芸能・音楽プロダクション向け。アーティスト・タレントの専属マネージメント契約書の作成で気を付けるポイント

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ユキマサくん

僕は音楽プロダクションを経営しているんだけど、長年使ってきたバンドマンとの専属マネージメント契約書の内容を見直そうと思うんだ。
どんな点に気を付ければいいかな?

純さん

報酬体系、契約期間、契約期間終了後の措置などは特に問題になりやすい点なので気を付けた方がいいですね。
今回は、芸能・音楽プロダクション向けに、アーティスト・タレントの専属マネージメント契約書を作成するときに気を付けるポイントを解説します。

目次

専属マネージメント契約書とは

エンターテインメント業界では、歌手、バンド、タレント、芸人、モデル、俳優、声優、作詞作曲家など様々なアーティストが活躍しています。

アーティストの活動をサポートし、利益を最大化させる役割を担うのが、芸能プロダクションや音楽プロダクション。

そしてプロダクションが、アーティストと一社専属的なマネージメント契約を結ぶ際に用いられる契約書が『専属マネージメント契約書』です。

専属マネージメント契約書には、アーティストやタレント等がプロダクションに専属的に所属する実演家として、契約期間中プロダクションの指示に従い、プロダクションのためにアーティストやタレント活動を行うことが規定されます。

「専属」というからには、アーティストやタレント等は契約を締結後、プロダクションを通さずに仕事を請負うと契約違反になります。

2024年、3人組女性ロック・バンド『サバシスター』がファースト・アルバム「覚悟を決めろ!」を発表しましたが、販売流通は『ポニーキャニオン』ですが、マネージメントは横山健が率いる『PIZZA OF DEATH』との契約です。

サバシスターは、今後ピザオブデスのマネージメントの元にバンド活動を行いますので、無許可で他のレーベルから音源を発表したり、フェスに出演することはできません。

専属マネージメント契約の目的は、プロダクションとアーティスト・タレント等が相互に協力して、アーティスト等がブレイクし、双方の利益の増大を目指すことです。

このためには、プロダクションとアーティスト等が長い時間をかけて信頼関係を構築していく必要があります。

そして強い信頼関係を構築するためには、両者が安心して各々の活躍に専念できるような契約書、『専属マネージメント契約書』が必要となるのです。

専属マネージメント契約書で気を付けるポイント

ユキマサくん(以下「甲」という)と株式会社モフオブデス(以下「乙」という)とは、甲を乙の所属バンドとし、乙が甲の芸能・音楽活動を専属的にマネジメントすることに関し、次の条項により専属マネージメント契約(以下「本契約」という)を締結する。

マネージメントの業務内容を定める

音楽・芸能プロダクションのマネージメント業務は多岐に渡りますので、これらを具体的に契約書に盛り込みます。

マネージメント業務の例

・アーティストやタレントの育成
・アーティストやタレントのプロモーション
・アーティストやタレントのスケジュール管理
・取引先との契約締結・交渉
・報酬の入金チェック
・マスコミ対応
・ファンクラブの設立・運営(外部委託する場合もある)
・ライブやイベントの企画・制作
・グッズの企画・販売
・著作権、肖像権、パブリシティ権の管理、等

一方、アーティストやタレント等はプロダクションの指示に従い、実演や創作などのアーティスト活動を行います。

アーティストやタレント等の役務提供例

・テレビ、ラジオ、動画配信、CM、映画、演劇、ミュージカル、コンサート、ライブ、フェス、イベント等への出演
・レコーディング制作での歌唱や演奏
・メディアのインタビュー対応
・楽曲制作(作詞・作曲・編曲)
・プロデュース活動、等

契約期間を定める

専属マネージメント契約の契約期間は1年から3年とし、更新は自動更新(契約満了前にいずれの当事者から契約解除の意思表示をしない限り自動的に契約が更新される規定)とするケースが多いです。

稀に契約期間を10年とする契約書も散見されますが、労働基準法では3年を超える契約期間を定めることを原則禁止しています(労働基準法14条1項)。

もっとも、アーティストやタレント等が労働者に該当するか否かは契約内容によりますが、長期間に渡り所属タレント・アーティストを拘束する契約は問題となりやすいので避けましょう。

長くても3年位内とする方がベター。

また契約期間の満了時に、アーティストやタレント等が契約更新を拒否する場合でも、所属事務所の判断で契約を一方的に更新できると規定するプロダクションもあるようですが、これは優越的地位の濫用等に該当するので危険です。

報酬基準を明確にする

プロダクションは、アーティストやタレント活動から生じた収入を契約書で定めた報酬算定基準に従い分配します。

このときの算定基準が曖昧であると、後にトラブルとなります。

報酬の算定方法には大きく3つのパターンがあります。

  1. 固定給
  2. 歩合給
  3. 固定給+歩合給

アイドル系アーティストは固定給、お笑い芸人は歩合給を採用するケースが多いです。

固定給にすると所属アーティストやタレントが売れていないときでもプロダクションは給料を支給しなければならなりませんが、ブレイクした後も契約当時の固定給の支払いで済む点はメリットでもあります。

一方完全歩合制にすると、ブレイクする前のアーティストやタレントが生活費を稼ぐためのアルバイト勤務が増え、本来のアーティスト活動が疎かになるという弊害があります。

お勧めは③の固定給+歩合給です。

注意点として、芸能・音楽プロダクションがアーティストやタレントと十分な協議を行わずに一方的に著しく低い報酬で取引を要請してはいけません。

これは独占禁止法上、問題となる行為ですので気を付けましょう。

印税や著作権使用料の分配率を定める

芸能人やタレントがテレビやCM、音楽フェスに出演することでプロダクションには出演料が入り、また歌手やバンド、作詞作曲家などのミュージシャンはこの他に、実演家印税、著作権使用料、貸レコード使用料、私的録音録画補償金などの収益が入ります。

これらの収益をアーティストやタレントとどのような分配率で配分するかを契約書で定めます。

著作権使用料は、JASRACやNexToneの規定に従い分配されますが、CM、フェス出演料やマーチャンダイジング料(グッズ売上げ)の分配率はピンキリです。

音楽・芸能プロダクションとアーティストで、3:7や4:6にするなど規定します。

著作権印税や2次使用料はトラブルに発展しやすい部分です。アーティストやタレントも契約書の内容をよく理解しないままサインするケースも少なくありませんので、プロダクションは報酬の分配率をしっかりと伝える努力も必要です。

経費の負担について定める

アーティストやタレント活動には様々な経費がかかります。

代表的なものとしては、旅費交通費、食事代、衣装ヘアメイク代など。

またアーティストやバンドは、楽曲代、楽器のメンテナンス代、ボイストレーニング代など。

これらの細かい費用をどこまで芸能・音楽プロダクションが負担するのかを契約書で定めます。

一般的には、旅費交通費や食事代はアーティストやタレント負担とするプロダクションが多いですが、過度な金銭的負担を強いることのないように気を付ける必要があります。

権利の帰属先について定める

専属マネージメント契約書には必ずといってよい程、「権利の帰属先条項」が盛り込まれています。

権利の帰属先とは、アーティストやタレント活動により発生する著作権法上の権利を、芸能・音楽プロダクションとアーティスト等、どちらに与えるのか?ということ。

一般的な専属マネージメント契約書では、「著作権法上発生する権利を、地域や期間に制限を設けず全てプロダクションに譲渡する」とするケースが多いです。

プロダクションは日々取引先と多数の契約書を交わしますので、著作権をアーティストやタレントに留保したままでは、その都度アーティストやタレントに著作権の利用許諾を得なければなりません。

これではアーティスト・芸能活動が停滞し、利益を最大化することができません。

このような理由から、専属マネージメント契約書では「創作活動から生じる全ての著作権をプロダクションに譲渡する」と規定しているのです。

労働基準法の適用の可否を確認する

多くの専属マネージメント契約では、芸能・音楽プロダクションとアーティスト・タレントは、雇用契約ではなく業務委託契約の形式を採用しています。

完全歩合給の業務委託契約であれば、アーティスト・タレントは労働者ではありませんから、プロダクションは残業代や通勤手当を支給したり、社会保険に加入させる義務はありません。

しかし実態が雇用契約であると判断される場合は、例え契約書のタイトルが「業務委託契約書」であってもプロダクションはアーティスト・タレントに対して上記の支給義務が生じます。また、労災保険や雇用保険から発生する様々な社会保障も受給できます。

プロダクションは、所属アーティスト・タレントを雇用契約のように扱いながら適正な手当や社会保険から逃れることのないよう、契約書の内容と実態を適合させなければなりません。

違約金について定める

芸能・音楽プロダクションが多額の費用を投じて育てたアーティスト・タレントが、契約から1年で事務所を脱退すると言われればたまったものではありません。

このような事態を想定して、専属マネージメント契約書には『違約金(損害賠償)』条項を規定しておきます。

例えば最初の契約期間の満了前に、アーティスト・タレントによる一方的な都合でプロダクションとの契約を解除するとの申し出があった場合、「◯万円を違約金として支払うものとする」など。

このとき定める違約金があまりにも過大であり、合理性や相当性に欠けるような場合は、公序良俗違反や優越的地位の濫用に抵触することがあります。

違約金を定めること自体に問題はありませんが、合理的な金額を設定するよう注意しましょう。

制約条項に気を付ける

2019年、公正取引委員会は「人材分野における公正取引委員会の取組」を発表、芸能・音楽プロダクションとアーティストやタレントとの専属契約や取引慣行について独占禁止法上、問題となる行為を挙げました。

プロダクションは、専属契約をするアーティストやタレントに以下の制約を課さないよう気を付けましょう。

  • 契約終了後は、一定期間アーティスト・タレント活動を行えない旨の義務を課す
  • 契約満了時に、アーティスト・タレントが契約更新を拒否する場合でも、プロダクションのみの判断で契約を一方的に更新できる旨の条項を契約書に盛り込む
  • テレビ局やメディアなどの出演先に、脱退したアーティストやタレントを起用しないように圧力をかける

また、専属マネージメント契約の終了後やプロダクション脱退後、アーティスト・タレントが脱退前に使用していた芸名を無断使用させないとする規定も公序良俗違反となり禁止されています。

まとめ

今回は、芸能・音楽プロダクション向けに、アーティスト・タレントの専属マネージメント契約書の作成で気を付けるポイントを解説しました。

  • マネージメントの業務内容を定める
  • 契約期間を定める
  • 報酬基準を明確にする
  • 印税や著作権使用料の分配率を定める
  • 経費の負担について定める
  • 権利の帰属先について定める
  • 労働基準法の適用の可否を確認する
  • 違約金について定める
  • 制約条項に気を付ける

以上の点は、特に問題となりやすいので、契約書を作成・チェックする際は慎重におこないましょう。

質の高い専属マネージメント契約書を用いれば、芸能・音楽プロダクションとタレント・アーティスト、両者は創作活動や実演活動に専念することができ、ひいては利益を最大化することができます。

この機会に、既存の契約書を見直してみてはいかがでしょうか。

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