仕事のための仕事
約20年間『会社員』を経験して分かったことがある。
「会社員の仕事の9割は無駄でできている」
事実、OECDのデータによると。2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位、データが取得可能な1970年以降最も低い順位だ。
この結果は、私が過去、会社員時代に経験した仕事内容を振り返ると十分納得できる。いま思い出しても吹き出してしまうほど無駄な仕事ばかりだった。
- 会議のための資料作り
- 資料作りのための既成事実作り
- 誰も読まない研修受講後の報告書作成
- 人事評価シートの自己申告欄の記入
- 演劇風ロープレの営業研修
- 資料を読み上げるだけの会議
- ストレスチェック入力
- 報告事項はグループLINEに入れれば済むのに全員集めて口述
- 全員が揃うまで始まらない会議
- 報告書類を紙で印刷して回覧板を作成
- 受信FAXを回覧板に挟んで全員に回覧(押印の義務も)
- 誰も読まない大量のccメール
- 管理職の長文メール
- コロナ禍の体温チェック表
これ以上挙げてもキリがないが要約すると「仕事のための仕事」がほとんどである。
拘束時間の9割がこんな下らない仕事に費やされているのである。
売上げを上げるため顧客との折衝時間なんて全体の1割にも満たない。
ストレスチェックなんか本当に酷かった。ムダのかたまりだ。
一度わざと「仕事で悩んで眠れないことがある」みたいな質問項目全てに「十分当てはまる」など最悪の答えを付けて提出したことがある。総務部がその回答を見れば慌てて産業医の面談を受けさせなければならない程の酷い回答だ。
しかしストレスチェックを提出後、一度も総務部や上司から「おまえ大丈夫か?」的なお声がかかることはなかった。
私は思った「ストレスチェックとか意味ないやん」
「やってます感を出しているだけやん」
結局、労働安全衛生法で義務化されたから会社が事務的にやっているだけだった。会社は、社員が異常なストレス値を叩き出しても無関心なのである。
恐らく日本中の中小企業の担当部署が「ストレスチェックとか面倒くせえなあ」とブツブツ言いながらテキトーに社員にやらせて、結果を国に提出している。ハッキリ言って何の意味もない。
国土交通省主体でスタートした『建設キャリアアップシステム』も同じだ。
本来は、建設業の魅力向上や建設職人の処遇改善が目的だったが、いよいよ国が「建設職人がキャリアアップカードを発行していないと現場に入れない」というルールを作ったせいで、皆仕方がなくカードを発行している。(本記事執筆時点では、カード必須条件は一部の工事に限られている)
レベルアップ判定(カードランクを上げること)なんて誰もやっていないから、カード保有者のほとんどが『レベル1』のままだ。
しかも国がこのシステムを無理やり導入したせいで、日本中の建設現場で雑務が増えて悲鳴を上げている。
日本は「仕事のための仕事」を創出することが大好きだ。
全てを諦めた瞬間に楽になれる
会社組織はおろか、国自体がこのように「仕事のための仕事」を量産するから、日本の生産性が低いのは当然の結果である。
私はあまりにも非生産的な仕事を強いられることに我慢ができなかったので、何度も業務効率化や生産性向上のための仕組みを会社に訴えたことがある。
しかし前時代的組織を改変することは結局できなかった。
そこで気が付いた。
「全てを諦めた瞬間に楽になれる」と。
もっとこうしたら仕事を効率化できますよとか、生産性が上がりますよとか、そもそも考えちゃいけないのだ。そんなことを社員が提案したとろで誰も聞く耳をもたない。訴えかける労力がムダ。
1億歩譲って、改善提案が通り、実行され、その結果組織全体の生産性が向上したとしても、浮いた隙間にまた下らない仕事が降ってくるだけだ。
だったら頑張るだけ損。
意識高く「組織をもっと良くしよう」なんて考えない方がいい。
「会社員の仕事の9割は無駄でできている」と割り切って、誰も読まない資料を作って給料をもらっておけばいい。
全てを捨てて『無』の境地に至ることが、幸せに生きるための秘訣である。