自社のホームページに戦国武将を沢山載せようと思うんだけど、著作権とか肖像権の観点から問題ないのかな?
法律上これらを規制する明確な規定があるわけではないですが、一定程度の配慮は必要ですね。
今回は、歴史上の故人や著名な故人を商用利用する際の注意点について解説します。
自社の広告やホームページで、歴史上の偉人や故人を利用することは、ブランドのイメージアップや商品の信頼性向上につながる強力な手段です。
例えば歴史上活躍した戦国武将をホームページのトップページに大きく掲載すれば、信頼感や威厳が生まれるかもしれません。
しかし、これには法律的な注意が必要です。
特に、パブリシティ権という観点から問題が発生することがあります。
今回は、著作権よりもむしろパブリシティ権に焦点を当て、故人の利用に関するリスクや注意点について解説します。
マーケティングにおける故人の利用
パブリシティ権とは?
パブリシティ権は、個人の名前や肖像、その他の属性(声やサインなど)を商業目的で利用する権利を指します。
一般的には生きている人に適用されることが多いですが、故人にも一定の範囲でパブリシティ権が適用される可能性があります。
パブリシティ権を無断で侵害すると法的問題を引き起こす可能性があるため、企業のマーケティング担当者は気を付けましょう。
日本における故人のパブリシティ権
日本では、故人のパブリシティ権に関する明確な法規制はありません。また過去に裁判上の争訟もありません。
パブリシティ権は原則として相続の対象にはならず、個人が死亡した時点で失われるとされています。
これは、パブリシティ権が個人の名声や人気に基づく経済的価値を保護するものであるためです。
ただし、亡くなった人の肖像を無断で使用することは遺族からのクレームにつながる可能性があります。
また広告利用のために無断で故人の肖像等を使用すると、当該故人の遺族と紛争になるおそれがあります。
国外におけるパブリシティ権の扱い
海外に目を向けると、アメリカでは制定法によりパブリシティ権を保護しています。(米国のパブリシティ権は存在しない)
カリフォルニア州では、「氏名、声、署名、写真又は肖像」を保護の対象と定めて、明文により「声」を保護しています(California Civil Code § 3344(a))。
このように国によって規制が異なるため、国外の著名な歴史的人物や故人を広告に使用する際には、特に注意が必要です。
パブリシティ権と著作権の違い
多くのマーケティング担当者は、著作権とパブリシティ権を混同しがちです。
簡単に言えば、著作権は創作物に対する権利であり、著作物が作者の死後70年まで保護されます。
一方、パブリシティ権は、人物の名前や肖像、その他の属性を商業利用する際の権利です。
例えば、歴史上の偉人の肖像画を自社イベントのフライヤーとして使おうとする場合、その肖像画の著作権が消滅していても、その人物のパブリシティ権が問題になる可能性があります。
特に、著名な人物や現代に近い時代の故人の場合は、より注意が必要です。
実際のトラブル事例
企業が故人や偉人を広告に無断で使用し、パブリシティ権の侵害を理由に訴えられた事例は少なくありません。
事例1: プリンス(Prince)の肖像権を巡る訴訟
日本ではありませんがアメリカのミュージシャン、プリンス(Prince)の死後、彼の肖像が無断で広告や商品に使用されたことが問題視され、遺産管理団体が訴訟を起こした事例があります。
このケースでは、彼のパブリシティ権が商業的に利用されており、遺族や遺産管理団体が権利を主張しました。
事例2: 歴史的な人物の利用
歴史的な人物に対してパブリシティ権やその関連権利を主張する動きが増えてきています。
特に、地域資源として観光活性化に役立てようとする場合、観光協会や自治体がブランド管理や商標登録を行うことがあります。
例えば、熊本県菊池市では、地元の歴史的な菊池一族を地域のシンボルとしてブランド化し、国内外の菊池ファンを呼び込むプロジェクトを展開しています。
また、石川県や長野県などの地域でも、歴史的資源を観光資源として活用し、経済的な波及効果を生み出しています。
こうした取り組みでは、自治体や観光協会が歴史的な人物に関する権利を管理し、地域活性化のためのブランド戦略として利用するケースが増えており、パブリシティ権や商標登録などの法的手続きを通じて権利を確保することがあります。
ただし、こうしたケースは法的な「パブリシティ権」ではなく、地域ブランドや商標として管理されることが多いのが現状です。
これに対して企業が無断で使用した場合、地域団体が権利侵害を主張し、使用差し止めや賠償を求める可能性は十分にあります。
リスクを回避するための対策
パブリシティ権の問題を回避するためには、以下のポイントに注意することが重要です。
遺族や権利者に確認を取る
著名人や偉人の利用を検討する際は、遺族や管理団体に事前に確認を取り、必要であればライセンス契約を結びましょう。
肖像や名前を利用する際の法的リスクを調査する
特に国外の人物を利用する場合、その国のパブリシティ権に関する法律をしっかりと調べ、専門家のアドバイスを受けることが大切です。
公正な利用かを検討する
広告やプロモーションで故人や歴史上の偉人を利用する場合、その利用が適切かどうかを社内で慎重に検討しましょう。
過度に商業的な利用は、遺族や権利者からの反発を招くことがあります。
まとめ
故人や歴史上の偉人をマーケティングに利用することは、ブランド価値を高める強力な手段ですが、パブリシティ権に関する法的リスクを十分に理解しておくことが不可欠です。
著作権だけでなく、パブリシティ権にも配慮し、事前に必要な確認や手続きを行うことで、トラブルを避けることができます。
マーケティング戦略においては、法的リスクを最小限に抑えながら、ブランドの信頼性と価値を向上させることが求められます。
故人や偉人の利用に関しては、特に慎重な対応を心がけましょう。
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