2022年の5月1日、私は20年間のサラリーマン生活に終止符を打ち、ついに行政書士として独立開業の一歩を踏み出した。
開業から8ヶ月が経った現在、あらためてこう想う。
「行政書士は最高だ」
社会保険労務士試験に4回不合格で感謝
30代初頭、いわゆる『意識高い系』だった私は、人材育成の仕事に興味をもち、同時に人材育成の仕事と相性の良い資格『社会保険労務士』を目指し始めた。
社労士は、障害年金の裁定請求や就業規則の作成などを専業とするが、それ等にはほとんど興味がなく、3号業務と呼ばれる、人材育成や組織活性化の仕事をメインにするつもりだった。具体的には社員研修の講師だ。
3年間全力で勉強したが、ラストの年で2点足りずに心が折れた。
それから7年後、4度目のトライをしたが惜しくも1点足りずに不合格。
自分の努力不足が原因で落ちるのであれば納得ができるし「来年もまた挑戦しよう」と思えるのだが、毎試験テキストのどこを探しても掲載されていない範囲からの出題で足切りに遭っていたので、試験制度自体に嫌気が指してこの不合格をきっかけに完全に資格への熱が冷めてしまった。
社労士は諦めたが、心の底で『士業で独立開業』したいという想いが年々増強するばかりだった。
それならば『行政書士』はどうだ、ということで鞍替えした。
行政書士の仕事内容は、当時始めていた副業と抜群に相性が良かったので「行政書士の資格があれば、副業で開拓したお客様により一層お役に立てるはずだ」という確信もあった。
経てして私は一発で行政書士試験に合格できたのだが、現在思うと社労士試験にギリギリ不合格で良かったのかもしれないと安堵した。
行政書士の業務内容が自分の性格と抜群に相性が良かった
独立してまだ1年も経っていないので、行政書士業務のほんの表紙部分にしか触れていないが、それでも行政書士の仕事は私の性格にピッタリだと感じている。
行政書士の主な仕事は、行政に提出する許認可申請書類の作成や権利義務や事実証明の書類作成だ。
書類を集める・書く・並び替える・提出する
私は自動車販売店で営業職として働いていたが、事務仕事も結構多かった。
新車の登録に必要な書類を集めて整理し、専門部署に提出するものだ。
チェック項目に従って、書類を集め、記入し、並び替え、そして束ねて提出する。
この一連の作業は、書類仕事が苦手な人にとっては苦痛に見えたが、私はチェック項目に1つひとつ「レ点」を付けながら完成させていく作業が嫌いではなかった。
行政書士になってから判明したが、当時の一連の事務作業は行政書士の仕事の流れそのものだった。
文章を書くことが好きでたまらない
行政書士のもう一つの仕事として「権利義務や事実証明の書類作成」があるが、簡単に言うと「内容証明や契約書」の作成などがこれに当たる。
契約書の作成は、実際にいくつか数をこなして分かったことがある。
『契約書は物語(ストーリー)だ』
契約書は一見、当事者の約束事を羅列しているだけの文章にしか見て取れない。
しかし序章で登場人物が明らかになり(甲乙)、前半で物語の大枠が掴めて(目的)、途中ハプニングが起こり(即時解約や損害賠償請求)クライマックス(管轄裁判所)で着地する。
登場人物はときに、丙と丁も登場して複雑な関係に入り乱れながら、お互いが自己に有利な立場に立てるよう腹を探り合う。一連の条文の羅列の中に『静と動』が混在するのだ。
契約書を作成しながら「まるで映画のシナリオを描いているようだ」といつも思う。
私はブログをはじめとした文章を書くことが好きなので「契約書の作成も自分と相性抜群じゃないか」と感じたのだ。
同時に高校生と大学生時代のある出来事を思い出した。
行政書士になってから実家に帰省した際、母親から小さな新聞記事の切り抜きを手渡された。そこには当時高校生だった私が書いた短い作文が載っていた。
内容は「幼少期に祖父に連れて行ってもらった別府温泉の想い出」。
いま読み返すと、特段人の心を掴むほどの文章ではなかったが、自分の書いた作文が紙面の1スペースを拝借していた事実に驚いた。
また大学生時代は『村上龍』にハマりすぎて、自ら小説を書くこともあった。
未完のままだったが、現在思うと10代の頃から文章を書くことが好きだったようだ。
これはいまでも変わらない。
『好き』じゃないと続かない
この様に、実際に行政書士として独立開業してみると自分の性格と行政書士業務の相性が抜群に良かったことが判明した。
士業であれば、当然だが仕事内容が『好き』じゃないと続かない。
40歳なら仕事を引退するまで30年はあるのだから、嫌いなこと、苦手なこと、を生業にすると苦行でしかない。
将来行政書士として独立開業を目指している方は、自分の性格と主軸とする業務内容との相性がマッチしているか否かをじっくり考えてみるとよいだろう。相性が良かったら「GO!」だ。
まとめ
現実問題、仕事は収入があって初めて業として成立するので、正直好きなだけでは続けられない。
ここで「行政書士は食えるか・食えないか」問題が勃発するのだが、これについてはいつか別の記事で書こうと思っている。
何の仕事にせよ、大前提として『好き』じゃないと続かないことは確かだ。
『好き』とまではいかないが『得意なこと』だったり『使命感を感じていること』でもよい。
私はたまたま行政書士の業務内容と自分の性格との相性が抜群に良かったので、この仕事は向いていると思ったし、何より楽しいから長く続けられそうだ。
2023年は、より専門性を高めながら一人でも多くの依頼者を幸せにしていきたい。
下記の記事では、開業から1年を振り返っている。