友達から「離婚するときは公正証書を作った方がいいよ」って聞いたけど何かの書類なの?契約書とは違うのかニャ?
公正証書とは、契約書や遺言書を公的に証明した公文書のことですよ。公証人法という法律が定める、厳格な作成手続きに従って作成されます。
なんだか難しいそうだけど、トラブル防止のためにも大事な契約書は公正証書で作っておいた方が良さそうだね。
そうですね。今回は公正証書について、契約書との違いを交えながら解説します。
公正証書とは
公正証書とは、二人以上の間における権利や義務に関する契約の成立や『遺言書』などを、公証人が書証として作成し、 内容を証明する書類のことを指します。
簡単に言うと、公証役場で公文書として作成した契約証書のこと。公証役場は全国に点在します。
公正証書は、手数料を支払えば誰でも作成できます。
普段の生活では、なかなか公正証書に触れる機会はないと思いますが、土地や家の売買や貸借、離婚をするときや、遺言書を書く時など、人生の重要な局面において重要な効力を発揮する『書類の保存形式』です。
契約書との違い
公正証書と契約書の違いについて説明します。
公正証書は『公文書』、一方『契約書』は私文書です。
私文書(契約書等)とは、契約の当事者(売主と買主、貸主と借主など)が、自分たちで作成した文書のこと。
一般的な「契約書」「協議書」「示談書」等の多くは、この私文書に該当します。
私文書は当事者間の同意で作成できるという手軽さがメリットの反面、契約上の強制力が弱い点がデメリット。
例えば、お金を貸したのに返してくれない場合は、いくら契約書が残っているからと言っても裁判所は動いてくれません。
相手の財産を差し押さえるためには、わざわざ訴訟を提起して、確定判決・和解調書・調停調書など、債権(借金など)が存在することを証明し、裁判所が強制執行を許可した文書を取得しなければならないのです。
これには手間と費用が発生するため、金銭的にも精神的にも相当な負担となります。
このような場合に備えて契約書を公正証書として残しておけば、わざわざ訴訟を提起しなくても裁判所が相手の財産を差し押さえてくれるので、借りたお金をキッチリ回収することができます。手間もかからず、安心ですよね。
公正証書の種類
公正証書は様々な種類ありますが、代表的な公正証書は以下のとおり。
ちなみに名称は以下と同一でないものも多く見受けられますが、中身は同じです。そこまで気にする必要はありません。
書類の名前 | 内容 |
---|---|
金銭消費貸借契約公正証書 | お金の貸し借りに関する契約書 |
離婚給付契約公正証書 | 離婚した後の約束事を定める契約書 (慰謝料や財産分与、親権・養育費・面会交流権、など) |
婚約解消に伴う公正証書 | 婚約破棄に伴う慰謝料や堕胎、認知などの約束事を定める契約書 |
内縁解消に伴う公正証書 | 離婚と同様、内縁関係を解消するときの約束事を定める契約書 |
遺言公正証書 | 死亡後の財産を相続人間でどのように処分するか、について定める書面。 公正証書遺言とも呼ばれる。 |
任意後見契約公正証書 | 老後の財産管理や介護、身の回りの世話などを予め決まった人にお願いしておく契約。 公正証書として作成することが義務付けられている。 |
遺産分割協議公正証書 | 相続人間で決めた遺産の分割内容を書面にしておく証書 |
不動産売買契約公正証書 | 不動産の売買に関する内容を定めた契約書 |
定期賃貸借契約公正証書 | 不動産の賃借に関する内容を定めた契約書。 定期賃貸借契約は法律で公正証書による方法で作成することが義務付けられている。 |
公正証書を作成する4つのメリット
公正証書のメリットをもう少し具体的に解説します。
①証明力が高い
例えばお金を貸し借りする際に金銭消費貸借契約書を作成することはよくあります。
契約書は、その時は当事者間で合意の上、署名・押印して文書を交わしますが、時間が経てば相手方が「こんな契約書にサインした覚えはない」などど言い出す可能性もあるわけです。
「いいや、これはあなたがサインしたものに間違いない」と、いくら言っても水掛け論になりラチがあきません。
このような場合に、金銭消費貸借契約書を公証人が「公文書」で作成しておけば『 真正に成立した公文書』と推定され、相手方は「自分がサインしたものではない」と言い逃れが一切できなくなります。つまり将来的なトラブル防止につながるわけです。
このように高い証拠力・証明力があることが、契約書を公正証書で交わしておくメリットの1つと言えます。
②執行力がある
公正証書を作成する際、文中に「強制執行認諾文言」を付しておけば、債権者(お金を貸した人)は裁判所に訴訟を提起せずに強制執行を申し立てることができます。これが2つ目のメリット。
強制執行の申し立ては、「債務名義」と言って、公的にお金を貸していることを証明するものがなければ認められません。
通常、債権者(お金を貸した人)が裁判を提起して、相手に勝てば判決書がもらえます。この確定した判決書が債務名義となります。
しかし裁判をするには相当な時間とお金、そして精神的負担がかかります。おまけに判決に時間がかかる間に、相手方の支払い能力が悪化して、結局ちっともお金を回収できなかった、というケースもあります。
このような場合に備えて、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、それが債務名義となりますので、わざわざ訴訟をしなくても、強制執行を申し立てることが可能です。
やり方は簡単、公正証書をもって裁判所へ行き、強制執行を申し立てるだけ。裁判所が直ぐに相手の財産の差押えてくれるので、貸したお金をキッチリ回収できます。
このように、書類に執行力を付与することができるのが、公正証書作成のメリット②。
③相手に契約を履行させる心理的圧力をかけられる
公正証書を作成するメリットその③は『契約の相手方に契約を履行させる心理的圧力ををかけられる』です。
公正証書を作成するためには、当事者二人が公証役場へ直接出向き、公証人の面前で具体的な契約内容を確認します。
その際、お金を貸し借りしたのであればその契約書(金銭消費貸借契約書)や、本人確認資料を公証人に提供するなど、厳格な手続きのもとで進められます。
このとき債務者(お金を借りた人)は、もし約束の期日までに返済できなければ『訴訟を経ずに自分の財産を差押えられる』とあらためて確認することになりますので、結果として間接的に履行を働きかける作用があります。
④契約書を紛失するリスクがない
例えば、せっかく法的に問題のない遺言書を作成していたとしても、死後、相続人がそれを発見できなければ意味がありません。
しかし遺言書を公正証書で作成しておけば、原本は公証役場で保管されますので、絶対に紛失することがありません。(※ただし保存機関は20年)
公的な場で保管されますから、内容を書き換えられたりする心配もありません。
当事者の2人(ここではお金を貸した人と借りた人)には正本・謄本(控え)が交付されますが、万が一、これを紛失しても公証役場で再交付してもらえます。
このように、紛失や盗難、改ざんのリスクがないこともメリットの1つです。
まとめ
今回は、公正証書とは何か?契約書との違いや公正証書を作成するメリット、について解説しました。
このように公正証書を作成すると多くのメリットがありますので、借地権の設定契約や金銭消費貸借契約など、重要な書類ほど公正証書で作成しておくことをお勧めします。
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