見積りの作成には報酬請求権がない?契約書を作成する上でのトラブル回避のポイントを解説

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ユキマサくん

クライアントからソフトウェアの入れ替えを頼まれたから、まずは見積りを作成しなくちゃ。でも見積りって作るだけでも大変なんだよね。

純さん

発注者は大抵見積りは無料と思いこんでいるケースが多いです。
あとから報酬を請求できるように契約書を整備・確認しておきましょう。

目次

見積書の作成でも報酬は請求できる

フリーランスや個人事業主のクリエイターが、企業側から製造委託や開発委託を受けるケースはよくあります。

このとき事前に見積を提示することになりますが、見積りには、試作品を制作したり、相手方の持つ製品を預かり動作状況をチェックしたりと結構な手間と時間を要することもありますよね。

見積りは一般的には、価格を知るための材料収集であって、見積りをもらったからといって必ず仕事を発注しなければならないこともありません(法的拘束力がない)。

しかし見積り段階であったとしても、試作品を制作や設計書の作成などの依頼を受けた場合は、業務委託契約(準委任契約)や商法512条(報酬請求権)の契約関係が発生する可能性があります。

そこで受託者側としては、委託者に対して「見積りを作成するだけでも費用が発生する」ことを事前に伝えておく必要があります。

この報酬請求権は、商法において「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる」と定めています。

つまり契約書を締結していなくとも、見積りを作成するだけであっても法律行為に該当することもあるので、この場合は報酬を請求できる、と定めているのです。

見積作成だけでも報酬請求権を認めた判例

実際に、見積りを作成しただけでも報酬請求権(準委任契約の成立)を認めた判例があります。

東京地判平 3.6.27 判時 1413 •87

「委託された右業務の趣旨、内容は、従前建築使用されてきた被告建物につき、その使用上の不満、使用目的の変更からくる被告の意図、要望する事項を最大限に実現し実用に供するものとするについて、原告においてその基本構想をまとめ、それに基づき建築、設備、内装、家具、調度等を木目細かい使用上の配慮、生活空間の充実との観点から全体的に統合してその概要を具体的に図面に作成し、その基本設計に基づいて、右建築等諸工事を具体的に実施してゆくのに必要な費用を見積り、その見積費用の確定を経て右諸工事をなすに必要な手配・手続きを原告において行うこととされたものであったと認めることができる。原告の作業について、設計等契約を勧誘する企画設計、概設計にとどまる程度の無償のサービスと(省略)は到底いえない

上記判決文を要約すると「見積りの作成には相当な労力と時間を要したので、見積り無料の範囲を逸している」、つまり「相当な報酬を請求することができる」としています。

そこで、相当な報酬額はどの様に算出するのか?が問題となります。

判決では、算出方法を下記の通り提言しました。

右相当額を判断するについては、当該業界の基準、当事者間に推認される合理的意思、業務の規模、内容、程度等の諸事情を総合的に勘案して相当とされる額を定める他はない。

この判例を踏まえると、例え見積りを提示しただけで契約書を締結しなくても、受託者が仕事に着手し完成させ、納品を終えた場合は、その行為自体が契約内容に該当することになります。

契約内容に該当=報酬請求が可能。

また契約は必ずしも書面である必要はなく、口頭であっても成立するので注意が必要です。

以下は、報酬支払に関しての合意が契約書はもちろん口頭ですらなされていないが、依頼内容が商法512条に該当し、相当な報酬を認めた判決文。一部を抜粋します。

京都地判平 6.10.31判 879・241

「本件のホテルの建築計画は、総工費が数十億円には達する規模の事業であり、口頭で企画設計の依頼はあったとしても、依頼に基づき原告がなすべき具体的な業務の範囲や段階は必ずしも明確に決定されておらず、報酬支払に関する合意は口頭ですらなされていないし、契約書等の文書も何ら作成されていない以上(省略)原告間でホテル建築に関する設計委任契約が締結されたものとは認め難い」としながら、「企画設計案の作成は、彼告のためになされた行為であり、商人である原告の営業行為に属するものであることは明らかであり、原告は被告に対し、商法512条に基づき相当額の報酬請求権を有する

トラブル回避のための条項

初めての取引先はもちろん、既存のクライアントであっても、ヒアリングの結果、見積りを作成するだけでも結構な手間と時間を要することが予見できた場合は、必ず見積りが「有償・無償」どちらなのかを書面にて相手方に提示することが重要です。

フリーランスや個人事業主は発注者より弱い立場であることが多く、見積作成料を泣き寝入りで諦めるケースも少なくありません。

このような自体に備えて、実際の契約現場では以下の様な文言を盛り込んでおくことが、トラブル回避に有効です。

参考

見積書の作成に伴う費用は有償とする(ただし、◯万円を上限額とする)。ただし見積書の作成を前提とした契約を拘束するものではないことを承認する。

まとめ

一般的な取引現場では見積書の作成は無料であるとの認識が定着していますので、受託者は、依頼内容によっては見積り作成は有償となることをハッキリと相手方に伝えなければなりません。

また、見積作成=無料、の概念を払拭する受託者側の努力も必要です。

フリーランスや個人事業主の方、今後はこの点について注意しながら仕事を請負うよう心掛けましょう。

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