第○条(損害賠償)
甲又は乙は、相手方の責めに帰すべき事由により損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
フリーランスの僕は契約書でいつも不利な条件をのまされちゃうんだよね。
次の業務委託契約書では、思いっきり自社が有利になるように損害賠償規定を定めてもいいのかな?
相手方が合意すれば問題ありませんが実際は難しいですよ。
今回は業務委託契約書で「できるだけ」自社が有利になるような損害賠償規定の定め方について解説します。
契約書の損害賠償規定とは
「損害賠償条項」とは、契約の当事者に何かしらの違反があった場合に適用される、損害賠償のルールを定めた条項です。
この様なケースに備えて業務委託契約書を締結する場合は、損害賠償条項を設定する必要があるのですが、規定の仕方によっては損害賠償条項自体が無効になってしまう可能性もあるので注意が必要です。
もし締結済の業務委託契約書を見返した際に、損害賠償条項の規定がなかった場合は相手方に対して一切損害賠償請求できないのか?と言うと、そんなことはありません。
民法には、損害賠償についての条文があるため、契約書に損害賠償についての条項が漏れていたとしても、この場合は民法の規定に則りちゃんと損害賠償請求ができます。
強行規定(何を差し置いても絶対に守らなければならないルール)に違反しなければ、契約は民法とは異なる条項を設定することが可能なのです。
考え方としては、強行規定が1番強く、次に契約書、契約書がなければ民法・商法、という順番になります。
第415条(債務不履行による損害賠償)
1.債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき 又は 債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2.前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
(1)債務の履行が不能であるとき。
(2)債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(3)債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
損害賠償条項はできるだけ自社有利に設定したい
業務委託契約書での損害賠償規定をチェックする際、あなたが損害賠償請求をする立場なのか、される立場なのかを認識しておく必要があります。
当然ですが、損害賠償請求をする立場であれば賠償請求をしやすく設定し、される立場であれば、賠償請求されにくく設定したいもの。
そして業務委託契約の場合、委託者(発注者)は通常、代金の支払い義務を負担しますが、受託者(受注者)はシステム等の目的物を引き渡す義務を負うことはもちろん、指定納期までに納入できなかった場合それに付随する損害(取引先から信用を失い契約を打ち切られた等)までをも負担しなければならないのか?といった点までも考慮する必要があります。
つまり、通常委託者(発注者)側が賠償を請求する側で、受託者(受注者)は賠償を請求される側である、ということを前提にこれから実際の条項例を解説します。
委託者(発注者)側有利の変更例
甲は乙は、相手方の責に帰すべき事由により損害を受けたときは、これにより生じた一切の損害(合理的な範囲内の弁護士費用、調査費用、専門家の鑑定費用、法的対応費用を含むがこれらに限定されない)の賠償を請求することができる。
委託者(発注者)側の立場としては、相手方に対してできるだけ重い賠償責任を負担させたいですよね。
そこで、一般的な賠償規定にプラスして、『合理的な弁護士費用』を賠償の範囲に追加します。
法制度上、弁護士費用は、敗訴した側が負担する制度が存在しないため、契約上の特約がなければ相手方に請求できません。
なお訴訟で弁護士費用を請求できるかは、「弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な類型に属する請求権か否か」が基準となります。
不法行為に基づく損害賠償請求権がこれに該当しますが、不法行為の性質を有するものは、契約違反でも同様に考えられるという判例があります。(債務不履行でも労働者の使用者に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権など。最判平24.2.24判事2144・89)
業務委託契約での契約違反に基づく損害賠償請求は、通常「類型的に弁護士に委任しなければ困難」とはいえません。
そこで、債務不履行の相手方に対して弁護士費用を負担させるためには別途その旨の規定が必要となります。
受託者(受注者)側有利の変更例
【受託者(受注者)側変更例】
甲は乙は、相手方の責に帰すべき事由により損害を受けたときは、これにより生じた通常の損害について、本契約により支払済みの代金額の総額を上限として賠償を請求することができる。
受託者(受注者)側としては、賠償責任が軽くなるように条項を設定したいものです。
そこで受託者(受注者)側が有利となるように、賠償の範囲を通常の損害に限定し、さらに支払い済みの金額を賠償額の上限にしています。
本来、法律上、損害賠償の範囲は、債務不履行により通常生じる損害(通常損害)に加えて、当事者が予見可能な特別な事情から生じた損害(特別損害)も含まれるとされ、さらにその賠償範囲に上限もありません。
そこで上記変更例のように、法律上認められる損害賠償の範囲を制限し、受託者(受注者)の負担を軽減させています。
他に受託者(受注者)の賠償責任を軽くする方法として、責任原因を限定する方法もあります。
「相手方の責に帰すべき事由により」を「相手方の故意又は重大な過失により」と限定すれば、重大ではない過失(軽過失)の際の賠償責任を軽減することができます。
委託者(発注者)と受託者(受注者)の折衝案
甲は乙は、相手方の責に帰すべき事由により損害を受けたときは、これにより生じた通常の損害について、本契約により支払済みの代金額の総額を上限として賠償を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、相手方に故意又は重大な過失がある場合、甲又は乙は、相手方に対し、これにより生じた一切の損害(特別損害及び合理的な弁護士費用、調査費用、専門家の鑑定費用、法的対応費用を含むがこれらに限定されない)の賠償を請求することができる。
業務委託契約書の損害賠償規定は、委託者(発注者)と受託者(受注者)、どちらも自社が有利になるように働きかけますので、なかなか自社の要望がすんなり通ることはありません。
そこで、折衝案として上記の例を挙げました。
一定範囲での賠償範囲の制限を認めて、受託者(受注者)に配慮しつつも、故意又は重大な過失による場合は賠償簡易の制限を認めずに弁護士費用も含めた賠償義務を発生させる旨を定めています。
まとめ
今回は、業務委託契約書の損害賠償規定について、委託者(発注者)と受託者(受注者)、それぞれの立場から、できるだけ自社が有利になるような条項例を解説しました。
契約書の審査においては、損害賠償規定にかかわらず、どの条項でも自社が有利になるように主義・主張をぶつけ合うことが予想されます。
しかし自社の要望を全て通すことは実際は難しいでしょう。そこで、相手に譲歩しつつも「この部分だけは絶対に譲れない」最終防衛ラインを引いておくことをお勧めします。
とりわけフリーランスや個人事業主の方は、相手方が法人の場合は不利な条件をのまされることも少なくありませんので、損害賠償規定については十分注意して業務委託契約書を作成・チェックするように気を付けましょう。
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