客に電話をかけて「土日に時間があったらお店に立ち寄ってくれませんか?」と頭を下げていた。
しかしお客の立場からすると「せっかくの休日に何故用もないのに自動車販売店に行かなければならないのか?」となる。
全くその通りだ。反論のしようがない。
しかし営業職員は、紙にお客の氏名を沢山手書きで記入しなければ家に帰れないから、皆「山田太郎」とか適当な名前を書き込んで帰宅していた。
自動車販売店は総じてブラック
他にも『意味不明な』ノルマは数えきれないほどあるのだが、キリがないのでここまでにしよう。
ビッグモーターのように、街路樹に除草剤を巻くようなことをしている自動車販売会社は他にないだろうが、自動車販売店の営業現場は基本『ブラック』だ。
ブラックは基本的に毎日がパワハラ祭りなので、精神が疲弊し鬱になる人が多い。
一度鬱になると復帰するまでに何年も要することもあり、下手すると一生社会復帰できない可能性もある。
だからビッグモーターの様な自動車販売店に就職・転職しようと検討中の方は相当注意した方がいい。
私の知る自動車販売会社にホワイトな会社もあるが、ホワイトに就ける確率は宝くじを当てるほど低いだろう。
生活費を得るために車を販売する考え方から卒業しよう
よほど車と車の販売が大好きで「俺は自動車販売の仕事が天職だ!}と思っているのであればビッグモーターの様なブラック自動車販売店で働き続けてもいいのだが、多くの人はそうではない。
ブラック自動車販売店と知りながらも、なお働き続ける理由の1つとして「稼げるから」と言う人もいる。
しかし辛い思いをしてなんとかノルマを達成したところで、もらえる奨励金は雀の涙ほどだし、その涙も、ノルマを達成する過程でボロボロになった体と心を回復させるための消費行動(自分へのご褒美としての買い物やリラクゼーション)で一瞬で消えてしまうので、プラマイゼロいや、それ以上にマイナスになってしまうのだ。
だから、自動車販売店の営業職員より手取り額こそ低いがノルマがないので精神的ストレスも低く、自分へのご褒美もさほど必要のない事務職員の方が相対的に幸福度が高かったりする。
この点に気が付いていない人が多すぎる。
そもそも生活費を車を販売した奨励金で賄おうとしている考え方そのものが危険だ。
これでは一生ブラック企業から抜け出すことができない。
これは何も自動車販売店のみならず、全国のあらゆる職種で働く営業職員に共通する話だ。
例えばの話、宝くじで3億円が当選してもあなたは営業職員を続けるか?
おそらくよほどのドMでもない限り、直ぐに辞表を提出するだろう。
誰もブラックな営業職なんか好き好んでやりたくないのだ。
だから、ビッグモーターの様なブラックな職場で働く全国の営業職員は一日でも早く泥舟から脱出するための準備に取り掛からなければならない。
そのための具体的な手段・方法・マインドについては下記のブログに詳しく描いているので参考にしてほしい。
まとめ
今回は、自動車販売会社で経験した『意味不明な』ノルマの数々について解説した。
自動車販売会社の営業職は総じてブラックでその度合が高いかどうかの違いしかない。
ブラック職場が減らない理由は、ブラック低賃金でも求人を募集すればある程度人が採用できてしまう点にある。
しかしこの記事を読んで、
- ブラック自動車営業職から1日でも早く抜け出したい
- 生活費を稼ぐために仕方がなくブラック自動車販売店で勤務している
- 自分の勤務する会社がブラックであるとようやく気が付いた
このような方は、是非自分が現在置かれている状況がいかに危険であるかを自覚して、そこから抜け出すための計画を立てて実行に移してほしい。
ブラック自動車販売店から営業職員が誰もいなくなればブラック体質もやがては改善されるはずだ。
全国にはびこるブラック自動車販売会社が根絶する日を節に願う。