カブクスタイルの『偽装請負炎上事件』から業務委託契約書のリーガルチェックの重要性を考える

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なにやらSNSで、某会社が炎上しています。

事の発端は2023年5月。テレビ東京系列番組『カンブリア宮殿』で紹介された『カブクスタイル』という会社の社長の発言が、偽装請負に該当するのではないか?と臭わせているのです。

今回は、業務委託契約書からみる『偽装請負の危険性』と『リーガルチェックの重要性』について解説します。

目次

従業員は業務委託契約では雇用できない

カブクスタイルの社長の発言
炎上したカブクスタイルの社長の発言

実は私もこの放送を翌日に観たのですが、直ぐに違和感を覚えました。

司会者村上龍の質問
「従業員の7割が『業務委託契約』というのはどういう理由からですか?」

そもそも業務委託契約では、契約の相手方は従業員ではありません。ここが問題なのです。

代表者は業務委託先の人を『従業員』と呼んでいますが、従業員であれば自社で直接雇用しなければなりません。

それにも関わらず『業務委託契約』という雇用形態をとっているのであれば、これは偽装請負に該当する可能性があります。

偽装請負は何が問題なのか

仮にカブクスタイルの業務委託契約が偽装請負に該当した場合、何が問題となるのかについて解説します。

労働基準法に抵触

仮に業務受託者の受託内容や指示が、常に会社の指揮命令下におかれ、勤務時間、勤務日数等が直接雇用の社員と同様の働き方を強いられているのであれば、これは実質的に直接雇用の労働者とみなされますから、業務受託者には労働基準法が適用となります。

よって、受託者の勤務時間は『労働時間』としてカウントされなければなりません。

判例では、使用者の指揮命令下にある時間のことを「指揮命令下説」と呼んでます。

「使用者の指揮命令下」とは、会社が業務命令を出しているかを表す基準
つまり「会社の業務命令で行動している」時間帯は労働時間に該当。 命令には、明示的な命令だけでなく、黙示(暗黙のうちに出された指示)の命令も含まれる。

したがって業務委託契約の受託者が、常に会社の指揮命令下で働かされているのであれば(勤務時間が使用者の管理下におかれていれば)、彼ら彼女らは業務受託者ではなく『社員』として扱われ、社員の勤務時間は労働時間とみなされるべきなのです。

当然、社員が時間外労働をした場合、使用者は法定で定められた残業代を支払う義務を負います。

また社員が指揮命令下におかれているなかで怪我をした場合は、使用者は災害補償責任(労働基準法75条以下)を負います。

労働基準法とは別に、労働者災害補償保険法においても、勤務中はもちろん、通勤中に起因する事故や災害による私傷病においても相当の給付を受けることができます。

しかし社員ではなく『業務委託契約』とみなされるのであれば、これら一切の給付を受けることができません。

雇用保険が適用されない

番組のインタビューで代表者はこの様に述べています。

「1年毎に、業務受託者に業務委託の継続を希望するか選択してもらう」

しかし仮に、業務受託者が業務受託契約ではなく正規雇用の身分が適用される場合は、使用者は彼ら彼女らを雇用保険に加入させる義務が生じます。

このとき、雇用保険が適用されなかった場合の業務受託者の最大の弊害として、契約書で合意した範囲であれば契約を打ち切られた場合であっても何の失業補償も受けられないこと。

業務委託ではなく社員に該当すれば、使用者都合による解雇は相当ハードルが高いのですが、業務委託契約であれば契約期間が満了すればそれで契約関係は終了となりますし、契約書において「3ヶ月前までに書面により申し出ることで契約期間の途中であっても契約を解除することができる」との合意があればその通りに契約を解除しても何も問題ないことになります。

つまり、業務の繁閑に合わせて都合良く人を雇用し又は解雇できる点が,業務委託契約の使用者側のメリットと言えます。

受託者の第二の弊害として『失業等給付』そのものを受けることができなくなります。

使用者の一方的な都合により契約を解除された場合は(解雇に該当すれば)、『特定受給資格者』として待機期間の経過後、直ぐに失業手当(正式には基本手当)を受給できますし、そうではなく自己都合で契約延長を望まなかった場合であっても、雇用保険が適用されれば『自己都合による退職扱い』となるので、要件を満たしていれば適切な失業手当を受ける資格を有します。

その他にも雇用保険法で定められた失業等給付は多数あるのですが、これら一切の給付を受ける権利を有しないことになります。

適切な社会保険が適用されない

仮にカブクスタイルの業務受託者が社員に該当するのであれば、使用者は彼ら彼女らを適切な社会保険に加入させる義務があります。

社会保険とは、健康保険や介護保険、厚生年金保険のこと。

社会保険が適用されるのであれば、使用者は保険料の半分を負担する義務を負います。

しかし『あくまでも業務委託契約だ』と扱われるのであれば、彼ら彼女らには一切の労働社会保険制度が適用されず、業務受託者は1号被保険者として扱われ、国民年金保険料や国民健康保険料は全額自己負担、毎月高額な保険料を負担する義務を負います。

業務委託契約書のチェックの重要性

社員を直接雇用するのではなく「業務委託契約」を採用すれば、仕事の発注者は、労働社会保険料の支払いを免れることができます。

しかし仕事の発注内容や業務委託契約書の合意内容から、社員を雇用しているのと同視できる雇用関係が認められれば業務委託契約とはみなされません。

この場合、業務受託者は社員として扱われるべきであり、使用者は適切な労働社会保険に加入させる義務を負います。

仕事の発注者は、偽装請負と悪意で(悪いことと知りながら)業務委託契約を締結することは論外ですが、善意で(それを悪いことと知らず)偽装請負と疑われるような業務委託契約書を作成・締結することのないよう注意しなければなりません。

一方で、仕事の受託者は発注者から請負う仕事内容や報告義務、指揮命令体制から、実質的に雇用関係と同視できるような環境におかれていないかなど、受託内容に違和感を覚える点がないか注意しなければなりません。

適正な業務委託契約関係を成立させるためには、『正しい業務委託契約書』を用いて契約を締結することが大前提となります。

ここでの『正しい』とは、契約内容が偽装請負に抵触していないかといった点はもちろん、信義誠実の原則に従い、民法商法その他の関係諸法令に則り違法性を帯びていない契約書面を指します。

仕事の発注者は『正しい業務委託契約』を作成し、受注者は、発注者から提示された業務委託契約書に漫然と署名するのではなく、自社(自己)に不利な条項が記載されていないか、などを詳しくチェック(リーガルチェック)する意識が必要です。

業務委託契約書の作成はおまかせください

今回は、カブクスタイルの偽装請負疑惑事件を例に挙げ、業務委託契約書からみる『偽装請負の危険性』と『リーガルチェックの重要性』について解説してきました。

業務委託契約の両当事者は『正しい業務委託契約書』の作成が契約の大前提である点をおさえておきましょう。

弊所は業務委託契約書の作成やリーガルチェックを得意としております。

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