行政書士は孤独だ。
独立してから1年半が経過するが、最近これをよく感じる。
弊所の社員は私1人、事務員も雇っていないので完全に1人だ。
妻もいるが、仕事は全く手伝ってもらっていない。
だから朝から晩まで本当に1人で過ごしている。
ずっと1人でいると人と喋る機会がない。
打ち合わせも多くて月に1、2回しかないので、客先に訪問して出されたコーヒーを口にしながら談笑する場面もない。
長時間黙っていると、たまに自分の声がちゃんと発せられるのか不安になったりする。
「あーあーもしもし、あっ声出る、大丈夫だ」と自分で確認をしたり。
「問い合わせの電話とか鳴らないの?」と問われると、99%ない。
なぜなら弊所のホームページにはお問い合わせ用の電話番号を載せていないからだ。
開業当初は載せていたのだが、営業電話が鳴りまくり、その都度仕事を中断させられるのが我慢ができずに番号を削除したのだ。
だから事務所の電話は絶対に鳴らない。
その結果、日中は本当に誰にも合わないし、誰とも喋らない。こんな毎日が延々と続く。
稀にメールやLINEから問い合わせが入ると、依頼者さんの会社へ訪問、簡単な打ち合わせを済ませ、その後はまた仕事を完結するまで1人の時間が続く。
このように、行政書士の仕事は(私だけかもしれないが)本当に1人で過ごす時間が長い。
しかし私はこの孤独感を「寂しい」と感じたことは一度もない。
むしろ会社員時代の1,000倍心地良さを感じている。
孤独は「寂しいもの」とイコール(=)で結びつけるのは正しくない。
孤独という言葉は、寂しさや悲しみの感情を包含したマイナスのイメージが先行しがちであるが、私にとっての孤独は感情ではなく『事象』の1場面として捉えている。
「ある場所に1人でいる状態」そのものを指しているにすぎず、感情表現ではないのだ。
だから人によって「寂しい」と感じる孤独もあれば、「楽しい」と感じる孤独もある。
私は後者、孤独を楽しんでいる。
私は元来、人と協業しながら仕事を進めることが苦手なタイプだった。
上司や別部署の担当者に確認を経てから契約を締結したり、稟議書を別の部署にまわして決済をもらったり、技術部門と連携と取りながらプロジェクトを進めたり、上司に「あの件どうなった?」と聞かれたり、このように誰かと協業しながらでなければ仕事を完結できない仕組みそのものが苦痛なのである。
その点、1人行政書士はこの上なく楽だ。
企画、開発、営業、経理、総務、全て自分1人でおこなうので、誰にも気を遣う必要がない。
業務の都合上、他士業と連携を取る場面もあるが、基本的に全て1人で仕事を完結できる。
人と関わらずに仕事を進められるのはストレス負荷が相当低い。
なお、私のブログはなぜか行政書士受験生や開業を検討している人に多く読まれているようなので、ここで1つだけアドバイスを。
『孤独を孤独と感じない人、孤独を楽しめる人だけが行政書士の独立開業に向いている』
これまで説明してたように、行政書士は1人で過ごす時間が圧倒的に多く、そして長い。
だからこの時間を「寂しい」と感じるようでは、1人事務所を何十年も運営させることはできないだろう。
会社員時代いつも同じメンバーで飲みに行き、翌日も同じメンバーでゴルフに行き、さらには旅行にまで行くようなグループがいたが、彼らはおそらく行政書士や士業の独立開業に向いていない。
彼らにとっての孤独は寂しさの象徴だからだ。常に誰かと過ごしていなければ孤独(寂しさ)を感じてしまう。
孤独に寂しさや悲しみの感情を抱く人は、1人事務所の運営には不向きだ。
私は決して、いつも集団行動をしている人を見下しているわけではない。
それは性格の問題だから、組織に属して前後左右デスクに囲まれる方が落ち着く人もいれば、組織に属さず朝から晩まで誰とも喋らず1人で過ごす方が好きな人もいる。
私は後者、ただそれが言いたかっただけだ。
心配しなくても、自分で行政書士になることを決断し、教材や予備校を選び、合格という目標に向かって長期計画を立て、愚直にその計画を実行し続けられる人は、時間がかかっても必ず試験に合格するし、開業した後も事務所を1人で運営していても孤独を感じることはない=長期運営に向いている。
つまり行政書士を志すような人は、その時点で行政書士としての素質を概ね兼ね備えていることになる。
1人の時間を楽しめる人は、行政書士に向いているので是非試験に合格したら独立開業してほしい。
最後になるが「なぜこの人(弊所)はいつも暇そうなのに事業を継続できているのだろう?」と不思議に思ったあなた、さすがです。
ホームページに電話番号を掲載せず、月に数回しか打ち合わせがなくても、1人で緩く行政書士事務所を運営できるヒントを下記の記事で解説しているので興味があれば読んでほしい。
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