日本版DBSで教師・インストラクターとの業務委託契約書の見直しは必須|追加すべき6条項と見直しポイントを解説

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ユキマサくん

うちのスクールでは、業務委託で講師やインストラクターと契約しているんだけど、日本版DBSの認定を取るには契約書を見直す必要があるって聞いたんだ。何から手をつければいいかな?

純さん

そうですね。業務委託の講師には雇用関係がないため、就業規則や懲戒処分が使えません。だからこそ、契約書にしっかり必要事項を盛り込んでおくことが大切なんです。

今回は教室・スクール・スポーツクラブなどを運営する民間事業者向けに、業務委託契約書で見直すべきポイントを解説します。雇用契約の講師がいる場合も、業務委託講師への対応として参考にしてください。

本記事の想定読者

日本版DBS認定を検討している民間教育・スポーツ・保育系事業者で、業務委託で教師・講師・インストラクターと契約している方

目次

なぜ業務委託契約書の見直しが必要なのか

業務委託の講師やインストラクターには、雇用関係がありません。

そのため、正社員や雇用スタッフに対して使える「就業規則による懲戒」「配置転換」「出勤停止」といった措置が一切使えないんです。

ユキマサくん

じゃあ、もし問題のある講師がいても、何もできないってこと?

純さん

契約書に何も書いていなければ、そういうことになってしまいます。
だから契約書の整備が重要なんです。

こども性暴力防止法施行ガイドラインでは、業務委託の講師への対応について、次のように定めています。

こども性暴力防止法施行ガイドライン(p.206)

「個人業務受託者については、業務委託に係る契約に『犯罪事実確認及び研修受講に応じなければならない』旨を定めるとともに、当該義務違反を契約解除事由として定めた上で、当該契約に基づき直接説明を行う必要がある」

つまり、契約書に必要事項を書いておかなければ、DBS対応を講師に求める法的な根拠がゼロになってしまいます。

書面の業務委託契約書がない場合、DBS認定の申請時に「業務委託に係る契約書等の写し」の提出が求められるため、口頭契約のままでは申請できません。

雇用形態によって使える措置がこんなに違う

業務委託の講師に問題が起きたとき、事業者が取れる措置は雇用形態によって大きく変わります。

まずは下の表で、雇用契約と業務委託の違いを確認してみましょう。

スクロールできます
講師の形態指揮命令権懲戒処分配置転換業務停止契約解除
正社員・パート(雇用契約)✅ あり✅ 可能✅ 可能✅ 可能✅ 可能(解雇)
業務委託(個人事業主)❌ なし❌ 不可❌ 不可△ 契約条項が必要△ 契約条項が必要
派遣社員△ 限定的❌ 不可(派遣元の権限)△ 派遣元に要請✅ 交代要請可△ 派遣元との協議
ユキマサくん

業務委託だと、懲戒も配置転換もできないんだね。
それは知らなかったな。

純さん

そうなんです。
業務委託の場合、業務停止も契約解除も「契約書にその旨が書いてある」ことが前提になります。契約書が整っていなければ、問題が起きても動けない、という状況になりかねません。

特に注意したいのが、「疑いが生じた段階」での対応です。

確定的な犯罪事実がなくても、調査中の間も講師が子どもと接し続けるリスクがあります。

これを防ぐためにも、「疑いの段階で業務を止められる条項」を契約書に入れておくことが重要です。

業務委託の講師への対応は、すべて「契約書ありき」です。契約書に書いていないことは、原則として講師に要求できません。

見直し・追加が必要な条項6つ

1.犯罪事実確認への協力義務

DBS認定を受けるには、業務委託の講師にも犯罪事実確認への協力を求める必要があります。

ただし、業務委託には雇用関係がないため、契約書に明記しておかなければ、講師に協力を求める根拠がありません。

戸籍・除籍情報の提出を含む確認作業への協力を、契約書上の義務としてはっきり定めておきましょう。

【参考】第◯条(犯罪事実確認への協力)

1 受託者は、委託者がこども性暴力防止法第20条に基づく認定事業者である間、または認定申請を行う場合、委託者が行う犯罪事実確認(戸籍・除籍情報の提出を含む。)に応じなければならない。
2 前項の犯罪事実確認は、こども家庭庁が運営するシステムを通じて行われるものとし、受託者は委託者の指示に従い必要な書類・情報を速やかに提出するものとする。

この条項を入れるときのポイント

  • 戸籍・除籍情報の提出を含む旨を必ず明記する
  • 「こども家庭庁のシステム経由」であることを記載しておくと、より丁寧
  • 5年ごとの更新確認義務は、後述の第6項で別途定める
ユキマサくん

戸籍情報まで提出してもらうのは、講師にとってハードルが高そうだけど、法律上必要なことだからちゃんと説明すれば理解してもらえそうだね。

純さん

そうですね。
「法律で定められた手続きである」ことをしっかり伝えれば、理解を得やすくなります。逆に、説明もなく突然求めると不信感につながりますので、契約締結時に丁寧に説明しておくことが大切です。

2.研修受講義務

犯罪事実確認と並んで、研修の受講も契約書に明記する必要があります。

業務委託の講師は、雇用スタッフと違って社内研修への参加を強制できません。

「受けてもらえると思っていたのに、断られた」とならないよう、契約段階でしっかり義務として定めておきましょう。

【参考】第◯条(研修受講義務)

1 受託者は、委託者が指定するこども性暴力防止法に基づく安全確保措置に関する研修を、委託者の指定する期日までに受講しなければならない。
2 研修は、原則として年1回以上実施し、受託者はこれに参加するよう努めるものとする。
3 委託者は、研修の受講に要する費用を負担するものとする。(または「受講に要する費用は各自負担とする」など実態に応じて記載)

この条項を入れるときのポイント

  • 研修の頻度(年1回以上など)を明記する
  • 受講期日の指定権が委託者にあることを明記する
  • 研修費用を誰が負担するかを事前に決めておく
ユキマサくん

研修費用の負担まで決めておく必要があるんだね。
確かに後から「誰が払うの?」ってなったらトラブルのもとだね。

純さん

そうなんです。
費用負担があいまいだと、講師側が「聞いていない」と言いやすくなります。小さなことでも、契約書に書いておくことでお互いが安心して動けるようになりますよ。

3.義務違反を契約解除事由とする条項

犯罪事実確認や研修受講を義務として定めても、「違反したらどうなるか」を契約書に書いておかなければ、実効性がありません。

義務違反を契約解除事由として明記しておくことで、はじめて「拒否したら契約を解除できる」という根拠が生まれます。

【参考】第◯条(契約解除事由)

委託者は、受託者が次の各号のいずれかに該当する場合、催告なしに直ちに本契約を解除することができる。
(1)犯罪事実確認への協力義務に違反し、正当な理由なく確認に応じなかった場合
(2)指定された研修の受講義務に違反し、研修を受講しなかった場合
(3)児童対象性暴力等、またはそのおそれがあると委託者が認めた場合
(4)受託者が特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合
(5)受託者が本契約の遂行にあたり、こども性暴力防止法または委託者の定める「児童対象性暴力等対処規程」に違反した場合

この条項を入れるときのポイント

  • 「催告なしに直ちに解除できる」と明記することで、手続きをスピーディに進められる
  • 第(3)号の「おそれがあると委託者が認めた場合」という表現がポイント。確定判決がなくても解除できる根拠になる
  • 対処規程への違反も解除事由に含めておくと、より実効性が高まる
ユキマサくん

「おそれがあると委託者が認めた場合」って、事業者側の判断で解除できるってこと?それは少し強引じゃないかな。

純さん

気持ちはわかりますが、子どもの安全を守るためには、確定判決を待っていられないケースがあります。
調査中の段階でも子どもと講師を引き離せるよう、この表現を入れておくことが重要なんです。もちろん、濫用しないよう社内で適切な判断基準を持つことが前提になります。

この条項がなければ、疑いが生じても「契約上の根拠がない」として解除できない可能性があります。子どもの安全を守るため、必ず盛り込んでおきましょう。

4.「おそれあり」認定時の業務停止条項

契約解除は最終手段ですが、調査が完了するまでの間も、講師が子どもと接触し続けるのは避けなければなりません。

そこで必要になるのが、「疑いの段階で業務を一時停止できる」条項です。

この条項がなければ、調査中も通常どおり業務を続けさせるしかなく、子どもへのリスクをゼロにできません。

【参考】第◯条(業務停止要請)

委託者は、受託者による児童対象性暴力等の疑いが生じた場合、調査完了まで、受託者に対して本業務への従事を一時停止するよう要請することができる。
2 受託者は、前項の要請を受けた場合、正当な理由がある場合を除き、これに応じなければならない。
3 業務停止期間中の報酬については、甲乙協議の上、別途定めるものとする。

この条項を入れるときのポイント

  • 「疑いが生じた場合」に業務停止を要請できることを明記する
  • 業務停止中の報酬の取り扱いを必ず決めておく。明記しないと後からトラブルになりやすい
  • 報酬の取り扱いは「停止中は報酬なし」「一定割合を支払う」など、実態に合わせて設定する
ユキマサくん

業務停止中の報酬をあいまいにしておくと、後からもめそうだね。
「停止中は報酬なし」にしたいところだけど、講師側が納得しないこともあるよね。

純さん

そうですね。
どちらが正解というわけではなく、事業の実態や講師との関係性に合わせて決めることが大切です。
ただ、何も決めずにいると「聞いていない」というトラブルに発展しやすいので、契約書に明記しておくことを強くおすすめします。

5.対処規程の遵守義務と周知条項

民間事業者が日本版DBS(子ども性暴力防止法)認定を受けるには、「児童対象性暴力等対処規程」を整備することが求められます。

ただし、この対処規程は業務委託の講師にも適用される必要があります。

雇用スタッフであれば就業規則で対応できますが、業務委託の講師には就業規則が適用されません

そのため、契約書に「対処規程を遵守する義務がある」と明記しておくことが必要です。

【参考】第◯条(対処規程の遵守)

受託者は、委託者が定める「児童対象性暴力等対処規程」(以下「対処規程」という。)の内容を遵守しなければならない。
2 委託者は、本契約締結時および対処規程改定時に、受託者に対して対処規程の内容を書面または電磁的方法により周知する。
3 受託者は、対処規程に定める不適切な行為を行ってはならない。

この条項を入れるときのポイント

  • 対処規程の名称を契約書に明記し、どの規程を指すかを明確にする
  • 契約締結時だけでなく、対処規程を改定したときにも周知することを定めておく
  • 周知方法(書面・メール等)も明記しておくと、後から「知らなかった」と言われるリスクを減らせる
ユキマサくん

対処規程を作っても、業務委託の講師に「うちのルールじゃない」と言われたら意味がないもんね。契約書でしっかり縛っておく必要があるんだね。

純さん

まさにその通りです。
また、対処規程を改定した場合も必ず周知するよう定めておかないと、古い内容しか知らない講師が出てきてしまいます。改定のたびに周知する仕組みを、契約書の段階から作っておくことが大切です。

6.5年更新に対応した確認条項

犯罪事実確認は、一度やれば終わりではありません。

こども性暴力防止法では、5年ごとに更新確認が必要とされています。

長期にわたって業務委託契約を結ぶ場合、更新のタイミングで確認に応じる義務を契約書に明記しておかなければ、「5年前に済ませたからもう不要では?」と講師に言われてしまうリスクがあります。

【参考】第◯条(犯罪事実確認の更新)

受託者は、前回の犯罪事実確認から5年を経過した場合、委託者の要請に基づき、改めて犯罪事実確認に応じなければならない。
2 委託者は、受託者の確認有効期限を管理し、期限到来の3か月前までに受託者に通知するものとする。

この条項を入れるときのポイント

  • 5年ごとの更新義務を明記し、講師が「一度やれば終わり」と思わないようにする
  • 有効期限の管理と事前通知(3か月前など)を委託者の義務として定めておくと、更新漏れを防ぎやすい
  • 更新確認への拒否も、第3項の契約解除事由に含めておくとより安心
ユキマサくん

5年って意外と早く来るし、何人も講師がいたら管理が大変そうだね。事前に通知する仕組みを作っておくのは助かるな。

純さん

そうなんです。講師が増えれば増えるほど、有効期限の管理は複雑になります。契約書で通知義務を定めておくことで、事業者側も管理の仕組みを作りやすくなりますよ。更新漏れがあるとDBS認定の維持にも影響しますので、しっかり管理体制を整えておきましょう。

6つの条項はすべてつながっています。どれか一つが抜けても実効性が下がりますので、まとめて見直すようにしましょう。

既存の契約書がある場合・ない場合の対応

「すでに業務委託契約を結んでいる講師がいる」という場合も多いと思います。

状況によって対応方法が変わりますので、自社がどのケースに当てはまるか確認してみましょう。

書面の契約書がない(口頭契約のみ)場合

口頭のみで業務委託契約を結んでいる場合は、至急、書面契約を締結する必要があります。

DBS認定の申請時には「業務委託に係る契約書等の写し」の提出が求められます。書面がなければ、そもそも申請が進みません。

ユキマサくん

長年お付き合いのある講師とは、口頭で契約していることも多いんだよね。今さら書面にするのって、角が立たないかな?

純さん

「法律の対応として必要になった」という説明をすれば、理解してもらいやすいですよ。むしろ、書面にしておくことは講師側にとっても、条件や権利が明確になるメリットがあります。

既存の書面契約書に追記できない場合

すでに書面の契約書があるけれど、DBS関連の条項が入っていないという場合は、「覚書(合意書)」を別途締結する方法がおすすめです。

既存の契約書を作り直す必要はなく、覚書で追加条項に合意するだけで対応できます。

覚書に盛り込む内容(例)

・犯罪事実確認への協力義務
・研修受講義務
・義務違反時の契約解除事由
・「おそれあり」認定時の業務停止条項
・対処規程の遵守義務
・5年ごとの更新確認義務

講師が条項の追加に難色を示す場合

「なぜそんな条項を追加するのか」と講師から反発があるケースも考えられます。

その場合は、まず「こども性暴力防止法という法律に基づく対応である」ことを丁寧に説明しましょう。

それでも拒否する場合は、子どもと関わる業務から外さざるを得ません。その根拠を契約書に持たせるためにも、条項の追加は不可欠です。

ユキマサくん

「法律で決まっていること」と説明すれば、個人的な話じゃなくなるから講師も受け入れやすそうだね。

純さん

そうですね。「事業者が一方的に決めたルール」ではなく「法律上の要請への対応」という伝え方をすると、講師側も納得しやすくなります。説明の仕方一つで、関係性を壊さずに進めやすくなりますよ。

短期・単発の業務委託の場合

短期や単発の業務委託の場合、毎回正式な契約書を締結するのが難しいこともあります。

そのような場合でも、「双方が署名した合意がわかる書類」であれば、正式な契約書の代わりとして認められます。

こども性暴力防止法施行ガイドラインでは、次のように定められています。

こども性暴力防止法施行ガイドライン

「該当する書類がない場合又は滅失した場合には、対象業務に従事することに対象事業者と申請従事者の両者が合意したことが分かる書類(両者の署名等があるもの)の提出が必要」

つまり、書類の名称は「業務委託契約書」でなくても構いません。

「この業務に従事することについて、双方が合意した」ことが書面で確認できれば対応できます。

実務上は、合意書や確認書といった形式で作成するケースが多いです。

ユキマサくん

単発の講師でも対象になるんだね。
都度サインをもらう手間はあるけど、子どもの安全のためだと思えばちゃんとやらないといけないね。

純さん

そうですね。
単発・スポットの講師も、業務の内容によっては対象になります。「短期だから不要」とはならないので、都度きちんと書面を残す習慣をつけておきましょう。

まとめ

今回は、日本版DBS認定を検討している民間事業者向けに、業務委託契約書で見直すべき6つの条項を解説しました。

最後に、押さえておくべきポイントをまとめます。

  1. 犯罪事実確認への協力義務を明記する
    戸籍・除籍情報の提出を含む確認作業への協力を、契約書上の義務として定めましょう。契約書に書いていなければ、講師に協力を求める法的根拠がゼロになります。
  2. 研修受講義務を明記する
    業務委託の講師には就業規則が適用されないため、研修への参加を義務として契約書に定めておく必要があります。費用負担の取り決めも忘れずに。
  3. 義務違反を契約解除事由として定める
    確認や研修を義務にするだけでなく、違反した場合に契約を解除できる根拠を契約書に持たせましょう。「おそれあり」の段階でも解除できる表現を入れておくことが重要です。
  4. 「おそれあり」認定時の業務停止条項を入れる
    確定的な事実がなくても、調査中の段階で業務を止められる条項が必要です。業務停止中の報酬の取り扱いも、あわせて明記しておきましょう。
  5. 対処規程の遵守義務と周知方法を定める
    業務委託の講師を対処規程の適用対象とするには、契約書への明記が必要です。改定時の周知方法まで定めておくと、「知らなかった」というトラブルを防げます。
  6. 5年ごとの更新確認義務を明記する
    犯罪事実確認は5年ごとに更新が必要です。有効期限の管理と事前通知の仕組みを、契約書の段階から作っておきましょう。

業務委託の講師への対応は、すべて「契約書ありき」です。

頼れる講師と長くいい関係を続けるためにも、契約書をしっかり整えておくことが、結果的にお互いの安心につながります。

ぜひ今回ご紹介した6つのポイントを参考に、業務委託契約書の見直しを進めてみてください。

契約書の見直しチェックリスト

  • 犯罪事実確認への協力義務(戸籍情報の提出を含む)を明記した
  • 研修受講義務と費用負担を明記した
  • 確認・研修の拒否を契約解除事由とした
  • 「おそれあり」認定を契約解除事由とした
  • 疑いの段階での業務停止要請条項を追加した
  • 業務停止中の報酬の取り扱いを明記した
  • 対処規程の遵守義務と周知方法を明記した
  • 5年ごとの更新確認義務を明記した
  • 書面契約がない場合は締結手続きを開始した
  • 既存の契約書には覚書で追加条項を合意した

日本版DBS(こども性暴力防止法)の制度概要や各種規程、認定申請の流れなどは、日本版DBS(こども性暴力防止法)特化サイトにて解説しています。

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