業務委託契約(請負・製造委託)で取引基本契約書とは別に取引個別契約書を作るケースがあるけど、どんな違いがあるのかな?
取引基本契約書は当事者同士で何度も繰り返し行われる取引きでの共通の約束事を定め、取引個別契約は取引基本契約に優先される事項を定めます。
今回はこれらの違いと、実際に契約書を交わすときに気を付けるポイントについて解説します。
・取引基本契約と取引個別契約の違い
・取引基本契約書と取引個別契約書を交わすときの注意点
・個別契約が成立する条件
取引基本契約と取引個別契約の関係
取引基本契約書とは
取引基本契約書とは、契約の当事者間で反復継続して行われる「取引の基本的な内容」を定めた契約書のことを指します。
例えば、ある機械を製造する町工場のA社が、機械製造に必要な特定の部品をいつもB社へ発注しているとします。その取引が月に何度も行われる場合は、その都度契約書を作り取り交わしていると時間ばかりかかってしまいます。
そこで、B社との部品発注の取引で共通する事項を取引基本契約で定めておき、細かい発注点数や納期などは取引個別契約で定めるようにすれば、受発注や納品、そして入金までの流れがスムーズになります。
- 契約の趣旨や目的
- 契約の当事者
- 製品の納入方法
- 製品の納入場所
- 代金の支払方法と支払期日
- 契約期間
- 解除や損害賠償についての定め
このように、ベースとなる規定は取引基本契約書で定めておいて、細かい仕様などについては取引個別契約書で別に定めるようにしておけば、契約を安定的かつ効率的に進めることができるのです。
取引個別契約書とは
個別契約とは、個々の取引に際して締結される契約のことを指します。 個別契約では、 個別の取引について具体的な内容を定めます 。
・発注点数
・単価
・納期、など
このように、取引ごとに数量など内容が異なる場合の事項を定めた契約書です。
なお必ずしも『取引個別契約書』という名称を用いる必要はありません。業種・業界によっては、「発注書」「請書」といった契約名称もあります。
タイトルはなく、その内容が重要です。
個別契約が基本契約に優先して適用される
個別契約に、基本契約と異なる内容や条件が定められた場合は、基本契約の後に成立した個別契約が優先されます。
その理由は個別契約を優先させないと、個別契約で基本契約の特例を定める意味がなくなるからです。
したがって、契約書には「個別契約が基本契約に優先されること」を明記する必要があります。
わざわざ契約書に明記しなくとも、個別契約が優先されるのが原則と考えられていますが、無駄なトラブルを避けるためにもあえて明記しておくことをお勧めします。
第○条(基本契約)
本契約に定める事項は、本契約の有効期間中、甲(売主)乙(買主)間で締結される個別の製造委託契約(以下「個別契約」という。)に対して共通に適用される。ただし、個別契約の内容と本契約の内容とが相違する場合は個別契約を優先する。
個別契約が成立する条件
第○条(個別契約の成立)
個別契約は、乙(買主)が甲(売主)に対して発注書を交付することで成立する。
基本契約の後に締結される個別契約について、どのような場合に個別契約が成立するのか、その成立要件について契約書面で定めておくことが重要です。
個別契約の成立条件を明確に定める
取引個別契約を作成・審査する際は、個別契約の成立条件を明確に定めることが重要です。
具体例には、取引基本契約書において「買主からの申込みの対して売主の書面等(FAXやメール)による承諾の意思表示を伝えた時点で個別契約が成立する」と明記します。
(例)上記内容にてご注文を承りましたので、これより製作に入ります。
成立条件を明記しておかないと、商法509条1項及び2項 (商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合に、遅滞なく諾否の通知を発しなかった場合は当該申込みを承諾したものとみなす) が適用され、承諾通知を発しなくても申込みを承諾したものとみなされてしまうからです。売主はこの点には十分注意しましょう。
例えば、買主が発注書・注文書をFAXしたが、担当部署と異なる部署に送ってしまい、売主がいつまで経っても受注に気が付かない場合もあります。この様なケースであっても売主は債務不履行責任を負わなければならないので、売主としては予想外の不利益を被ることになります。
また、買主が発注する製品の仕様(内容、数量、納期等)によっては、売主が注文を断るケースもあるでしょう。
この様な事態に備えて売主は、売主からの承諾書面(注文請書など)をFAXやメールで返信することで個別契約が成立する、という内容に修正しておきたいところです。
これに対し買主も、注文書をFAXやメールを送信しただけでは注文内容が売主に届いているかどうかを確認できませんので、売主から注文請書等の交付を受けてその意思表示を確認したいところです。
しかしながら、 注文請書等の交付を個別契約の成立要件とすると、売主が注文請書等の交付が遅れたことにより、個別契約の成立自体が遅れてしまう危険性もあります。 そこで買主としては 「注文書の交付から○日以内に売主から受注拒否のFAXやメールの返信がない限り個別契約は成立する」 という条項を追加することも可能です。
個別契約書は規定の書面を用いる
個別契約書では、一般的に品名、数量、価格、荷姿、引渡時期、納入方法、引渡場所、支払時期等を明記します。
これらを記載する注文書の書式が担当者ごとに異なると、誤発注につながるなど注文書の記載内容の解釈をめぐってトラブルに発展する可能性もあります。
したがって、個別契約書の書式は必ず当事者間で定めておき、この「所定の」注文書を用いることを注文書に明記しておきましょう。
発注書の中でも特に重要事項である、品名、数量、価格、荷姿、引渡時期、納入方法、引渡場所、支払時期は必要記載事項とし、これらが空欄の場合は受発注が成立しないとする対策も有効です。
まとめ
今回は、取引基本契約書と取引個別契約書の違いと、実際に契約書を交わすときに気を付けるポイントについて解説しました。
特に個別契約書で「契約が成立する条件」を定めておくことがトラブル防止の観点から重要でした。
とりわけフリーランスの方は、親企業から不利な条件を呑まされるケースも少なくありませんので、業務委託契約書(請負契約・準委任契約)を締結する際は、自己に不利な条件が記載されていないか?といった点に注意しながら契約を締結するようにしましょう。
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