【著作権コラム】YouTubeやSNSの動画撮影中に街で曲がれている音楽が入り込むのは著作権法違反?

ユキマサくん

YouTubeで街歩き動画を撮影していたら、お店から流れてくる音楽が録音されちゃったんだ。
これって著作権法違反になるのかな?動画を公開しても大丈夫?

純さん

動画撮影中に意図せず音楽が入り込んでしまうことはよくありますね。
実は、一定の条件を満たせば著作権法違反にはなりませんよ。

ユキマサくん

そうなんだ!どんな条件なの?
動画投稿を続けたいから、著作権のことをちゃんと理解しておきたいな。

純さん

わかりました。
それでは今回は、YouTubeやSNSでの動画撮影時に音楽が入り込んでしまった場合の著作権法上の取り扱いについて詳しく解説します。

本記事の想定読者

YouTuber・動画クリエイター・SNS投稿者・イベント主催者・企業の広報担当者など

YouTube、TikTok、Instagramなどで動画投稿をする際、意図せずに音楽が録音されてしまうことがあります。

街角での撮影中に店舗のBGMが聞こえてきたり、イベント会場で音楽が流れていたりと、現代の生活環境で音楽を完全に避けて撮影することは困難ですよね。

しかし、すべてのケースで著作権法違反になるわけではありません。

著作権法では「付随対象著作物」という概念があり、一定の条件を満たせば適法に利用できる場合があります。

この記事では、どのような場合に問題となり、どのような場合なら安全なのかを解説します。

目次

付随対象著作物とは

制度の概要

付随対象著作物とは、写真や動画を撮影したときに意図せず少しだけ映り込んでしまった著作物を指します。

著作権法第30条の2で定められています。

【要約】著作権法第30条の2

写真の撮影、録音又は録画に際し、その対象とする事物又は音の中に含まれる他の著作物について、軽微な構成部分となることが避けられない場合には、その著作物を複製することができる。

付随対象著作物にあたるか否かのポイント

  • 主たる撮影対象ではない著作物が含まれてしまう場合
  • その著作物が「軽微な構成部分」であること
  • 含まれることが「避けられない」状況であること

正当な範囲内であれば付随対象著作物の利用が許諾された背景

デジタルカメラやスマートフォンの普及により、誰でも簡単に写真や動画を撮影してインターネットで公開できるようになった一方で、意図しない著作物の「写り込み」や「録り込み」による著作権侵害のリスクが高まったためです。

特に街中での撮影では、背景に著作物が含まれることを完全に避けることは現実的ではありません。

そこで、一定の条件下では著作権者の許可なく利用できる制度が設けられたのです。

ユキマサくん

なるほど!
これなら気軽に動画投稿できるね。

適用される条件と判断基準

付随対象著作物として認められるためには、質と量の両面から厳格な条件を満たす必要があります。

単に「意図していなかった」というだけでは不十分で、客観的に見て適正な利用であることが求められます。

質的な判断基準

軽微な構成部分であること

音楽が動画全体の中で「軽微な構成部分」に留まっていることが重要です。

これは、音楽が動画の主要な要素ではなく、あくまで付随的な存在であることを意味します。

  • 撮影の主目的が音楽ではないこと
  • 音楽が動画の魅力や価値の中心ではないこと
  • 視聴者が音楽目当てで動画を見るわけではないこと

避けることができない状況

音楽が録音されることを避けることが困難な状況での撮影であることも条件です。

意図的に音楽を録音しようとした場合や、音楽が流れている場所をあえて選んで撮影した場合は、この条件を満たしません。

量的な判断基準

録音時間の長さ

音楽が録音されている時間の長さが重要な判断要素となります。

数秒程度の短時間であれば問題となりにくいですが、楽曲のサビ部分が丸々録音されているような場合は「軽微」とは言えません。

音量と明瞭性

録音された音楽の音量や聞き取りやすさも考慮されます。

背景で小さく聞こえる程度であれば問題になりにくいですが、メインの音声より大きくかつクリアに録音されている場合は注意が必要です。

判断要素問題となりにくい例注意が必要な例
録音時間数秒程度の断片的な録音30秒以上の連続録音
音量背景でかすかに聞こえる程度メイン音声と同等以上
明瞭性楽曲として認識困難楽曲がはっきりと識別可能
動画での位置動画の一部分のみ動画の大部分に渡って録音
純さん

質と量の両面から総合的に判断されるため、「これなら絶対に大丈夫」という明確な基準はありません。
個別の事案ごとに慎重に検討する必要があります。

具体的なケーススタディ

問題となりにくいケース

街歩き動画での店舗BGM

観光地や商店街を歩きながら撮影した動画に、店舗から流れる音楽が数秒間録音された場合は、付随対象著作物として適法利用できる可能性が高いです。

  • 撮影目的は街の様子や建物の紹介である
  • 音楽は背景で小さく聞こえる程度
  • 録音時間は通り過ぎる間の短時間

レストランでの食事動画

料理の紹介や食事の様子を撮影した動画に、店内のBGMが入り込んだ場合も、条件次第では問題となりません。

  • メインコンテンツは料理や会話
  • 音楽は環境音の一部として録音
  • 楽曲として認識しにくい音量

注意が必要なケース

コンサート会場での撮影

音楽イベントやコンサート会場での撮影は、音楽が主要な要素となるため、付随対象著作物には該当しません。

  • 音楽が会場の主要なコンテンツ
  • 楽曲が長時間明瞭に録音される
  • 音楽目当てで撮影している

グレーゾーンのケース

店舗紹介動画での明瞭なBGM録音

カフェや雑貨店の紹介動画で、店内のBGMが明瞭に録音されてしまった場合は判断が分かれます。

店舗の雰囲気を伝える要素として音楽が重要な役割を果たしている場合、「軽微な構成部分」と言えるかは微妙です。

ユキマサくん

グレーゾーンの場合はどうすればいいの?

純さん

判断に迷う場合は、編集で音楽部分をカットしたり、音量を下げたりする対策を取ることをお勧めします。
リスクを避けるための事前対策が重要です。

実務上の注意点とリスク回避策

プラットフォームの自動検知システム

YouTubeはプラットフォームの自動検知システム(Content ID等)により、動画内の音声や映像を分析し、登録されたコンテンツと一致するものがないかを確認します。

もし一致するものが見つかった場合、Content ID は自動的に申し立てを行い、権利者に通知します。

このため法的には付随対象著作物として適法であっても、収益化が停止されたりする可能性があります。

プラットフォームのシステムは法的な適法性を判断するものではありません

機械的に音楽を検知して措置を取るため、背景で短時間録音された音楽でも検知される場合があります。

  • 異議申し立て機能を活用する
  • 付随対象著作物の条件を満たすことを説明する
  • 必要に応じて法的根拠を示す

事前のリスク回避策

撮影場所の選定

可能な限り音楽が流れていない場所での撮影を心がけましょう。

屋外や静かな環境での撮影なら、音楽の録り込みリスクを大幅に減らせます。

撮影時の工夫

  • 指向性マイクを使って環境音を抑制する
  • 撮影時間を短くして音楽の録音時間を最小限にする
  • 音楽が流れている場所では音声収録を一時停止する

編集での対策

撮影後の編集段階でも対策が可能です。

  • 音楽が録音された部分をカットする
  • ノイズ除去機能で背景音楽を軽減する
  • 別の音楽や効果音で上書きする

トラブル発生時の対応

著作権者から削除要求や損害賠償請求を受けた場合は、付随対象著作物の条件を満たしているかを冷静に検討しましょう。

条件を満たしている場合は、法的根拠を示して適法性を主張できます。

ただし、判断が困難な場合や重要な案件の場合は、専門家への相談をお勧めします。

ユキマサくん

法的には問題なくても、プラットフォーム側で削除される可能性があるんだ。
やっぱり事前の対策が一番大切なんだね。

まとめ

今回は、YouTubeやSNSでの動画撮影時に音楽が入り込んでしまった場合の著作権法上の取り扱いについて解説しました。

付随対象著作物の制度により、一定の条件下では適法に利用できる可能性があります。

重要なポイントをまとめます。

  1. 付随対象著作物の理解と活用
    意図せず音楽が録音された場合でも、「軽微な構成部分」で「避けることができない」状況であれば適法利用できる可能性があります。
    ただし、厳格な条件があることを理解しておきましょう。
  2. 質と量の両面からの判断
    音楽が主要な撮影対象ではないこと(質的要件)と、録音時間や音量が軽微であること(量的要件)の両方を満たす必要があります。
    個別のケースごとに総合的な判断が求められます。
  3. 動画配信プラットフォームへの対策
    法的に適法でも、YouTube等の自動検知システムによる削除リスクがあります。
    事前に撮影場所を選定したり、編集での該当箇所を除去するなどの対策を心がけましょう。
  4. 安全性を重視した制作
    グレーゾーンのケースでは、リスクを避けるために音楽部分をカットする等の対策を取ることをお勧めします。
    継続的な動画投稿のためには、できる対策をしておきましょう。

動画コンテンツの制作では、著作権への配慮は欠かせません。

しかし、付随対象著作物の制度を正しく理解することで、過度に萎縮することなく、安心して動画制作を続けることができます。

質の高いコンテンツ制作と適切な著作権対策を両立させて、魅力的な動画投稿を続けていきましょう。

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著作権を取り扱う業界
  • エンターテインメント業界
    • 音楽業界
      作詞作曲家、アーティスト、レコード会社、音楽プロデューサーなどは楽曲の著作権を扱います。楽曲の作成から、販売、配信、ライセンス契約、著作権使用料の管理まで、著作権が関わる局面が多いです。
    • 映画・映像業界
      映像クリエイター、脚本家、監督、映画制作会社は映画やテレビ番組、CMなどで著作権を取り扱います。映像作品には音楽、脚本、映像のすべてが絡むため、複数の著作権が一つの作品に結びつきます。
    • ゲーム業界
      ゲーム開発者やデザイナー、プログラマーなどが創作するキャラクター、ストーリー、音楽などは著作物です。特にオンラインゲームやモバイルゲームの世界では、著作権とライセンスの管理が重要です。
  • 出版業界
    • 書籍・雑誌
      小説家やエッセイスト、出版社は、テキストやイラスト、写真といった著作物を取り扱います。出版物の著作権管理やライセンス契約、翻訳権の取り扱いなどが日常業務の一部です。
    • ライター・編集者
      雑誌やウェブメディアのライターや編集者は、執筆や編集にあたり、他の著作物を引用したり、著作権を持つコンテンツを取り扱うため、著作権の知識が必要です。
  • 広告・マーケティング業界
    • 広告代理店・クリエイティブエージェンシー
      広告のコピー、デザイン、動画や写真などのクリエイティブ作品は著作物であり、広告キャンペーンで他者の著作物を利用する際は、権利処理が必要です。また、著作権やパブリシティ権の侵害に注意しなければなりません。
    • デザイナー・アートディレクター
      グラフィックデザイン、Webデザイン、プロダクトデザインを手がけるクリエイターは、自身の作品の著作権を守るだけでなく、他者の著作物の使用における権利関係の管理も重要です。
  • メディア業界
    • テレビ局・ラジオ局
      番組制作において、音楽や映像、写真、テキストなど多様な著作物が使われます。特に放送する際の許諾や使用料の支払い、権利処理が重要な課題となります。
    • 新聞社・オンラインメディア
      記事や写真、イラストなどのコンテンツは著作物です。また、他社の著作物を引用する際には著作権法を遵守する必要があります。
  • IT・ソフトウェア業界
    • ソフトウェア開発者
      プログラムコードそのものが著作物であり、ソフトウェアのライセンス契約やオープンソースの利用には著作権の知識が不可欠です。
    • アプリ開発
      アプリのUI/UXデザインやコンテンツ(音楽、画像、文章など)にも著作権が関わり、第三者の著作物を利用する際の権利処理が必要です。
  • 教育・研究機関
    • 大学・研究機関
      教材や論文、研究データも著作物として保護されます。また、他者の研究成果を引用する際は、著作権法に基づいた適切な扱いが求められます。
    • 教育コンテンツ制作
      教材、Eラーニングコンテンツ、出版物などは、著作権の対象となり、適切な権利処理が必要です。
  • アート業界
    • 美術館・ギャラリー
      絵画、彫刻、写真、インスタレーションなどはすべて著作物として保護され、美術館やギャラリーで展示や販売する際に著作権の管理が関わります。
    • アーティスト・イラストレーター
      自分の作品の著作権を管理するだけでなく、クライアントワークやライセンス契約における権利の保護が大切です。
  • ファッション業界
    • デザイナー
      ファッションデザインやロゴデザイン、アクセサリーデザインも著作権で保護されることがあります。特にブランドやパターンの模倣・コピーの問題が発生しやすく、著作権管理が重要です。
  • 人材育成・社員研修業界
    • 研修会社・研修講師
      配布する研修資料自体の著作権に関する取扱いを定める必要があります。
      研修に用いるスライドにイラストや写真などの素材の利用に関して著作権の知識が必要です。
対応可能な契約書類

商取引に関する契約書

  • 動産売買契約書
  • 土地売買契約書
  • 土地建物売買契約書
  • 継続的売買契約書
  • フランチャイズ契約書
  • 特約店契約書
  • OEM契約書
  • 販売代理店契約書
  • 秘密保持契約書(NDA)
  • 事業譲渡契約書
  • 企業主導型保育従業員枠共同利用契約書
  • M&Aアドバイザリー契約書
  • 継続的商品売買契約書
  • スポンサー契約書
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  • タクシーデジタル広告掲出契約書(約款)
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賃金と担保に関する契約書

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家族・近隣に関する契約書

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  • 遺産分割協議書
  • 夫婦財産契約書
  • 任意後見契約公正証書
  • 通行地役権設定契約書
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