chat GPT4o登場。契約書の作成・レビュー業務を無料のAIに任せるリスクと対応を解説

2024年5月、open AIがchat GPT4oを発表、その新機能が世界中を震撼させています。

新機能の特徴は他のサイトに委ねるとして、今回は行政書士の立場から、AI契約書の実力、AI契約書のリスク、契約業務におけるAIの活用方法について解説します。

契約書の作成・レビューでAIを活用するメリット

近年、AI技術は目覚ましい進化を遂げており、契約書の作成・レビューにおいてもその活用が注目されています。

契約書の作成・レビューでAIを活用するメリットは大きく５つあります。

業務の効率化

• 膨大な量の契約書データを高速で処理できるので、人の手によるレビューに比べて、数倍から数十倍のスピードで処理が可能
• 新規で契約書を作成する際も、自動生成機能によりあっという間に契約書の雛形が完成

精度向上・リスク低減

• 過去の契約書のデータや過去の判例を学習し、これらに基づき適正なレビューが可能
• 抜け漏れや不備、矛盾などを効率的に検出し、法的リスクを低減
• 契約書全体の構成や文言の改善提案を行ってくれる

コスト削減

• 弁護士にリーガルチェックを依頼すると10万円を超えることはよくあります。しかしAIであれば無料または月額サービス料の範囲で何回でも利用することが可能
• 作業スピードを大幅に短縮できるので、残業代や人件費を削減できる

客観性・公平性

• AI契約書は、人間による主観や感情が介入しないため客観的なレビューが可能
• 過去の経験や担当者の偏見や癖が入り込む余地がないため、公平かつ中立的なレビューが可能

データ蓄積・分析できる

• 過去の契約書データを分析・学習させ、自社の契約書の傾向や課題を把握できる
• 契約書作成・レビューのノウハウを蓄積し、今後の契約交渉に活かすことができる

AI契約書のリスク

契約書の作成・レビューでAIを活用するリスク、それはAIは不完全であること。

法律は頻繁に改正され、判例も常に置き換わります。

AIが作った雛形が常に最新の情報にアップデートされているとは限らないので、古い情報に基づいて雛形を使用すると、法的な問題が発生する可能性があります。

また前述の通りAIは公正、中立的な立場で契約書を作成・レビューしてくれますが、言い換えると甲乙どちらの立場にも寄り添っていないとも言えます。

通常、行政書士や弁護士が依頼者から契約書の作成・リーガルチェックを頼まれると、極力依頼者側有利になるように条項を追加・削除します。

しかし本記事執筆時点で依頼者側有利になるような機能を実装したAIはありません。(今後、当機能を実装したAIが可能性は大いにあり)

AIで事業譲渡契約書を作ってみた

現在、契約書の作成・レビューにおいて様々なAIソフトが発表されていますが、無料で使えるものの実力はどんなものか？ということで、実際にAI『gemini』で事業譲渡契約書の雛形を作ってもらいました。

その結果、完成した雛形が以下の通り。

事業譲渡契約書雛形(geminiで作成)

第1条（譲渡）
甲は、乙に対し、別紙「譲渡対象物件目録」に記載の事業（以下「本事業」という。）を譲渡するものとし、乙はこれを承諾するものとする。

第2条（譲渡価額）
本事業の譲渡価額は、金○○円（消費税別）とする。

第3条（譲渡代金の支払）
譲渡代金は、本契約締結の日から○日以内に、乙が甲の指定する口座に振り込むものとする。

第4条（譲渡期日）
本事業の譲渡期日は、本契約締結の日とする。

第5条（従業員の承継）
甲は、本事業の譲渡に伴い、別紙「従業員名簿」に記載の従業員を乙に転籍させるものとする。乙は、これら従業員を従前の労働条件で雇用することを承諾するものとする。

第6条（債権債務の承継）

甲は、本事業に係る一切の債権債務を乙に承継させるものとする。乙は、これら債権債務を承継することを承諾するものとする。

第7条（知的財産権）

甲は、本事業に係る一切の知的財産権を乙に譲渡するものとする。乙は、これら知的財産権を譲り受けることを承諾するものとする。

第8条（秘密保持）
甲乙双方は、本契約締結にあたり知り得た秘密情報を、本契約に基づき必要となる範囲を超えて第三者に開示してはならない。

第9条（管轄裁判所）
本契約に関わる一切の紛争は、東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。

第10条（その他）
本契約に定めのない事項及びこの契約に基づき生じた疑義は、甲乙協議の上解決するものとする。

以上

別紙

• 譲渡対象物件目録
• 従業員名簿

行政書士の立場から見て、この事業譲渡契約書の完成度は超お粗末です。

実際にこの契約書を用いた場合、トラブルが多発する未来しか見えません。

それくらい内容がスカスカ。

有料のAI契約書ソフトであれば、これよりも完成度の高いものが出来上がるとは思いますが、無料AIの実力はこの程度(超危険)ということを認識しておいてください。

AI契約書を上手に使おう

AI契約書は上手く活用できれば、業務効率化と経費削減が可能です。

しかし全てをAIに丸投げしてしまうと、前述の通りその品質が劣悪すぎるため超危険です。

AIが作った雛形はあくまで参考として捉え、最終的には行政書士や弁護士などの専門家によるチェックをするなど、場面に応じて上手く使い分けましょう。

また、AI契約書を提供するサービスは数多くあるので、「どれを選べばわからない」こともあると思います。

この様な場合は、下記のポイントに気をつけながら選ぶと良いでしょう。

• 無料トライアルがあるか
  多くのAI契約書ツールは無料トライアルを提供していますので、本申込の前に無料で各社のソフトを試してみましょう。その際、契約書の作成・レビューの精度の高さはもちろん、操作性についても確認しておきます。
• 利用頻度に合わせたプランを選ぶ
  利用頻度が少ない場合は、月額課金制ではコストがかかってしまう場合があります。
  この場合は、月額制ではなく従量課金プランも検討しましょう。

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