ある企業の飲食店事業だけを買収しようと思うんだ。
相手から提示された事業譲渡契約書をチェックしているんだけど「表明保証条項」って多すぎじゃない?
目を通すだけで疲れるよね。
分かります。
でも契約の性質上、譲渡側の表明保証項目が増えるのは仕方がないんでよね。
ニャるほどね。
それじゃ、重要なポイントだけ絞って解説してくれるかな?
分かりました。
それでは今回は、事業譲渡契約書の表明保証条項で重要なポイントを、買収側の目線で13個解説します。
なぜ表明保証条項が重要なのか?
事業譲渡契約書において表明保証条項は、買収側であるあなたを守る重要な盾となります。
この条項をしっかりと定めることで、思わぬリスクを回避し、スムーズな事業承継を実現できます。
このとき適切な表明保証条項がないと、買収後に予期せぬ問題が発覚し、多大な損失を被る可能性があります。
それでは、押さえるべき13のポイントについて、詳しく見ていきましょう。
表明保証条項の重要ポイント13個
1. 財務情報の正確性
財務情報の正確性が重要な理由
財務情報は事業価値を判断する上で最も重要な要素の一つです。
不正確な財務情報に基づいて買収を行うと、事業の実態と異なる価値評価を行ってしまい、過大な買収価格を支払うリスクがあります。
また、簿外債務や粉飾決算などが後から発覚すると、買収後の事業計画に大きな狂いが生じる可能性があります。
チェックポイント
- 財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計基準に従って作成されていること
- 重要な会計方針が適切に開示されていること
- 簿外債務や簿外資産が存在しないこと
- 売上や利益の水増しなどの粉飾決算がないこと
譲渡人は、本契約書の別紙に記載された財務諸表が、一般に公正妥当と認められる会計基準に従って作成され、対象事業の財政状態及び経営成績を適正に表示していることを表明し、保証する。
また、譲渡人は、当該財務諸表に記載されていない重要な債務、偶発債務、簿外資産が存在しないことを表明し、保証する。
2.法令遵守
法令遵守が重要な理由
対象事業が法令を遵守して運営されていることは、買収後のリスク管理の観点から非常に重要です。
法令違反があると、罰金や事業停止などのペナルティを受ける可能性があり、事業の継続性や収益性に大きな影響を与える可能性があります。
また、コンプライアンス上の問題は企業の評判にも悪影響を及ぼし、顧客や取引先との関係にも支障をきたす可能性があります。
チェックポイント
- 関連する全ての法令・規制を遵守していること
- 必要な許認可を取得し、それらが有効であること
- 過去に重大な法令違反がないこと
- コンプライアンス体制が整備されていること
譲渡人は、対象事業が全ての適用法令を遵守して運営されており、過去5年間に重大な法令違反がないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、対象事業の運営に必要な全ての許認可を適法に取得し、それらが全て有効であることを表明し、保証する。
3.資産の状況
資産の状況が重要な理由
譲渡対象となる資産は、買収後の事業運営の基盤となります。
資産の所有権や使用権が適切に確保されていない場合、事業の継続に支障をきたす可能性があります。
また、資産に担保権等が設定されている場合、その処分や活用に制限がかかる可能性があります。
さらに、資産の管理・維持状況が悪い場合、買収後に多額の修繕費用や更新費用が必要になるリスクがあります。
チェックポイント
- 全ての重要な資産が適切に管理・維持されていること
- 資産に対する所有権や使用権が適切に確保されていること
- 資産に担保権等の制限がないこと(ある場合は、その内容が明確に開示されていること)
- リース資産がある場合、そのリース契約の内容と継続可能性を確認する
譲渡人は、別紙に記載された全ての資産について、有効な所有権または使用権を有しており、それらの資産に担保権その他の制限が設定されていないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、全ての重要な資産が適切に管理・維持されており、通常の使用に耐える状態にあることを表明し、保証する。
4.知的財産権
知的財産権が重要な理由
多くの事業において、知的財産権は競争優位性の源泉となります。
対象事業の知的財産権が適切に保護されていない場合、買収後に競合他社に模倣されるリスクがあります。
また、第三者の知的財産権を侵害している場合、買収後に訴訟リスクや多額のライセンス料支払いのリスクが生じる可能性があります。
チェックポイント
- 事業に必要な全ての知的財産権が適切に保護されていること
- 第三者の知的財産権を侵害していないこと
- ライセンス契約がある場合、その内容と継続可能性
- 従業員や取引先との間で適切な秘密保持契約が締結されていること
譲渡人は、対象事業に関連する全ての知的財産権を適切に保有または使用する権利を有しており、それらが第三者の権利を侵害していないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、対象事業に関連する全ての重要な従業員及び取引先との間で、適切な秘密保持契約を締結していることを表明し、保証する。
5.訴訟リスク
訴訟リスクが重要な理由
潜在的な訴訟リスクは、買収後に大きな問題となる可能性があります。
訴訟が発生すると、多額の賠償金支払いのリスクだけでなく、経営資源の浪費や企業イメージの低下など、事業に様々な悪影響を及ぼす可能性があるからです。
チェックポイント
- 現在係争中の訴訟の有無とその内容
- 将来的に訴訟となる可能性のある紛争の有無
- 過去の訴訟歴とその解決状況
譲渡人は、対象事業に関して現在係争中の訴訟がなく、また将来的に重大な訴訟リスクがないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、過去5年間に対象事業に関して重大な訴訟が提起されたことがないことを表明し、保証する。
6.デューデリジェンス情報
デューデリジェンス情報が重要な理由
売り手から提供された情報の正確性は、買収する側にとっては判断の基礎となります。
不正確または不完全な情報に基づいて買収を行うと、事業の実態と異なる判断をしてしまい、買収後に様々な問題に直面する可能性があります。
チェックポイント
- 提供された全ての情報が正確かつ完全であること
- 重要な情報が隠蔽されていないこと
- 情報の基準日以降に重大な変更がないこと
譲渡人は、買収者に提供した全ての情報が、重要な点において正確かつ完全であり、誤解を招くような記載がないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、当該情報の基準日以降、対象事業に重大な悪影響を及ぼす事由が発生していないことを表明し、保証する。
7.偶発債務
偶発債務が重要な理由
買収後に簿外債務や偶発債務が発覚すると、買収価格の妥当性が損なわれるだけでなく、買収後の事業計画や資金計画に大きな狂いが生じます。
チェックポイント
- 簿外債務の有無とその内容
- 保証債務や偶発債務の有無とその内容
- 将来的に発生する可能性のある債務(例:製品保証、退職金など)
譲渡人は、財務諸表に記載されているもの以外に、対象事業に関する重大な債務や偶発債務が存在しないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、対象事業に関して、通常の事業活動の範囲を超える保証債務を負っていないことを表明し、保証する。
8.環境関連法令の遵守
環境関連法令の遵守が重要な理由
『環境関連法令違反』と聞いてもピンときませんよね?ここでは工場などの施設を保有する企業のM&Aといえばイメージが湧きやすいでしょう。
例えば、土壌汚染などの環境問題が後から発覚すると、多額の浄化費用が必要になるリスクがあります。
また多額の罰金や操業停止違反を命じられるリスクがあります。
チェックポイント
- 環境関連法令の遵守状況
- 過去の環境問題とその解決状況
- 土壌汚染等の環境リスクの有無
- 必要な環境許認可の取得状況
譲渡人は、対象事業が全ての環境関連法令を遵守しており、重大な環境リスクが存在しないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、対象事業に関連する不動産に土壌汚染等の環境問題が存在しないことを表明し、保証する。
9.重要な契約の継続性
重要な契約の継続性が重要な理由
主要な取引先や顧客との契約は、事業の継続性に直結します。
これらの契約が買収後に継続できない場合、事業の収益性や成長性に大きな影響を与える可能性があります。
また、契約の譲渡禁止条項などにより、買収後に重要な契約が終了するリスクもあります。
チェックポイント
- 重要な取引先・顧客との契約内容
- 契約の譲渡可能性(譲渡禁止条項の有無)
- 契約期間と更新の可能性
- 契約解除のリスク
譲渡人は、別紙に記載された全ての重要な契約が有効に存続しており、本件譲渡によってそれらの契約が終了または変更されないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、当該契約に関して、相手方から解除の通知または解除の意思表示を受けていないことを表明し、保証する。
10.従業員関連事項
従業員関連事項が重要な理由
従業員は事業の重要な資産です。
労務問題は事業継続の大きな障害となる可能性があります。
未払い賃金や労働法違反などの問題が後から発覚すると、多額の追加コストや法的リスクが生じる可能性があります。
また、キーマンとなる人材の流出は事業の競争力低下につながる可能性があります。
チェックポイント
- 労働関連法令の遵守状況
- 未払い賃金や未消化有給休暇の有無
- 労働組合との関係
- 重要な従業員の継続勤務の見込み
譲渡人は、対象事業に関して全ての労働関連法令を遵守しており、重大な労務問題や未払い債務が存在しないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、対象事業の従業員との間に、本件譲渡を理由とする労働争議が生じる可能性が低いことを表明し、保証する。
11.情報システムの健全性
情報システムの健全性が重要な理由
現代のビジネスにおいて、ITシステムは不可欠です。
システムの不具合や障害は業務の停滞を招き、大きな損失につながる可能性があります。
また、サイバーセキュリティ対策が不十分だと情報漏洩などのリスクが高まります。
さらに、ライセンス違反があると、多額の追加費用が発生する可能性があります。
チェックポイント
- 重要なITシステムの安定性と信頼性
- データのバックアップ体制
- サイバーセキュリティ対策の状況
- ソフトウェアライセンスの適切な取得
譲渡人は、対象事業に必要な全てのITシステムが適切に機能しており、必要なセキュリティ対策が講じられていることを表明し、保証する。
また、譲渡人は、対象事業で使用される全てのソフトウェアについて、適切なライセンスを保有していることを表明し、保証する。
12.許認可の有効性
許認可の有効性が重要な理由
事業運営に必要な許認可が有効であることは、事業継続の前提条件です。
必要な許認可が無効になると、事業の一時停止や許認可の再取得のための多大なコストが発生する可能性があります。
また、許認可に付された条件を遵守していないと、許認可の取り消しリスクが生じます。
最も注意したいポイントは、許認可は、買収側企業がM&Aにより許可を再取得しなければならないことが多いということ。
実行日(クロージング日)から逆算して行政手続きを進めておくか、実行日以降、許可を再取得できるまで譲渡側起業の許認可を用いて営業を継続できるようにするなどの対策が必要です。
チェックポイント
- 必要な全ての許認可の取得状況
- 許認可の有効期限と更新の見通し
- 許認可に付された条件の遵守状況
- 許認可の譲渡可能性
譲渡人は、対象事業の運営に必要な全ての許認可を適切に取得しており、それらが全て有効であることを表明し、保証する。
また、譲渡人は、当該許認可の更新に支障をきたす事由が存在しないことを表明し、保証する。
13.税務関連事項
税務関連事項が重要な理由
税務リスクは、買収後に大きな負担となる可能性があります。
過去の税金の未払いや不適切な税務処理が後から発覚すると、追徴課税や加算税などの多額の追加コストが発生する可能性があります。
また、税務上の繰越欠損金などの資産が予想よりも少ない場合、買収価格の妥当性が損なわれる可能性があります。
チェックポイント
- 適切な納税がなされていること
- 税務調査の状況と結果
- 繰越欠損金等の税務上の資産の状況
- 移転価格税制等の国際税務リスク
譲渡人は、対象事業に関して全ての税金を適時かつ適切に納付しており、重大な税務リスクが存在しないことを表明し、保証する。
また、譲渡人は、過去5年間に対象事業に関して税務当局から重大な指摘を受けていないことを表明し、保証する。
まとめ
今回は、事業譲渡契約書の表明保証条項で重要なポイントを、買収側の目線で13個解説しました。
これらのポイントを押さえた表明保証条項を設けることで、事業譲渡のリスクを抑えることができます。
また、表明保証条項は、単に契約書に記載するだけでなく、デューデリジェンスの過程で十分に確認することが重要です。
売り手の表明保証を信頼するだけでなく、可能な限り独自に調査・確認することで、より確実にリスクを把握し、対策を講じることができます。
今回解説した表明保証条項をしっかりと理解し、契約書に盛り込んでください。
あなたの事業買収が、安全かつスムーズに実行されることを願っております。
今回ご紹介した条項例は、あくまでも事業譲渡契約における一般的な表明保証条文であり、個別の事情に対応するものではありません。
本条項例を用いたことにより、損害を被った場合でも弊所は一切責任を負いません。
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