クライアントが僕のイラストを無断で商品化しているのを発見したんだよ。
腹が立つから弁護士を雇って損害賠償請求するつもりだよ。
それは穏やかではありませんね。
確かに損害賠償請求は可能かもしれませんが、クライアントとの関係性を考慮するともっと良い解決方法がありますよ。
- クライアントのウェブサイトを何気なくチェックしていたら、自分の作品が許可なく使用されているのを発見
- SNSで自分のイラストが無断で使われているのを見つけてしまった
フリーのクリエイターさん、小規模事業者の経営者の皆さんはこんな経験はありませんか?
著作権侵害を発見したとき、怒りや不安を感じるのは当然です。
すぐにでも法的措置を取りたくなるかもしれません。
しかし著作権の侵害者がビジネスのお得意先であった場合、即座に法的手段に訴えることは賢明ではありません。
本記事では、著作権侵害に遭遇したときにクリエイターが取れる法的措置を解説した上で、クライアントとの関係性を維持しながら問題を解決する現実的な方法を解説します。
著作権侵害時にクリエイターが行使できる3つの権利
まず、著作権法によってクリエイターに認められている権利について理解しておくことが重要です。
著作権侵害が発生した場合、主に以下の3つの権利を行使することができます。
1.差止請求権
差止請求権は、著作権法第112条に基づく権利です。
この権利を行使することで、著作権を侵害している者に対して、その侵害行為の停止や予防を求めることができます。
具体的には以下のような請求が可能です。
- 侵害行為の停止
- 侵害のおそれがある行為の予防
- 侵害行為に用いられた物(海賊版など)の廃棄
- 侵害行為に供された設備の除却
例えば、あなたのイラストが無断でウェブサイトに掲載されている場合、そのイラストの削除を求めることができます。
このとき著作権の侵害者に故意や過失は必要ないです。
単に著作権の侵害、侵害するおそれがあれば差止請求が可能です。
また差止請求は、1部分だけを差止請求することができますので、例えば侵害箇所である漫画の1コマだけを差し止めることもできます。
しかし紙の書籍ではこのような措置ができませんので、大掛かりな作業が必要です。
2.損害賠償請求権
損害賠償請求権は、民法第709条(不法行為による損害賠償)に基づき認められた権利で、著作権侵害によって被った損害の賠償を請求することができます。
また著作権法第114条(損害の額の推定等)は、損害額の算定方法について特別な規定を設けています。
- 侵害者の利益額を損害額と推定する(第1項)
- 著作権者の単位数量当たりの利益額に基づく算定する(第2項)
- 著作物の使用料相当額とする(第3項)
- 裁判所が相当な損害額の認定する(第5項)
これらの規定により、著作権者の立証負担が軽減されています。
「壁ドンイラスト事件」
損害賠償請求権が認められた実際の判例を見てみましょう。
イラストレーターが描いた「壁ドン」イラストが無断で使用された事例において、著作権法第114条第3項(使用料相当額)が適用されました。
裁判所は、イラストの使用料相当額として1点1年あたり3万円の使用料相当額と判断し、合計30万円(使用料相当額27万円と弁護士費用相当額3万円)の賠償を認めました。
この判決は、ネット上で広く共有されていたイラストにも著作権が及ぶことを明確にし、適切な対価の必要性を示した重要な判例となりました。
3.不当利得返還請求権
不当利得返還請求権は、民法第703条、704条に基づく権利です。
この権利により、著作権者は、自分の著作物を無断で使用して利益を得た者に対して、その利益の返還を求めることができます。
例えば、あなたの写真が無断で広告に使用され、その広告で利益が得られた場合、侵害者に故意や過失がなくても、その利益の返還を求めることができます。
4.著作者人格権に基づく請求権
著作者人格権は、著作物と著作者人格との結びつきを保護する権利です。主に以下の3つの権利があります。
- 公表権(著作権法第18条)に著作物を公表するかしないか、いつ公表するかを決定する権利
- 氏名表示権(著作権法第19条)に著作物に著作者の氏名を表示するかしないか、どのように表示するかを決定する権利
- 同一性保持権(著作権法第20条)に著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利
これらの権利が侵害された場合、著作者は侵害の差止めや、名誉・声望を回復するのに必要な措置を請求することができます(著作権法第112条、第115条)。
例えば、あなたの作品が無断で改変されて使用された場合、原状回復や謝罪広告の掲載などを求めることができます。
駒込大観音事件
著作者人格権、特に同一性保持権に関する重要な判例を紹介します。
この事件では、仏像(大観音像)の共同制作者の一人とされる者の遺族が、仏像の所有者である寺が仏像の仏頭部をすげ替えたことに対して訴えを提起。
具体的には、寺が仏像の眼差しを修正する目的で、仏頭部全体を新たに制作して交換したことが問題となりました。
知財高裁は、著作物の改変に当たるかどうかの判断について、以下のような重要な指針を示しました。
- 改変の有無に関して、仏頭部は仏像の創作的部分であり、その交換は著作物の改変に当たると認定
- 著作者の「意に反する改変」(著作権法20条1項)に該当するかどうかについて、著作者が仏頭部を作り直す確定的な意図を有していたとは認められないとし、「意に反する改変」に該当すると判断。
- 「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)に該当するかどうかについて、仏像の眼差しを修正する目的は理解できるものの、仏頭部の交換が唯一の方法であったとは認められないとして、この例外には該当しないと判断。
- 著作者の名誉又は声望を害する方法による著作物の利用(著作権法113条6項)に該当すると判断。
しかし、裁判所は最終的に、以下の理由から原状回復(仏頭部を元に戻すこと)を命じることは適当ではないと判断しました。
- 仏像が信仰の対象として制作されたという本来の目的
- 仏頭交換の動機が本来の目的に即した補修であったこと
- 新しい仏頭を制作した人物が元の仏像の制作にも深く関わっていたこと
- 原状回復を命じても、寺が仏像全体を焼却する可能性があり、実効性に欠けること
代わりに、裁判所は仏頭交換の事実経緯を説明する広告措置を採ることが、著作者の名誉・声望を回復するための適当な措置であると判断しました。
この判例は、著作者人格権、特に同一性保持権の保護と、著作物の利用・改変の必要性のバランスをどのように取るべきかについての考え方を示しています。
クライアントとの関係性を維持しながら著作権侵害に対処する方法
著作権者には著作権の侵害に対して4つの対処法があることは解説しましたが、いつも仕事をまわしてくれるクライアントに対して、即座に法的手段に訴えることは得策ではありません。
クライアントとの関係性が悪化してしまえば、以後仕事をまわしてくれなくなることもあるからです。
以下に、関係性を維持しながら著作権侵害に対処する最も現実的な方法を解説します。
状況を冷静に分析する
まず、発見した著作権侵害について冷静に分析することが重要です。以下の点を考慮してください。
- どの程度の規模で、どのように使用されているか?
- 意図性に故意の侵害か、それとも単なる誤解や認識不足によるものか?
- 影響にこの侵害があなたのビジネスにどの程度の影響を与えているか?
- これまでのクライアントとの関係性と、将来の取引の可能性を考える
これらの要素を総合的に判断し、対応の方針を決めましょう。
コミュニケーションを重視する
著作権侵害を発見したら、まずは非公式に連絡を取ることをおすすめします。電話やメールで担当者に直接連絡し、状況を確認しましょう。
例えば、次のような言葉で切り出すことができます。
「〇〇様、最近貴社のウェブサイトで私の作品が使用されているのを拝見しました。これについて少しお話しできればと思います。お時間はありますでしょうか?」
このように、やんわりアプローチすることにより、クライアントと友好的に問題を解決しようとする姿勢を見せます。
教育的アプローチを取る
多くの場合、著作権侵害は意図的なものではなく、著作権に関する理解不足から生じています。そのため、クライアントに対して教育的なアプローチが効果的です。
面談やビデオ会議の場を設ける機会があれば、以下のような点を説明します。
- 著作権の基本的な概念
- なぜ適切な許可や対価が必要なのか
- 著作権侵害のリスクと影響
Win-Winの解決策を提案する
単に問題を指摘するだけでなく、双方にとって有益な解決策を提案することが重要です。例えば
- 正式なライセンス契約を締結する
- 過去の使用に対する対価を適正に支払う
- 今後の協力関係の拡大(代替作品の提供)向けて検討
こうした提案により、問題解決だけでなく、ビジネス関係の強化にもつながる可能性があります。
まとめ:あくまでも友好的な解決を目指す
著作権侵害に遭遇したとき、即座に法的措置を取ることは必ずしも最善の選択ではありません。
特に、長期的なビジネス関係があるクライアントの場合、関係性を維持しながら問題を解決することが重要です。
著作権者として行使できる権利(差止請求権、損害賠償請求権、著作者人格権に基づく請求権)を理解した上で、以下のアプローチを検討しましょう。
- 状況を冷静に分析する
- コミュニケーションを重視する
- 教育的アプローチを取る
- Win-Winの解決策を提案する
このアプローチにより、著作権を保護しつつ、ビジネス関係も維持することができます。
ただし各状況はそれぞれ異なるので、個々の事案に応じて柔軟に対応することが重要です。
著作権侵害は深刻な問題ですが、適切に対処すれば、むしろビジネス関係を強化し、将来の協力関係を築く機会にもなり得ます。
クリエイターの皆さんは、ご自身の権利を守りつつ、ビジネスチャンスも逃さない賢明な対応を心がけましょう。
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作詞作曲家、アーティスト、レコード会社、音楽プロデューサーなどは楽曲の著作権を扱います。楽曲の作成から、販売、配信、ライセンス契約、著作権使用料の管理まで、著作権が関わる局面が多いです。 - 映画・映像業界
映像クリエイター、脚本家、監督、映画制作会社は映画やテレビ番組、CMなどで著作権を取り扱います。映像作品には音楽、脚本、映像のすべてが絡むため、複数の著作権が一つの作品に結びつきます。 - ゲーム業界
ゲーム開発者やデザイナー、プログラマーなどが創作するキャラクター、ストーリー、音楽などは著作物です。特にオンラインゲームやモバイルゲームの世界では、著作権とライセンスの管理が重要です。
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グラフィックデザイン、Webデザイン、プロダクトデザインを手がけるクリエイターは、自身の作品の著作権を守るだけでなく、他者の著作物の使用における権利関係の管理も重要です。
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教材や論文、研究データも著作物として保護されます。また、他者の研究成果を引用する際は、著作権法に基づいた適切な扱いが求められます。 - 教育コンテンツ制作
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自分の作品の著作権を管理するだけでなく、クライアントワークやライセンス契約における権利の保護が大切です。
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ファッションデザインやロゴデザイン、アクセサリーデザインも著作権で保護されることがあります。特にブランドやパターンの模倣・コピーの問題が発生しやすく、著作権管理が重要です。
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- 人材育成・社員研修業界
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配布する研修資料自体の著作権に関する取扱いを定める必要があります。
研修に用いるスライドにイラストや写真などの素材の利用に関して著作権の知識が必要です。
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