生産年齢人口の減少が止まらない。
総務省の発表にによると、少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれている。
コロナ禍が明け、人口流入は再び東京回帰の動きが活発化しており、都市圏と田舎の二極化が進行するばかりである。
このような状況下で、田舎の中小・零細企業の人材不足は喫緊の課題だ。
ハローワークに求人募集しても問い合わせがないのは当たり前で、リクナビやマイナビで募集しても本採用に至るケースはごく僅かだという。
このため企業はなんとかして優秀な人材を獲得しようと、テレビで見た成功事例を慌てて真似てインスタやX(旧ツイッター)やティックトックを導入して自社のアピールと応募増に乗り出した。
営業会社であれば(本来はパワハラ上司の怒号が飛び交う)バックヤードで社員同士が談笑している写真や、建設会社であれば(工具を投げたり蹴っ飛ばす)先輩職人と昼休みに美味しそうに弁当を食べる写真などをアップして「ブラック色」を消し拭いながら雰囲気の良い職場を演出しようと努力している。
しかし今更SNSアカウントを開設して上辺だけのキラキラした写真を数枚投稿しただけでは優秀な人材は集まらない。
仮に純粋無垢な学生たちを「あぁこの会社なんかみんな優しそうな人ばかりで楽しそうな職場だなあ」と上手く騙せて採用できたとしても、若者は勘が良いので、入社1週間で「あっこの会社、圧倒的低賃金、長時間労働、サービス残業、有給取れない、昇給ほぼ無し、パワハラ・セクハラが常態化、前例主義、気合と根性の昭和体質のクソヤバ地雷案件だ」と直ぐに気付いて1年も経たずに辞めてしまう。
SNSを開設する真の目的は、人材を獲得することではなく獲得した人材が活躍して企業に収益をもたらすことなのだが、採用すること自体がゴールになっており手段と目的を完全に履き違えている。
本来であれば採用活動以上に、賃金テーブル、人事考課制度、福利厚生、人材配置、職場環境の整備・改善に資本を投じて離職率の低下に歯止めをかけなければならない。しかし社長がこの点に気が付いていないので「コストをかけずに手っ取り早く若手を採用できそう」という安易な理由で、思い付きでSNSの開設・運用を部下に命じたりする。
しかし現在は、同業他社も雨後の筍の様にSNSアカウントを開設している。この結果どの会社も似たような企業PRが出来上がってしまいSNS運用の優位性が乏しくなってきている。
これではいつまで経っても人手不足を解消できない。
人事や総務の担当者は給与計算や雑務など、ただでさえ毎日やることが多くて大変なのに突然SNS運用の仕事を増やされてしまい、たまったものではないだろう。可哀想すぎる。
以上「中小企業が人手不足を解消するために慌ててSNSを導入しても意味がないよ」という話。