他社の社員研修のテーマや構成をパクるのは著作権の侵害?著作権に配慮しながら社員研修を自社開発する方法を解説

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ユキマサくん

先日受講した外部研修、クイズ形式の講義やグループワークが充実してて凄く良かったよ。
この研修テーマや構成をそのまま自社に取り入れるのは著作権の侵害にあたるのかな?

純さん

ありふれたテーマを取り入れるのは問題ありません。
また研修の構成(スタイル)も著作物ではないので著作権侵害にはあたらないでしょう。

ユキマサくん

それなら安心だね。
さっそく社内研修の実施に向けて、構成を考えよう。

純さん

ちょっと待ってください。
それでもいくつか抑えておくべき注意点はありますよ。
今回は社員研修の担当者向けに、著作権に配慮しながら研修を企画・開発する方法を解説します。

効果的な研修プログラムを開発する際、他社の成功例を参考にしたくなるのは自然なことです。

しかし、ここで疑問が生じます。

「他社の研修のテーマや構成(スタイル)をパクるのは、著作権侵害になるのだろうか?」

そこで今回は、研修のテーマや構成の模倣に関して、著作権法の観点から実務的なアドバイスを解説します。

さらに、安全かつ効果的な研修プログラムを開発するためのガイドラインも紹介します。

目次

研修構成と著作権法:基本的な考え方

まず、著作権法の基本的な考え方を押さえておきましょう。

アイデアと表現の区別

著作権法は、アイデアそのものではなく、アイデアの具体的な表現を保護します。

つまり、「効果的な研修を行う」というアイデア自体は保護されませんが、その研修の具体的な内容や資料は保護の対象となる可能性があります。

著作物性の要件

著作権法で保護される著作物となるには、創作性が必要です。

単なる事実やデータの羅列、あるいは誰もが思いつくような一般的な表現は、著作物として認められにくいです。

研修の文脈で言えば、独自の工夫やアプローチが含まれているかどうかが重要になります。

表現・アイデア二分論

表現・アイデア二分論とは、著作権法上、思想、感情それ自体やアイデアは保護されず、創作的な表現のみが保護の対象となることを意味する原則です。

特定のジャンルや状況で一般的に使用される要素は、著作権保護の対象外となることがあります。

研修においても、自己紹介やグループワークなどの一般的な要素は、この原則が適用される可能性が高いです。

これらの原則を踏まえると、研修の全体的な構成やスタイルは、多くの場合「アイデア」の領域に近いと考えられます。

つまり、一般的な研修の構成要素(タイトル、講師の自己紹介、クイズ形式の講義、グループワーク、結果発表など)の組み合わせは、それ自体では著作権侵害にはなりにくいのです。

翻案権と研修構成の関係

次に、著作権法の中でも特に「翻案権」について考えてみましょう。

翻案権とは、著作物を創作的に改変する権利を指します

これは、研修プログラムの開発において特に注意が必要な権利です。

翻案権の定義と範囲

著作権法第27条

著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

翻案権は著作権法第27条に規定されており、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他の方法により創作的に改変する権利を指します。

社員研修の文脈では、他社の研修プログラムを大幅にアレンジして自社用にカスタマイズする場合などが、潜在的に翻案権の問題に関わる可能性があります。

研修構成と翻案権の関係性

研修の構成(スタイル)を参考にすることと、翻案権の関係は以下のように整理できます。

  1. 翻案権の適用範囲
    研修の一般的なテーマや構成、スタイルが「著作物」として認められるかどうかが最初の問題となります。
    多くの場合、一般的な研修テーマや構成は著作物性が認められにくいため、翻案権の問題は生じにくいでしょう。
  2. 創作性の判断
    研修の構成が非常に独創的で創造性が高い場合、それを模倣することは翻案権の侵害となる可能性があります。
    例えば、非常にユニークな研修方法や、独自の理論に基づいた特殊な構成などが該当する可能性があります。
  3. 本質的な特徴の維持
    翻案と認められるためには、原著作物の本質的な特徴を維持している必要があります。
    研修の一般的な流れを参考にする程度では、通常、特定の研修の「本質的な特徴」を維持しているとは言えないでしょう。
  4. 新たな創作性の付加
    研修の構成を参考にしつつ、独自の要素や改変を加えることで、新たな創作性が認められる可能性があります。
    これにより、翻案ではなく新たな著作物の創作と見なされる可能性が高まります。

一般的な研修の構成やスタイルを参考にすることは、通常、翻案権侵害には当たらないと考えられます。
ただし、非常に独創的で特徴的な構成の場合は注意が必要です。

安全な研修開発のための指標や方向性

では、他社の優れた研修を参考にしつつ、安全に自社の研修を開発するにはどうすればよいでしょうか。

以下にお勧めの研修の企画開発方法(指標や方向性)をご紹介します。

構成要素の『一般性』を確認する

参考にしようとしている研修の構成要素が、どの程度一般的なものか?を確認します。

タイトル、自己紹介、講義、グループワーク、発表などの要素は多くの研修で使用されている一般的なものです。

これらの要素を組み合わせて使用することは、通常問題ありません。

例えば、次のような一般的な研修構成は、著作権の観点からは問題になりにくいでしょう。

  1. オープニング(研修の目的説明)
  2. アイスブレイク(参加者の自己紹介)
  3. 講義パート(テーマに関する基本情報の提供)
  4. グループディスカッション(テーマに関する意見交換)
  5. ロールプレイング(学んだスキルの実践)
  6. 全体共有(グループワークの結果発表)
  7. まとめ(学びの振り返りと今後の行動計画)

創作性の程度を評価する

参考にしようとしている研修の全体的構成に、どの程度の創作性があるか?を評価します。

一般的な要素の単なる組み合わせであれば、創作性は低いと判断される可能性が高くなります。

逆に、非常に独創的な構成や進行方法の場合は、注意が必要です。

創作性が高いと判断される可能性がある例
  • 独自の理論やモデルに基づいた特殊な研修構成
  • 革新的なテクノロジーを活用した独自の参加型学習方法
  • 特殊な道具や環境を用いた体験型学習プログラム
  • 独自のゲーミフィケーション手法を取り入れた研修構成,など。

独自性を付加する

他社の研修構成を参考にする場合でも、自社の独自性を付加することが重要です。

以下のような方法で独自性を出すことができます。

  • 構成要素の順序を変更する
  • 新しい要素を追加する
  • 各要素の時間配分を調整する
  • 自社の文化や価値観に合わせてコンテンツをカスタマイズする
  • 独自のケーススタディや演習を開発する
  • 自社の実例や数値データを活用した内容にする
  • 参加者の特性に合わせてアプローチを変更する

具体的な表現をコピーしない

研修の具体的な内容、使用される資料、特定の言い回しなどをそのまま複製することは避けましょう。

これらは著作権侵害となる可能性が高いです。

構成やアプローチを参考にするのは問題ありませんが、具体的な表現は自社オリジナルのものを作成してください。

例えば、以下のような要素は必ず独自に作成しましょう。

  • 講義資料(スライド、ハンドアウトなど)
  • ワークシートやエクササイズの具体的な内容
  • ケーススタディの詳細な記述
  • 研修の進行台本や講師用マニュアル
  • 参加者への指示や説明の具体的な文言

法的リスクを評価する

特に高評価を得ている他社の研修を参考にする場合は、法的リスクを慎重に評価することが重要です。

以下の点に注意してください。

  • 著作権以外の法的問題(商標権、不正競争防止法など)がないか確認する
  • 必要に応じて、法務部門や外部の専門家(行政書士や弁護士)に相談する
  • リスクが高いと判断された場合は、構成を大幅に変更するか、完全にオリジナルの研修を開発することを検討する
  • 可能であれば、参考にしたい研修の開発元から許諾を得ることも検討する(最も安全確実

具体的なケーススタディ(例示)

ここで、具体的なケースを見てみましょう。

これらの例を通じて、実際の状況でどのように判断し、行動すべきかを考えてみます。

ケース1:一般的な研修構成の利用

状況: 他社の研修で使用されている「自己紹介 → クイズ形式の講義 → グループワーク → 結果発表」という構成を自社の研修に取り入れたい。

著作権侵害の該当性:
この構成は非常に一般的で、多くの研修で使用されています。
これらの要素を同じ順序で使用することは、通常、著作権侵害にはなりません。

推奨するアクション:
この基本構成を使用しつつ、各要素の内容や実施方法に自社独自の工夫を加えることで、より安全で効果的な研修を開発できます。

例えば

  • 自己紹介に会社の価値観に関連した質問を加える
  • クイズの内容を自社の事例や数値に基づいたものにする
  • グループワークのテーマを自社の課題に即したものにする
  • 結果発表後に、自社の経営陣からのフィードバックセッションを追加する

ケース2:独創的な研修手法の模倣

状況: 他社が開発した非常にユニークな研修手法(例:特殊な道具を使用した体験型学習や、独自のゲーミフィケーション手法)を自社の研修に取り入れたい。

著作権侵害の該当性:
この場合、研修手法が非常に独創的であれば、著作権(特に翻案権)の問題が生じる可能性があります。

単なる一般的な研修構成とは異なり、独自の創造性が認められる可能性が高いためです。

推奨するアクション:

  • 手法の基本的なアイデアを参考にしつつ、実施方法を大幅に変更する
  • 独自の要素を多く取り入れ、新たな創作性を付加する
  • 必要に応じて、法務部門や外部の専門家に相談する
  • 可能であれば、開発元の企業から許諾を得ることを検討する

例えば、特殊な道具を使用した体験型学習の場合、以下のようなアプローチが考えられます:

  • 異なる種類の道具を使用し、類似の学習効果を得られるようにする
  • 体験型学習の目的や学習ポイントを自社の課題に合わせて再設計する
  • 独自の振り返りセッションやフォローアップ活動を追加する
  • 自社の文化や価値観を反映させた新しい要素を組み込む

ケース3:研修資料の活用

状況: 他社の研修で使用されている配布資料や演習シートの構成が非常に効果的だと感じ、同様の構成で自社の研修資料を作成したい。

著作権侵害の該当性: 研修資料の具体的な内容や表現は著作権で保護される可能性が高いですが、資料の一般的な構成やフォーマットは著作権の保護対象になりにくいです。
また法令や政府が発行する統計データなどは著作物ではないので、取り入れても問題ありません。

推奨するアクション:

  • 資料の基本的な構成やフォーマットを参考にすることは可能
  • 具体的な内容、文言、デザイン要素は完全にオリジナルのものを作成する
  • 自社のブランディングや研修目的に合わせてカスタマイズする
  • 可能であれば、参考にした資料とは異なる視覚的表現や構成を一部取り入れる

よくある質問(FAQ)

研修開発と著作権に関して、よくある質問とその回答をまとめました。

Q1: 他社の研修プログラムの構成をそのまま使用しても問題ないですか?

A1: 一般的な研修構成(例:導入、講義、グループワーク、まとめ等)を使用すること自体は通常問題ありません。

ただし、非常に独創的な構成の場合は注意が必要です。

また、具体的な内容や表現は必ず独自のものを作成してください。

Q2: 他社の研修で使用されているワークシートの形式を真似ることは可能ですか?

A2: ワークシートの基本的な形式や構成を参考にすることは可能ですが、具体的な設問や指示、デザイン要素は独自のものを作成する必要があります。

また、可能な限り自社独自の要素を加えることをお勧めします。

Q3: 著名な研修プログラムの一部を自社研修に取り入れたい場合、どうすればよいですか?

A3: 著名な研修プログラムの場合、独自の創造性が認められる可能性が高いため、注意が必要です。

基本的なコンセプトを参考にしつつ、実施方法や内容を大幅に変更することをお勧めします。

可能であれば、研修プログラムの開発元から許諾を得ることも検討してください。

Q4: オンライン上で公開されている研修資料を自社研修で使用してもよいですか?

A4: オンライン上で公開されている資料であっても、著作権は存在します。

資料の利用規約や ライセンス条件を必ず確認し、許可なく使用することは避けてください。

参考にする程度であれば問題ないですが、そのまま複製して使用することは著作権侵害になる可能性が高いです。

まとめ:安全で効果的な研修開発に向けて

他社の成功例を参考にすることは、効果的な研修を開発する上で有用な手法です。

しかし、著作権を含む法的リスクには十分な注意を払う必要があります。

以下の点を心がけることで、安全で効果的な研修開発が可能になります。

  1. 一般的な構成要素の使用は問題ない
  2. 独創的な要素を模倣する際は注意が必要
  3. 構成を参考にする場合も、具体的な内容や表現は独自のものを作成する
  4. 可能な限り独自性を付加し、創造性を高める
  5. 法的リスクが懸念される場合は専門家に相談する

さらに、以下の点も重要です。

  • 常に自社の目的や文化に合わせたカスタマイズを心がける
  • 研修の効果測定を行い、継続的に改善を図る
  • 業界のトレンドや最新の学習理論を取り入れ、独自の価値を創造する
  • 必要に応じて、外部の専門家や研修会社とコラボレーションする

最後に、著作権法の解釈や適用は複雑で、ケースバイケースの判断が必要になることが多いです。

この記事の内容はあくまで一般的な指針であり、具体的な法的アドバイスではありません。

実際の適用に際しては、必要に応じて法務部門や弁護士や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

効果的で独創的な研修は、企業の成長と従業員の能力開発に不可欠です。

法的リスクに配慮しつつ、自社ならではの価値を提供する研修プログラムの開発に取り組んでいきましょう。

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商取引に関する契約書

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  • 継続的売買契約書
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  • M&Aアドバイザリー契約書
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