「及び並びに・又は若しくは」なんとなく使っていない?契約書で間違いやすい法律用語『33個』を解説

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目次

契約書には『品位』が必要

契約書面には作成者の文章リテラシーが素直に表れます。

例えば、あなたが仕事の受注者側として、発注者へ向けて契約書のドラフトを作成することになったとします。

このとき契約書面で誤字脱字が多いと、あなたの緻密さや正確さが疑われます。

また漢字や送り仮名に誤りがなかったとしても、平仮名を多用していたり文章表現が稚拙であると、契約書全体の品位が欠けて見られます。

【稚拙な条文例】
不具合を発見した場合は、直ぐに報告しなくてはならない。

契約書面において『品位』はとても重要です。

品位の欠けた契約書は取引先から舐められることもあるからです。

取引先から舐められてはビジネスを優位に進めることができません。

だからと言って、なにも難しい法律用語を用いる必要はありません。

これから解説する用語を正しく理解するだけで、最低限『品位』のある契約書面が作成できるようになります。

契約書で間違いやすい法律用語

「又は」と「若しくは」

「又は」と「若しくは」は、どちらも「or」を意味します。

2つあるなら「A又はB」、
3つあるなら「A,B又はC」と表現します。
この場合は、ABグループとCグループで2つのグループに分かれます。

4つ以上繋げたい用語があるときは、小さい連結は「若しくは」を、大きい連結は「又は」を用います。

(例)コーヒー若しくは紅茶又はケーキ若しくはパフェ

この場合は、コーヒと紅茶で1つのグループ、ケーキとパフェで1つのグループに別れます。

ということは、「又は」がないところに「若しくは」が登場することはあり得ません。

「及び」、「若しくは」

「及び」、「若しくは」は、どちらも「and」を意味します。

大きな連結部分には「並びに」を、小さな連結部分には「及び」を用います。

(例)コーヒー及び紅茶並びにケーキ

ということは、「及び」がないところに「並びに」が登場することはあり得ません。

「場合」と「とき」

どちらも『仮定条件』を持ち出す場合に使います。

この仮定条件が連続する場合は、「◯◯の場合において、△△するときは」と表現します。

「とき」と「時」

「とき」は仮定条件=仮定・条件・状況・場面などを示す場合に、「時」は主に時間、時刻、時期を示す際に使います。

「Aが特定物をBに引き渡した時に所有権が移転が移転するものとする」
「不法行為の時から20年間行使しないとき

「直ちに」、「速やかに」、「遅滞なく」

緊急性の高い順に、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」となります。

「直ちに」は、大至急◯◯しなさい、というニュアンス、

「速やかに」は、切迫しているものの「直ちに」ほどは差し迫っていない状態、

「遅滞なく」は、タイミングを失わなければというニュアンスで、合理的な理由があれば多少遅れてもかまわない。

実際の契約書面においては、相手に履行を促す場合には「直ちに」、自分の義務の履行は「速やかに」とすることが基本となります。

「その他」と「その他の」

「その他」は、前後の事柄が並列関係にある場合に使われ、

「その他」は前の事柄が後ろの事柄の例示である場合に使われます。

(例)
「ユキマサくんその他社員」という場合は、「ユキマサくん」と「その他社員」は別個の概念(並列的例示)。
※「ユキマサくん」は「社員」ではないかもしれない。

「ユキマサくんその他社員」という場合は、「ユキマサくん」は「その他の社員」に含まれる(包括的例示)。
※「ユキマサくん」は社員の一員であることは間違いない。

「前項の場合」、「前項に規定する場合」

「前項の場合」は、前項の内容全体を受けています。

「前項に規定する場合」は、受けているのは前項のうち「~の場合」など仮定的な条件の部分だけを示す部分(◯◯したといは)を受けます。

(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)
第8条 契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
 2 前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
 3  前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から三月を経過することによって消滅する。

第2項の「前項に規定する場合」は、第1項の「契約の更新の後に建物の滅失があった場合」のみを受けています。

これに対して、第3項の「前二項の場合」は、第1項及び第2項の全体を受けています。

「以下、『◯◯』という。」

条文中で個別に用語を定義するときに用いられます。

この語句を用いるときの注意点として、一度用いた場合は以後、用語を統一する必要があります。

例えば、「以下、『本契約』という。」と定めた場合は、それ以後は『本契約』とならないよう、一度用いた定義規定にブレが生じないように気を付けましょう。

ただし書

「ただし書」が正解。

「ただし書き」「但し書き」「但し書」

「◯◯するものとする」「◯◯しなければならない」

「しなければならない」は義務規程。

「するものとする」は、「しなければならない」よりもニュアンス和らげる場合に使います

 「しなければならない」という義務づけの意味が無いわけではないのですが、これと全同義語として使用されていることもあります。

一般的には、断定せずに若干の含みをもたせながらも、原則や方針を指し示したい場合に用いられます。

「科する」「課する」

科する」は、刑事罰(罰金・科料などを負わせる)ときに使います。

「制裁・懲役・罰則・ペナルティーを科する」など。

一方、「課する」は、「税金・分担金などを負担させる」場合に用います。

「制限・責任・追徴金を課する」など。

「現状」「原状」

「現状」は、現在におけるそのままの状態を、
「原状」は、もともとあった状態を意味します。

賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。

「推定する」「みなす」

推定する」は、当事者間に別段の取り決めがない場合や、法律ではっきりしない事実を反対の証拠が出てくるまでは真実のものと認めておくこと。
ある事柄について法令が一応こうであろうという判断を下すこと、を指します。

みなす」は,本来異なるものを,法令上一定の法律関係につき同一のものとして認定してしまうことを指します。
例外や反証は認められません。
例えば「手付金とみなす」とされたら、手付金以外の選択の余地はないということです。

「もの」「者」「物」

「もの」は抽象的なものを、
「者」は自然人や法人を、
「物」は、それ以外の有体物等に用います。

「通知する」「通知を発する」

例えば、ある契約を解除したい場合、民法では解除通知の意思表示を「到達主義」を原則としていますので、「通知する」だけでは解除の効果は生じません。

到達主義
遠隔地にいる人に対して意思表示をしたい場合、その意思表示を相手方が知ることのできる状態に達した時から効力が生じる、とされる考え方。
手紙であれば、手紙が相手方に配達された時が到達したこといになる。

一方「通知を発する」は『発信主義』。
通知を発信した時にその効力が生じます。
内容証明郵便などの配達証明は不要です。

「規定」「規程」

規定(キサダ)は「規程と規則」の中に分類され、事務処理の内容や手順などを定めた個々の条項を意味します。
(例)社内規定

規程(キホド)は、ある目的のために規定をまとめたもの。
(例)取締役会規程

「削る」「削除」

「削る」は、条項そのものを完全に消滅させること。これにより、元々あった後ろの条項の番号は繰り上がります。

(例)「第2条を削り、第3条を第2条とする」

 「削除」は、本文はなくなるが、条項そのものは残ります。

例えば商法では、第32条から第500上は削除されているので、次は第501条として残っています。

まとめ

今回は、契約書面で間違いやすい法律用語『33個』を解説しました。

冒頭でお伝えしましたように、契約書面では『品位』が問われます。
品位の欠けた契約書をファーストドラフトで提出しては、取引先から舐められることもあります。

自社のビジネスを優位に展開するためにも、今回解説した33個の用語は最低限抑えておきましょう。

※契約審査を自社有利に進めたい場合は、ファーストドラフト(先制攻撃)をお勧めしています。
その理由については下記の記事をご覧ください。

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